「SPY×FAMILY」好調、IGポートが上方修正【決算から映像業界を読み解く】#46

人気アニメ「SPY×FAMILY」や「進撃の巨人」、「ハイキュー!!」などを手掛けるIGポートが、2024年4月12日に2024年5月期通期業績の上方修正を発表した。

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人気アニメ「SPY×FAMILY」や「進撃の巨人」、「ハイキュー!!」などを手掛けるIGポートが、2024年4月12日に2024年5月期通期業績の上方修正を発表した。

売上高を従来予想よりも11.1%高い115億9,800万円に改めた。IGポートは今年1月12日に映像制作事業での進捗の遅れなどから売上高の下方修正を行っていた。今期は減収見通しだったが、増収へと一転したことになる。

好調なのは版権事業で、「SPY×FAMILY」の第2期に加え、「PSYCHO-PASS サイコパス」、「攻殻機動隊 SAC_2045」などの過去シリーズ作品も好調に推移。興行収入60億円を突破した劇場版「SPY×FAMILY」が計画よりも前倒しで計上されたために増収となった。

ただし、主力の映像制作事業は減収だ。

決算短信より筆者作成

映像制作事業は赤字で版権事業が黒字という業界スタンダード

IGポートは「ハイキュー‼」のProduction I.G、「SPY×FAMILY」のWIT STUDIOの他、コミック専門出版社マッグガーデンを傘下に持っている。

アニメーションの制作を行うのはもちろんのこと、製作委員会への出資を通して作品の二次利用に関する一部権利を販売。出資割合に応じた収益配分を得ている。「銀河英雄伝説2」や「蒼穹のファフナー THE BEYOND」、「BUBBLE」などへの出資比率は高く、持分法適用関連会社となっている。

IGポートの持分法適用関連会社

有価証券報告書より(表の右から2列目の数字は出資比率)

2024年5月期第3四半期累計(2023年6月1日~2024年2月29日)の売上高は前年同期間比1.9%減の82億5,500万円、営業利益は同4.5%減の8億3,900万円だった。事業は大きく3つに分かれている。映像制作事業、出版事業、版権事業だ。

主力は映像制作事業で、2024年5月期第3四半期累計の売上高は前年同期間比2.3%減の45億6,300万円、4億1,900万円の営業損失(前年同期間は1億5,500万円の営業利益)となった。アニメーション制作はCG制作費や外注費の高騰に加え、作品に要求されるクオリティが高まっていることを背景に製作期間の長期化が進んでおり、利益は出づらい状況にある。IGポートの2023年5月期通期の映像制作事業は8,700万円の営業利益と赤字ギリギリの水準だった。

その一方で、版権事業は好調だ。2024年5月期第3四半期累計の売上高は前年同期間比25.8%増の16億5,900万円、営業利益は同202.2%増の8億8,200万円だった。営業利益率は53.2%にも上っている。映像制作は赤字、版権で黒字化するのはアニメーション会社の常とう手段だ。これがアニメーターの低賃金化をもたらし、やりがい搾取などと揶揄される業界構造を生み出す一因になっているが、この点については後述する。

今期のIGポートの版権事業の好調ぶりは「SPY×FAMILY」の貢献度が高い。2023年5月期通期の「SPY×FAMILY」の構成比率は13%だったが、2024年5月期第3四半期の段階では21.1%まで膨らんでいる。2023年5月期通期の「SPY×FAMILY」の版権売上は2億4,100万円。2024年5月期は第3四半期の時点で通期の数字を上回り、3億5,000万円を超えている計算になる。

タイトル別版権売上構成

決算説明資料より

「推し活」要素で大ヒットとなった「ハイキュー!!」劇場版

出資する案件の中でも見逃せないのが「ハイキュー!!」だ。2024年2月16日に公開された『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』は、公開から59日で興行収入95億円を突破している。


《不破聡》

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