アニメ専門のストリーミングサービス「Crunchyroll(クランチロール)」が、米メディア『Fast Company』による「世界で最も革新的な企業(World’s 50 Most Innovative Companies of 2025)」ランキングにおいて、総合39位にランクインした。映画・テレビ部門でも第2位に選出され、業界内外から注目を集めている。
今回のランキングでは、クランチロールはNetflixやディズニー傘下のPixar、Metaphysicなどの有力企業の順位を上回り、映画・テレビ分野での革新性が高く評価された。特に、伝統的なメディア企業や巨大ストリーマーに対して、独自のエコシステムを構築し、アニメ文化を世界中に広めた実績が認められた形だ。
クランチロールは、もともと2006年にファンによる字幕付きアニメを配信するサイトとして誕生。その後、公式ライセンスを持つアニメ配信プラットフォームへと進化を遂げ、2021年にソニーグループに買収された。現在は、2,000本以上のアニメタイトルを有し、年間200作品超の同時配信を行っている。また、近年ではアニメ作品への出資・製作にも力を入れており、2022年と2023年には、世界で製作されたアニメの約17%に関与したとFast Campanyは記している。
近年、クランチロールは、単なる配信サービスにとどまらず、アニメファン向けの総合的な体験提供に注力している。たとえば、2024年には『鬼滅の刃』をはじめとする9本の劇場映画をアメリカで公開。サンディエゴのコミコンでは『ONE PIECE』25周年を記念したオーケストラコンサートを開催し、LiSAなど人気アーティストのライブイベントも主催した。また、ソニー傘下の映画館チェーン「Alamo Drafthouse」との連携により、劇場体験の強化にも乗り出しているという。

音楽分野では、姉妹会社Sony Music Entertainmentと連携し、3,300本以上の日本のミュージックビデオおよび100本以上のライブコンサート映像を配信。さらにSpotifyと提携し、アニメファン向けに特化したプレイリストセクションも開設した。

クランチロールの成長は数字にも表れている。2021年時点で有料会員数は約500万人だったが、2024年8月には1,500万人を突破。規模こそNetflix(2億8,000万人超)には及ばないが、若年層や多様な人種背景を持つファン層に支えられ、強固なコミュニティを形成している点が特徴としている。
今後の展開としては、2025年に欧米で予定されている人気歌手Adoのアリーナツアー支援や、マンガアプリのリリースが予定されており、アニメ原作コンテンツのさらなる発掘と、グローバル展開の強化が見込まれている。