Netflix、テスト上映の規模を世界中の数万人のユーザーへ拡大 フィードバックが良作につながるケースも多数

Netflixは、テスト上映参加者を現在の2,000人ベースから、来年早々には世界中の数万人のユーザーを対象に拡大する予定とのことだ。

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Netflixが、新作映画やドラマを一般公開前に視聴できる「Netflixプレビュークラブ」の規模を拡大する計画だ。米The Wall Street Journalの報道によると、対象者は現在の約2,000人から、来年初頭には世界数万人規模へ増員される見込みだという。

「選ばれし者」だけが参加できるこのプログラム。一体どのような仕組みで、ユーザーの声が作品に反映されているのか。その実態と、過去の成功事例を紹介する。

「プレビュークラブ」の仕組み

Netflixプレビュークラブ」は完全招待制のプログラムだ。既存会員の中から選ばれたユーザーにのみ案内が届く。

参加の流れは厳重かつ本格的だ。招待されたユーザーは、まず参加資格の確認とアンケートに答える。その後、対象作品が配信される「前日」に案内が届き、数日間の視聴期間が設けられる。 特徴的なのは、視聴する作品が「完成前」の状態であることだ。提供された資料によると、以下のような不完全な状態で配信されるケースもあるという。

  • 未完成の音響効果や視覚効果(VFX)

  • 合成用グリーンスクリーンや、スタント用ワイヤーの映り込み

  • 一部シーンでの音楽や字幕の欠如

参加者は、いわば制作チームの一員として、40分~3時間半程度の作品を鑑賞後、10~20分程度のアンケートに回答する。場合によっては、他のメンバーやモデレーターとのディスカッションに参加することもあるという。もちろん、ここでの視聴体験や内容は機密情報として厳重に扱うことが求められる。

「真面目すぎる」からコメディへ ユーザーの声がヒットを生む

Netflixオリジナル映画『ドント・ルック・アップ』公開前に複数グループの契約者たちが同作品を試写した際、「この映画は真面目すぎる」と伝えたという。関係者によると、映画の制作者はこの意見を参考に、映画のコメディ要素を増やし、より幅広い観客にアピールできるようにしたとのこと。結果的にこの映画は批評家の評価は割れたが、アカデミー賞4部門にノミネートされ、Netflixの映画の週間視聴時間の記録を更新し、現在もその記録を保持している。

さらにNetflixの社員も対象に、コンテンツをリリースする前にテストを行っている。全従業員が公開前のNetflixの番組や映画にアクセスし、その視聴行動を統計として集める。最近はそこから、多くの従業員がファンタジーシリーズ「サンドマン」を完走していなかったことに気づき、番組の制作者に変更を促したとのこと。この番組は変更後に完走率が向上し、8月から9月にかけて7週連続でNetflixの英語版テレビ番組のトップ10に入った。

一方で、クリエイターに芸術的な選択をする自由を提供することを長い間誇りにしてきたNetflixは、フィードバックを共有しながらも変更を強制しないようにしているとのことで、クリエイターはどのような変更を加えるか最終的な決定権を持っている。

こうしたテスト試写は、ハリウッドの伝統と言える。

大手のハリウッドスタジオはサイレント映画の時代から同様のテスト試写を行っており、キャラクターやストーリーラインがどう評価されるかを事前に理解するために、エンターテインメント業界以外の視聴者からの意見を求めていきた。パラマウント・ピクチャーズの元CEO シェリー・ランシング氏は、「1987年の映画『危険な情事』では、出演者の間で賛否両論があったものの、テスト観客の評価が低かったためエンディングを撮り直した」と、自身の伝記作家に語っている。この映画は、その後6つのアカデミー賞にノミネートされるなど、良い方向へ作品を導くことができた。

他のストリーミングサービスも、同様のプログラムを通じて視聴者のフィードバックを求めている。Amazonは「Amazon Preview」プログラムを通じて、一部の顧客にアイデアや映画、テレビ番組のパイロット版のレビューとフィードバックを求めている。Huluは「Hulu Brain Trust」と呼ばれるプログラムを通じて、何年も前から一部の消費者を招待し、コンテンツ開始後のフィードバックやアンケートへの回答を求めてきた。

もし参加状が届いたら、あなたも積極的にアンケートに答えて、作品に影響をあたえてみてはどうだろうか。完成作品に自分の意見がどう反映されているか、改めて見直すのも面白いかもしれない。

Sources:The Wall Street JournalIndieWire
《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。