スマートフォン向けのショート動画の市場が急成長している。中国を中心に世界で急速に市場を伸ばし続け、2029年には8.7兆円規模に達するという予測も出ており、国内市場の動きも活発になっている。
市場が拡大すれば、多くのクリエイターが活躍することになるだろうが、まだまだ不安定な市場ゆえに充分な制作費を確保できないケースも多い。
そんな中、KDDIと松竹ベンチャーズが昨年より、ショート動画のクリエイターを支援するプロジェクト「AS CREATION PROJECT」を開始している。このプロジェクトは収益モデルの未確立で収入が不安定なショート動画の世界で活躍するクリエイターに自由な作品作りの場を提供するものだ。第一弾プロジェクトとしてごっこ倶楽部の『トリッパーズ』を発信、今年に入って第二弾は、ミニシアターで満席続きのヒットとなった短編ホラー映画を制作したNOTHING NEWの『幽霊の日記』が発表されている。
通信会社であるKDDIがなぜ今、ショート動画のクリエイターを支援するのか、本プロジェクトを推進する同社の古波蔵洋平氏と岡﨑真氏に話を聞いた。

人々のスマートフォンライフを豊かにしたい
――このプロジェクトを管轄されている部署は、パーソナル事業本部マーケティング本部R&Aセンターですね。この部署の事業内容はどういったものなのでしょうか。
古波蔵:この部署は、コンシューマ向け全般の事業を行っています。その中でもマーケティング本部は、マーケティング全般の戦略を担う部署です。その中で我々二名がいるR&Aセンターはお客さまにより豊かなスマートフォンライフを提供するというミッションを掲げています。
――では、このショート動画のプロジェクトも、スマートフォンで楽しめるコンテンツの充実という点で、お客さまのスマートフォン生活を豊かにするという意味があるわけですね。
古波蔵:はい、ご認識の通りです。au・UQをお使いいただいている方のみならず、スマートフォンを持つ全ての方に楽しんでいただけるように、と考えています。
――ショートドラマに注目したきっかけはなんだったのですか。
岡﨑:理由は主に2つです。一つ目は、スマートフォンで楽しんでいただけるコンテンツを増やしたく、昨今縦型ショートドラマがトレンドになっているので挑戦しようということ。もう1つは、クリエイターを支援したいということです。縦型ショートドラマの多くはTikTokやYouTubeで無料展開していますが、収益モデルについては模索の段階にあると思います。そこで将来が期待されるクリエイターを制作費の面で支援し、作品制作に専念してもらうことで支援につなげていきたいと考えていました。
――このプロジェクトは松竹ベンチャーズと共同で運営されていますが、どういう経緯で松竹さんと一緒にやることになったのですか。
岡﨑:弊社ではスタートアップの支援に力を入れており、例として∞ Labo(ムゲンラボ)という事業協創プラットフォームを運営しています。松竹ベンチャーズさんも同ラボに参画されており、お話してみるとクリエイターに対して我々と同じ想いを持っていることが分かりました。同時に、松竹さんもショートコンテンツ領域への参入を検討していたようで、一緒にやっていくことになりました。
――松竹のような映画の老舗会社が、松竹ベンチャーズのようなスタートアップ事業をやっているのは珍しい取り組みですよね。
岡﨑:松竹さんはベースとして映画への理解が深いので、弊社だけではクリエイターの方々と対等に話していけないかもしれないと思っていたところ、クオリティマネジメントの側面で大いに助けられています。ディレクションは両社で、予算は弊社、松竹さんは劇場も持っているので上映会や今後IP展開するとなった場合に映画化など、協業していきたいです。
