株式会社IMAGICA GROUPが、世界で通用するクリエイターの発掘と育成を目的とした「IMAGICA GROUPオリジナル映画製作プロジェクト」の第2弾企画募集を7月11日より開始した。第一弾の審査員を務めた映画監督の是枝裕和氏が「待っていました」と語る本プロジェクトは、原作ものが主流の現在の日本映画界において、オリジナル脚本の新人監督に真正面から向き合う画期的な試みだ。5カ年で5本の映画製作を明言しており、業界の次世代を担う才能の「突破口」となることが期待される。
同プロジェクトは、IMAGICA GROUPが創業90周年を機に立ち上げたもの。初年度からクローズドな募集にもかかわらず88本もの企画が集まった事実は、是枝氏が指摘するように「それだけ新人監督の挑戦の道が閉ざされていることの裏返し」でもある。是枝氏とともに第一弾の審査員を担当した東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三氏も「新人監督のオリジナル企画に全額ではないにせよ、これだけの予算を出す支援事業はなかなかない」とその意義を強調している。
カンヌで注目の第1弾『マリア』、社会福祉士から転身した新人監督を抜擢
本プロジェクトの第1弾として選出されたのは、寺田ともか監督の『マリア』だ。プロデューサーは株式会社オー・エル・エムの土川はな氏が務める。二人はこのプロジェクトを通じて初めて出会い、企画を練り上げてきた。

特に注目されるのは、寺田監督の異色の経歴だ。監督はこれまで社会福祉士(ソーシャルワーカー)として、DVや性被害、依存症などの問題を抱える人々の支援に携わってきた。その動機を「コロナ禍で困窮者が増える中、一人ひとりの人生をもっと丁寧に見つめたいと思った」と語る。本作は、監督が現場で吸収してきたことが隅々に滲んだオリジナル脚本であり、貧困、孤独死、若者の犯罪など、現代社会が抱える問題をリアルに描き出す。プロデューサーの土川氏も「完成した脚本を読んだ時、頭の中に映像が自然と浮かび、目頭が熱くなった」とその力強さを証言している。
審査基準は「欧州三大映画祭」の出品・受賞を目指せるか
応募条件は、グループ会社の株式会社オー・エル・エム、株式会社ピクス、株式会社ロボットいずれかに所属するプロデューサーであること。ただし、外部の監督やプロデューサーも、これらグループ会社のプロデューサーとチームを組むことで応募が可能となっており、門戸は広く開かれている。製作費はIMAGICA GROUPが上限7000万円を出資し、製作委員会方式で最終的な製作規模が決定される。
審査基準は「欧州三大映画祭(カンヌ、ベルリン、ヴェネチア)への出品・受賞を目指せる長編実写映画企画(60分以上)」であること、そして「2027年度中の作品完成」が条件だ。市山氏が「技術的に多少つたなくても監督の意思がストレートに出ている作品は評価される」と述べ、是枝監督も「映画祭は作家の場なので、その作家の強度として切実さの強さが評価される」と語る。まさしく寺田監督の脚本には、その「強度」があったという。そうした強度を持った作家が第2弾も現れるか、期待したい。