Courtesy of TIFF
9月7日から17日まで開催された第48回トロント国際映画祭(TIFF)。Brancでは、これまでに映画祭のレッドカーペットで『PERFECT DAYS』ヴィム・ヴェンダース監督と役所広司、『American Fiction』のコード・ジェニファーソン監督らのインタビューを紹介してきた。今回はスペシャル・プレゼンテーション部門で上映された『Les Indésirables(原題)』のラジ・リ監督、そしてキャストのアンタ・ディアウとアレクシス・マネンティに話を聞くことができた。
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本作は第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『レ・ミゼラブル』の続編。パリの恵まれない郊外を主な舞台とし、貧しい人々を不十分な生活環境に追いやる人種差別政策を痛烈に批判している。
物語はパリ市長が突然亡くなり、かかりつけ医のピエール(アレクシス・マネンティ)が臨時市長に選ばれるところから始まる。しかし、ピエールは裕福でない有権者のことをよく知らず、すぐに自分の手に負えないことに気づく。一方、ハビー(アンタ・ディアウ)はピエールとは正反対の性格の持ち主で、公営住宅協会の会長であり、彼女自身もこの街の“10階建ての貧民街”に住んでいる。そしてピエールの政権が移民をターゲットにした積極的なキャンペーンを展開するなか、ハビーは間近に迫った市長選挙に立候補することを決意する。
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植民地支配者、場所、階級、人種などの現実に起きる社会問題について、この作品が現実の出来事をどの程度反映しているのか尋ねたところ、ディアウは「この映画はそもそも実話なので、これよりもリアルなストーリーというのはありません。フランスでの社会的な問題を、本当にしっかりと表現していると思いますよ」と物語のリアリティを強調。さらに、このような話題にされにくい問題について「この映画がフランスをはじめとしたその他の国でのマイノリティの問題に、どんな困難があるのかを理解する手助けをすることを本当に願っています」と話してくれた。
この難しいテーマを題材とした本作を経て、マネンティは日常生活での考え方が変わったとコメント。「そもそも日常の中で新しい人たちと出会うときって、いつも何かを学んでいるし、もちろん、今回の作品に携わることでアンタ(・ディアウ)を知る機会も、チーム全体を知る機会も得て、このテーマについて深く語り合うこともできました。とても大切な経験でした」と映画全体を通して深く関わり合うことができたようだ。
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最後に、この作品が何かを変えることができるかという問いには、ラジ・リ監督は「監督という1人のアーティストとして、自分が経験する現実を伝え、問題提起することが非常に大切だと思います。自分が描く映画の内容にある地域出身の方と同じように、自分を関連づけて考えたりもします」「今回の作品では、特に住宅問題と住宅危機に焦点を当てたかったのです。これは、何百万人もの人々に影響を及ぼす問題提起だと思います」とアーティストとしての向き合い方や映画の核となる社会問題についてコメントしてくれた。