Photo by Leon Bennett/Getty Images
5月2日にストライキを開始した全米脚本家組合（WGA）に、映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟（SAG-AFTRA）も7月14日にピケに加わったが、WGAは5カ月にわたるストライキに終止符を打ち、スタジオと暫定合意に達したと報じられている。しかし、SAG-AFTRAと映画製作者協会（AMPTP）の交渉は前進していないようだ。
ストライキが始まって以来、ハリウッドにおける映画やドラマシリーズの製作は一時停止となり、インディペンデント作品などSAG-AFTRAと暫定合意に達したプロジェクト以外は、脚本家も俳優も作品の宣伝すら行えない状態が続いている。その結果、経済的に追い込まれる組合員が後を絶たず、Varietyによると、俳優やスタッフのために援助基金などを設立するクリエイターやプロデューサーらが現れ、そういった支援の動きも伝えられている。
そんななか、第48回トロント国際映画祭（TIFF）のレッドカーペットで、Branc（ブラン）はSAG-AFTRA事務局長で交渉責任者のダンカン・クラブツリー＝アイルランド氏にストライキについて訊くことができた。（※現地時間9月7日（木）時点の状況）
「俳優に対して、どのようなサポートができるのでしょうか？」との質問に同氏は、「実際、俳優のサポートは、SAG-AFTRAのメンバー全員にとって非常に重要です。商業広告の広告主やエージェンシーとも戦っていて、できる限りサポートしようとしています。ですが不思議なことに、こういった企業は自分たちの存在に不可欠であるクリエイティブな才能に対して、なんだか失礼なんです。おかしな話ですよね」と不満を示した。
ストライキ終結に向けた解決策は？
またクラブツリー＝アイルランド氏は、ストライキの影響で経済的に窮している組合員についても、「カナダやアメリカ、そして世界中で、ストライキのせいで多くの人が苦しんでいると耳にしています」と言及。そういった人々に対する解決策として、「できるだけ早くストライキを終わらせるよう努め、スタジオやストリーミングサービスに交渉の場へ戻るよう呼びかけ続けています」と答えた。
さらに同氏は別の解決策として、SAG-AFTRAと暫定合意を結んだプロジェクトを増やすことが重要だとも付け加えている。TIFFでも独立系の制作会社が契約に署名したと明かし、インディペンデント作品の製作に組合員が参加できれば、脚本家や俳優が経済的な窮地から脱することが可能になると述べ、「これは正義のための戦いですから、最後まで頑張らなければならないと思っています」と言葉に力を込めた。
▼暫定契約についてはこちらの記事より
SAG-AFTRAとの暫定契約は公平なのか？
その暫定合意について、どれぐらい契約が公平なのかとの質問にクラブツリー＝アイルランド氏は、「かなり公平ですよ」と回答。SAG-AFTRAのWebサイトに、暫定合意の交渉に必要なルールや保護措置に関する詳細が70ページにわたって掲載されていると明かし、独立系の制作会社多数が契約を結びたいとの意志を見せているとも語っている。しかし、そういった制作会社が実際に交渉の場に姿を見せ、公平な条件を作り出す必要があると問題も提示した。
AI導入問題についても発言
続けてBrancは、両組合のストライキで最大の論点となっているAI導入についても質問を投げかけた。AIに関する問題は、スキャニングされた俳優の容姿や演技、声などの肖像権やそれに伴う報酬、AIで生成されたコンテンツのクリエイティブコントロールなど多岐にわたる。
その問いにクラブツリー＝アイルランド氏は、「技術の具体的な内容に関係なく、常に適用されるべき原則があります。それは、インフォームド・コンセント（状況を説明して相手の同意を得ること）や公平な報酬などです。これらの原則は、AIにもストリーミングにも様々な方法で適用できるものです」と回答。同氏は、その原則が契約に明記されることを求めており、それが実現することで「AIの技術がどのように発展しても、組合員が常に尊重されることを保証できます」とコメントし、最終的に組合が目指すところを主張した。
スタジオと暫定合意に達したというWGAに、SAG-AFTRAも続くことが期待されている。
