「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた

民放5局のバラエティ番組とコラボしたTVerオリジナルドラマ「潜入捜査官 松下洸平」の配信がスタート。各番組との調整や本人役をベースとしたストーリーの組み方、そしてTVer×在京民放5局の魅力を小原プロデューサーに語ってもらった。

メディア TV・放送
「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた
  • 「潜入捜査官 松下洸平」TVer初のオリジナルドラマを制作した理由──“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた

9月5日(火)よりTVer初のオリジナルドラマ「潜入捜査官 松下洸平」の配信が開始された。

「潜入捜査官 松下洸平」は、在京民放5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)が制作協力として参画し、本人役で主演を務める松下洸平が警視庁の潜入捜査官として芸能界に潜り込むサスペンスコメディだ。

ドラマ内では実際に各局で放送されている人気バラエティ番組「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)、「あざとくて何が悪いの?特別編」(テレビ朝日系)、「ラヴィット!」(TBSテレビ系)、「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(テレビ東京系)、「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)に本人役の松下がゲストとして出演し、通常のバラエティ番組を収録しながら、同時にドラマ撮影も行う、という前代未聞の撮影が敢行された。

本作の企画・プロデュースを担当したのは、ドラマ「鍵のかかった部屋」「失恋ショコラティエ」(いずれもフジテレビ系)や映画『ひるなかの流星』『劇場版ラジエーションハウス』など数々のヒット作を手がけてきた小原一隆氏。そんな小原氏に本作の企画発足の背景や、在京民放5局での制作進行の裏側、撮影秘話等を聞いた。

TVer 小原一隆氏。

主演・松下洸平ありきで組み立てたオリジナル企画

――まずはTVerオリジナルドラマ制作の経緯を教えて下さい。

元々僕は2021年7月にフジテレビから出向でTVerにきました。TVerは各放送局からの出向者も多く、それぞれの放送局とリレーションのある特殊な会社なので、この環境を生かして各放送局とTVerでコラボしてできることはないかと考えている中、今回の企画が生まれた形になります。

――主演に松下洸平さんを起用された理由を教えていただけますか。

2022年の春先に松下さんの事務所(キューブ)の方とお話している時に「何か一緒に面白いこと出来ませんか」という雑談を持ちかけていただき、そこから主演・松下さんありきで企画を組み立てました。元々、松下さんはいつかご一緒したいと思っていた俳優さんで、コメディもきっとお上手だろうなと思っていました。

――松下さんはじめ、本作ではほとんどの出演者が本人役を演じているわけですが、その設定ゆえの苦労はありましたか。

大変だったのは台本作りとキャスティングでしたね。キャラクターをイチから作るのではなく、本人のキャラクターを許される範囲でデフォルメしていくというところが一番大変でした。台詞も本人たちが言わないようなことは書かないようにしようと、脚本家の方や監督と何度もすり合わせをしながら、その塩梅を探っていきました。

――確かに本人が本人役を演じるとなれば飛躍した設定もできないし、ストーリーの都合に沿って動かすこともできないですもんね。

主演以外はキャストも決まっていない段階で台本を作っていったので、誰を目標に作っていくのかが難しくて。しかもキャラクター先行でキャスティングしてしまうと本人とは違う人物になってしまいます。本人のキャラクターをどのように脚本にしていくかという中で、最終的には(佐藤)浩市さんについてはキャスティングの相談もしていない段階で、浩市さんで当て書きをさせていただきました

人が変わればストーリーも台詞も全部変わって展開も全く違うものになってしまうので、もし仮に浩市さんがスケジュールの関係などでキャスティングできていなかったら…と考えると恐ろしいです。

“企画の面白さ”に民放5局の一体感が生まれた

――在京民放5局との調整はどのように進められたのでしょうか。

各局のドラマ制作経験者の方とブレストの場を設けさせていただき、そこで出たアイデアを元に“松下洸平さんが実は潜入捜査官なのに、芸能界で売れちゃったがために捜査ができていない”という設定に最終的にたどり着きました。バラエティ番組とコラボしたら面白いんじゃないかというアイデアもその場で出て、各局に正式にお声がけをさせていただきました。

――各局にお話を持ちかけた際、皆さんの最初の反応はいかがでしたか。

企画が面白そうだからやってみようと、ありがたいことに最初から協力的で好意的な反応を頂きました。在京民放5局とコラボするという誰もやったことのない取り組みでしたが、放送局も、番組自体も、そしてバラエティ番組に出演する芸人さんも事務所の方も含めて“なんかこの企画面白そうだよね”と一つにまとまれたような気がしていて、想像以上にコラボ感を強くできたように思います。

――コラボされる番組はどのように決められたのでしょうか。

台本作りと番組の調整が同時並行だったので、各局と番組の打ち合わせをしながら台本の流れがなんとなく見えてきたところで、各話に出てくる番組が担う役割を踏まえて考えていきました。例えば、松下さんが芸能界で人気者になっちゃったという設定が最初の方で視聴者に伝わる必要があったので、そうすると自ずと出演番組が決まっていきました。

――バラエティ番組パートでは普段観られないような松下さんの姿が垣間見れそうで楽しみです。

バラエティ番組のところはアドリブでどう転ぶかわからないというのもあったので、フレキシブルに対応できるようにあまり決め切らない脚本にしようと、脚本家の方とも監督とも話していました。バラエティ番組パートはそれぞれ20分近くアドリブで撮っているのですが、全てを盛り込んではドラマとして成立しないということもあって一番面白い部分を選りすぐって使っています

――ちなみに今回のドラマの撮影期間はどれくらいでしたか。

撮影期間は約20日間、実際撮影したのは2週間ほどです。ドラマの出演者のスケジュールだけではなく、番組のスケジュール、芸人さんたちのスケジュールまで全て合わせなければいけなかったので、コンパクトな撮影期間にまとまらざるを得なかったという感じです。

TVerでドラマもバラエティも無料で楽しんでほしい

――今回、ドラマとバラエティ番組のコラボというのはどんな狙いがあったのでしょうか。

単にTVerが独自にドラマを作るだけではテレビ局と可処分時間を奪い合うだけになるので、放送局にもメリットがないと成立しないと最初から考えていました。TVerの1つの課題としてドラマユーザーが比較的多く、その方たちはドラマだけを視聴されることが多いので、なかなかバラエティ番組も一緒に観ようという行動になりづらいところがあって。そのギャップを埋めたいというのは元々課題としてあったんです。今回ドラマを観に来て下さった方がこのバラエティも観てみよう、面白かったから続けて観てみようとなっていただけると嬉しいですね。逆もまた然りで、普段ドラマをあまり観ない方がバラエティ番組をきっかけにドラマを観てみるきっかけになるといいなと思っています。

――バラエティ番組とのコラボは番宣面でもメリットが大きかったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

番宣を各局で出来ることはメリットでした。元々、バラエティ番組出演時にすでに「何かを同時に撮っていた」という予告ができている番組もあり、配信前から話題性を作れたと思います。

先日の完成披露試写会の様子も情報番組で取り上げて下さりましたが、中には他局のバラエティ番組が映り込んでいる映像を使用して紹介いただいた番組もあって、通常ではそんなことはあり得ないんですが、今回は想像以上の一体感を出せた気がします。


TVerとテレビ局の大きな違い、共に目指すところ

――フジテレビでのテレビドラマのプロデュースを数々ご経験されてきた小原さんから見て、放送局でのドラマ制作と今回の企画だと、どんなところが決定的に違いましたか。

放送局での制作は尺やCMが入るタイミングなど制限が多いことに対して、今回の企画では尺に囚われずに自由度が高く出来たと思います。当初から1話あたりを15分~20分前後にして、5話くらいにしたいと思っていました。通勤・通学中に電車の中で観られたり、昼休みに食後でも観られるくらいの尺にはしたいと思っていて、100分の映画を作るような台本設計をして、それを分割するような作り方をしました。

ただ、制限があった方が良くも悪くも諦めがつくんですよ。制限がないと好きなことができる反面、やるべきことを全部ジャッジしなければいけないのでその大変さはありますね。今回は制作に携わる人間がほぼ全員テレビ番組制作経験者だったので、“好き勝手作ったらどうなってしまうか”という経験則を持ち合わせながら、テレビの制限がある作り方の中で自由度を拡大解釈して作るというやり方だったと思います。

――1話ごとの尺を短くされたのは、若い層に向けたアプローチでもあるのでしょうか。

もちろん若い層も取り込みたいという狙いはあります。TikTokやYouTubeなどなるべく短尺で観られるものに慣れきっている若い層も、“20分なら観てみよう”と思ってもらえる時間かなということで設定しました。たくさんあるコンテンツの中から「コンテンツ選びに失敗したくない」という声もよく聞くので、入り口のハードルを下げないと選んですらもらえないと思っています。

――普段放送局同士はライバル関係にあると思うのですが、TVerを通した今回のような連携でテレビ業界も変わろうとしているのでしょうか。

テレビ業界人は皆テレビコンテンツが大好きなんですよ。今は色々なメディアが増えているので視聴者は分散しているとは思うのですが、コンテンツの面白さはテレビがずば抜けているんじゃないかと思っているんです。ですので、“テレビはやっぱり面白いよね”と気付いてもらいたい思いが非常に強いです。各放送局の皆さんも同じ思いで、この作品に協力して下さったのではないかと思います。

――動画配信プラットフォーマーもテレビ局もどちらの内情もご存知の小原さんが思われる、それぞれにしかない強みとはどんなところでしょうか。

テレビの方が思いがけない番組に出会いやすい、新たなマッチングが生まれやすいというのはあると思います。TVerの場合には目的があってアクセスされる方がほとんどで、目的視聴、積極視聴から1つの作品にコア化していく傾向が強いです。TVerでも予期せぬ出会いを生み出そうとホーム画面の改修などは常に行なっていますが、そこが大きな違いだと思います。

――今後もTVerオリジナルでドラマを作り続けていくご予定でしょうか。

TVerにも放送局にも双方にメリットがある新たな建付けが発明されたら、今後もオリジナルドラマを作るということはあると思いますが、いたずらに量産することはないと思います。

――最後に、今回の「潜入捜査官 松下洸平」の見どころや、おすすめの楽しみ方などあれば教えて下さい。

ドラマを一通り観た後、あるいはドラマの配信の合間に、バラエティの再配信を視聴して、どのシーンが劇中に使われていたか答え合わせをしてもらえると楽しいと思います。入り口の設定は突飛なコメディですが、ラストにかけてドラマファンでも納得の重厚感ある仕上がりになっていると感じています。浩市さんは特に最近重厚感のある役柄が続いていらっしゃる印象ですが、コメディ作品での浩市さんも楽しんでもらえると思いますし、松下さんや浩市さんのリアルな交友関係が垣間見えるところがあるので、そこもファンの皆さんには喜んでいただけるのではないかと思います。

《佳香(かこ)》

関連タグ

佳香(かこ)

テレビっ子兼業ライター・ドラマと映画が心の潤い 佳香(かこ)

出版社勤務を経て、パラレルキャリアでライターに。映画・ドラマを中心に様々な媒体でエンタメ関連のコラムを執筆中。俳優さんの魅力にフォーカスするアクター評が得意。ビジネス媒体やフェムテック関連媒体でのインタビュー&執筆実績もあり。

編集部おすすめの記事