SAG-AFTRAもストライキに突入か、最大の論点となるAI導入の脅威

映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)もストライキに突入する可能性が濃厚に。俳優たちを悩ませるAIの問題点をまとめた。

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SAG-AFTRAもストライキに突入か、最大の論点となるAI導入の脅威
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5月上旬に始まった全米脚本家組合(WGA)によるストライキが続く中、映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)もストライキに突入する可能性が濃厚になっている。そこで、俳優たちを大きく悩ませているという、「AIに関する3つの問題点」をまとめた。

AIが俳優の代役となり得る?

俳優の仕事は声と容姿、演技に基づいており、AIはその複製が可能だ。すでに、ドラマ「マンダロリアン」では、若かりし頃のルーク・スカイウォーカーを復活させるために、過去シリーズで同役を演じたマーク・ハミルに似た俳優を起用し、ディープフェイクで若かりしルークの姿を再現した。こういったケースをはじめ、AIが俳優の代役として使われた場合の肖像権などはどうなるのだろうか? 

Indie Wireによると、エンターテインメント弁護士のサイモン・パルマン氏が、CMの場合は、俳優の肖像権を保護する既存のパブリシティ権が存在すると説明している。例えば、ブラッド・ピットなどの著名俳優をAIで作成し、その俳優に報酬を支払わずにCMで商品を宣伝することは出来ない。

ところが、パブリシティ権はCMのみに適用され、映画やテレビ番組は表現作品と見なされるため、扱いが異なるのだという。映画などで何の規制もなしに、特定の俳優をモデルにしたAI生成のキャラクターが一般的になったら、俳優は雇用の機会を大幅に失いかねない。よってSAG-AFTRAは、「俳優の名前と肖像、演技を複製するための明確なガイドライン」を求めているとのこと。

AIで生成された俳優にクリエイティブ・コントロールはあるのか?

映画では、撮影後に脚本がリライトされて再撮影になることが少なくない。もしスタジオが、俳優を現場に復帰させる高額な撮影ではなく、AIを使った代替案で安く済ませたらどうなるだろうか? そして、俳優が演じた真剣な表情ではなく、俳優の許可なしに、AIによって生成された笑顔に差し替えられたらどうなるだろう?

俳優なら当然、自身をモデルにAIで生成されたがキャラクターのクリエイティブ・コントロールを持つことを望むだろう。パルマン氏は、「SAG-AFTRAは、“俳優による演技の基本的な特徴を、AIが変更することを許可しない”と主張するでしょう」と予測している。

俳優のAI肖像権は誰が所有するのか?

上述で例として挙げた「マンダロリアン」の若きルーク・スカイウォーカーのように、ディープフェイクやボイスモジュレーターを使えば俳優本人に演じてもらわずとも、俳優ソックリなキャラクターをAIで生成してシーンを製作できてしまう。しかし今のところ、その演技に対して誰が報酬を得るのか明確になっていないという。

現時点では、映画や番組に出演した俳優の肖像権と著作権はスタジオが所有しており、その肖像権を基にAIが生成した素材を使用して新しいコンテンツを作成する際には、スタジオに報酬を支払う必要がある。とはいえ、映画や番組のAI導入は新しい分野で規制や法律が明確になっていない点が多く、SAG-AFTRAがストライキに入れば、「俳優のAI肖像権は誰が所有するのか?」という問題も論点として争われるだろう。

SAG-AFTRAによるストライキの最重要事項はAIか

SAG-AFTRAの労働協定は6月30日で失効するはずだったが、待遇改善やAI活用を巡る製作側との交渉が7月12日まで延長された。しかし7月13日の朝までに、SAG-AFTRAがストライキに突入する可能性が非常に高いと見られている。Deadlineによると、SAG-AFTRAとスタジオの間では、やはりAIに関する交渉が大きな障害になっているとのこと。16万人からなるSAG-AFTRAは、業界におけるAIの展開や範囲、その範囲にまつわる重い保証と確約を求めている。

《Hollywood》

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ロサンゼルスに11年在住していた海外エンタメ翻訳家/ライター。海外ドラマと洋画が大好き。趣味は海外旅行と料理、読書とカメラ。