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2022年10月4日、NPO法人バーチャルライツとVR Culture & Rights Committeeによって構成される国際メタバース協議会は「事例報告書(韓国)」を公開しました。
バーチャルライツは、ユーザー、クリエーターの権利擁護と文化発信を主な目的としたVRアドボカシー団体で、約950の個人・団体・法人が会員として参画するNPO法人です。2021年3月に設立され、これまでに政策研究事業、文化振興事業、調査事業、政策提言事業などを実施しています。
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VR Culture & Rights Committeeは、韓国のメタバース団体です。メタバースに関わる文化振興や政策研究、アーカイブ事業を行うことを目的に、メタバース文化を牽引するクリエイター、ユーザー、研究者によって2022年3月に設立されました。理事長のソン・ミンウ氏は韓国科学技術院(KAIST)のメタバース研究者でもあります。
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2社による国際メタバース協議会は、メタバースが国際的に拡大していくなかで各国のアドボカシー団体の政策提言や事業推進に国際的な視点を取り入れる必要性などについて議論・検討する会で、議論は「外国の規制がおよぼす表現への影響」をテーマに、2022年6月から9月にかけて6回行われました。その第1回となる今回は、韓国の法制動向についてまとめられています。
報告書の概要
1.韓国における規制世論
女性家族省の次官は「メタバースが10代に対する性犯罪の温床になっている」と具体的な懸念を表明し、規制の在り方に向けた議論を開始しています。
一方で韓国のメタバース団体は、行き過ぎた性表現規制に繋がれば「児童・青少年の性保護に関する法律(通称:アチョン法)」のように数千人規模のクリエイターが検挙される事態に繋がりかねないと懸念しています。韓国では、アチョン法で青少年と認識しうる表現物―いわゆる非実在青少年―に関わる性表現が規制されており、クリエイターの創作活動に影響を及ぼしています。
2.具体的なメタバース規制法案について
韓国はすでにメタバース規制の第1弾として「性暴力犯罪の処罰などに関する特例法改正法案」および「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律改正法案」が国会に提出されています。
これらはアバターを通じて行った性的な行為を規制する法案ですが、定義が明らかではない点、冤罪を起こす可能性がある点、そして「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律改正法案」は双方の合意があっても認められない可能性などから、メタバースのユーザー、クリエイター双方から懸念が表明されています。
3.メタバース関連予算およびWeb3.0について
韓国の科学技術情報通信省は2022年度にメタバースに関わる一定の予算を計上していますが、政権交代により一部の施策が停滞している状態にあります。また、報告書はWeb3.0の落ち込みに伴い、メタバースへの投資も落ち込みつつあると指摘しています。
報告書の全文は、こちらでご確認ください。