一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)が「アニメ業界とAI(人工知能技術)に関する意識調査」(回答数3,854件、2023年6月9日~6月30日)を実施し、その結果を発表した。
今回の調査は①NAFCA会員へのメール②X(旧Twitter)などのSNSの2つの方法で告知したが、2023年6月時点ではまだ会員数が少なかったことも影響し、回答者のほとんどは非会員となったとのことだ。回答者の年代は20代が最も多く45%、次ぐ30代が34.4%と若手が大半を占めている。
またアニメ業界従事者であると答えた人数は全体の1割程度で、アニメ業界従事者の職種内訳は「作画(原画、動画、動画検査等含む)」が最も多く38.5%、次いで「CGアニメーター/デザイナー」12.5%、「キャラクターデザイナー、作画監督」が12.3%とアニメの絵を描く職種の方が多く、声優、美術関連などが続いた。
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肖像権等を直接的に毀損しなければ、活用すべきという声も
具体例を伴う設問で見ると、「有名人か一般人かを問わず、特定の個人の声になれるボイスチェンジャー技術」へは81.1%が「規制が必要」だと考えるとともに、「『AI利用禁止』と明記しているデータでも機械学習に利用する行為」への規制は87.4%が「規制が必要だ」と回答しており、アニメ業界従事者やファンは著作権への意識が非常に高いことが窺える。
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しかし「実在しない人物を登場させる」こと、および「実在する街並みをAIで変換使用すること」の設問では「規制すべき」と答えた割合がぐっと下がり、順に60%、29.7%となり「規制すべきでない」と答えた割合もそれぞれ16.1%、34.8%と、実在の人物の権利(肖像権等)を直接的に毀損しないのであれば、闇雲にAIを規制するのではなく、アニメや漫画の素材として活用する道があるのではないかと考えている人も少なくないようだ。ただし、「実在しない人物」および「実在する街並みの改変」に関する設問では「どちらとも言えない」が23.9%、35.5%と他の設問と比べて大きく増えており、条件によっては規制すべき/するべきではないの回答が変動し得る状況と言える。
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各設問に対する回答をアニメ業界従事者のみに絞ると、非アニメ業界従事者と比べて全体的にAIに対する期待が強いことが数字に表れている。それでも全体の数字としては規制を強めるべきとの見方が優勢ではあるが、非アニメ業界従事者の75.5%が「全面的に/例外を除いて規制すべき」であると答えた一方で、アニメ業界従事者で同様に回答した割合は57%にとどまり、新しい技術への期待が見て取れる。
法制度の整備が急がれる
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一方で、アニメ業界に従事する人たちのフリー記述欄の意見に目を移すと、最も多く使われた語句は「期待」と「懸念」だったという。生成AIそのものに対する懸念の声もある一方で、現場の人手不足解消、負担軽減を期待する意見も多くみられた。ただ、効率化のためのAI活用を希望する人でも「著作物をほぼ無規制に使用しているような現状では、むしろ文化や市場の破壊、衰退につながる」「学習元の著作権問題をクリアにしない限り商用では使えない」などの声が多く、現状のままでのAI活用を期待するという声はほとんど見られなかった。
さらに著作権や学習元データに関しては海外の動向にも意識が向けられており「海外で規制が進む中で日本のみ規制がされなかった場合、日本製の創作物へ偏見の目が向けられる可能性がある」との声も複数見受けられた。その一方で「日本だけ規制をしても海外がしていなければ意味がない」との声もあり、両方の意味で海外と歩調を合わせることが重要であるとの意識が窺える。アニメ業界従事者のコメントから読み取れる懸念としては「創作性、創作意欲の低減」が多く見られた。
総じて、アニメ業界従事者は非アニメ業界従事者と比べてAI技術への期待は高いものの、「一部又は全面的に規制すべき」との声が過半数を占めることがわかったとのことだ。また、AIの活用により制作現場の負担が減ることを期待する声も多くある一方で、学習元データの権利関係があやふやな現状でAIを早急に制作現場に投入することについては懸念が残る人が多いことも明らかになった。