複数スタジオがAIへの投資を倍増:Netflixが年棒90万ドルでAIプロダクトマネージャーを募集

ハリウッドで続行中のストライキが裏目に?

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複数スタジオがAIへの投資を倍増:Netflixが年棒90万ドルでAIプロダクトマネージャーを募集
Photo by Mario Tama/Getty Images 複数スタジオがAIへの投資を倍増:Netflixが年棒90万ドルでAIプロダクトマネージャーを募集

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現在ハリウッドでは、映画俳優組合 - 米国テレビおよびラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)と全米脚本家組合(WGA)が作品製作におけるAI導入の脅威を最大の論点に、労働環境の改善などを訴えてストライキを続行している。しかし皮肉なことに、複数のスタジオがAIへの投資を倍増させていることが明らかとなった。

The Interceptによると、ハリウッドのスタジオ幹部らは、俳優(俳優の87%は収入が2万6,000ドル未満)に、さらに出演料を支払うのは「全く現実的ではない」と主張する一方、AIプログラムには惜しみなく支出する方向へ進んでいるという。

その例として、NetflixはAIプロダクトマネージャーを募集中で、その年棒は最高で90万ドル(約1億2,700万円)だと報じられている。その職務内容は、「Netflixの機械学習プラットフォーム(MLP)のレバレッジを高めることに焦点を当てる」と紹介されている。MLPはNetflixのAIプログラムで、従来は配信サービスのアルゴリズムによる「作品のおすすめ」に利用されてきた。Netflixのリサーチページによると、同社は現在、このプログラムを映画やテレビ製作の「最適化」に活用できるよう、より大きな取り組みを行なっているとのこと。だが、その計画をどのように進めるかについては、今の時点では明確になっていないようだ。またNetflixは、ゲーム部門向けにAIテクニカルディレクターを65万ドル(約9,170万円)で募集している。

そして、AIの活用を倍増させる動きを見せているのはNetflixだけではない。ディズニーは、「映画のパイプラインと劇場体験を通して改革を推進する」ため、シニアAIエンジニアを募集している。 さらに同社は、すでにディズニーパークのイマジニアリング部門でも同ポジションの求人を募っているという。

SAG-AFTRAとWGAは、組合員の仕事を奪いかねないAIの使用規制や肖像権の問題などを訴えている。しかし、両組合のストライキでスタジオは作品の製作が不可能な状態にあり、その状況を打破するために、AIの活用や投資を倍増させる皮肉な事態となっているようだ。両組合のストライキが、裏目に出てしまったとの見方もできるかもしれない。


Indie Wireは、Netflixがコンテンツ製作のためにAI分野へ進出したのは、AIをテーマにしたエピソードを含む人気アンソロジードラマ『ブラック・ミラー』シーズン6を配信した後だったと指摘。問題のエピソードとなる第1話「ジョーンはひどい人」は6月にリリースされ、Netflixを意図的に模した配信サービス「ストリームベリー」がAI技術を駆使し、実在の女優サルマ・ハエックのデジタル肖像を彼女の意思に反して使用する内容となっている。

このエピソードに出演した俳優のロブ・ディレイニーは、「AIプロダクトマネージャーに支払う年棒90万ドルで、35人の俳優と彼らの家族がSAG-AFTRAの健康保険に加入できるのに異常ですね」と語った。

現時点では、WGAとSAG-AFTRAによるダブルストライキが終了する時期などの目途は立っていない。

《Hollywood》

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ロサンゼルスに11年在住していた海外エンタメ翻訳家/ライター。海外ドラマと洋画が大好き。趣味は海外旅行と料理、読書とカメラ。