番組経費や営業経費の大胆な見直しを図り、2023年度予算比で1,300億円の経費削減に挑むNHKが好スタートを切っている。
2024年度の事業支出は6,591億円を見込んでいるが、第1四半期(2024年4-6月)の事業支出は1,469億円。計画への進捗率は22.3%となった。支出額は前年同期間と比較して56億円のマイナス(3.7%減少)となっている。2023年度の事業支出は6,668億円で前年度比0.5%減少していた。今年度は1.2%の減少を計画している。
「NHK経営計画(2024-2026年度)における受信料及び収支の見通しの算定根拠」では、2027年度の事業支出は5,770億円まで削減するロードマップを策定した。質の高いコンテンツの提供しなければならない公共放送としての役割と、経費削減という形で国民へと理解を求める経営体制の間で揺れている。
過熱するインターネット事業への受信料適用の是非
NHKの24代会長として、稲葉延雄氏が就任したのが2023年1月。稲葉氏は日本銀行の企画部門など、中枢を担う要職を歴任。日銀総裁を経験した福井俊彦氏や白川方明氏と同じ道を歩んだエリートだ。日銀の理事を退任した後、リコーで特別顧問、専務取締役などを務め、巨大企業の経営に参画。NHK会長就任の記者会見では、「改革の検証と発展が私の役割だ」と語り、人事制度などの改革に取り組む意向を表明していた。
そして就任して早々、1,000億円の経費削減プランを掲げたのだ。
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※決算資料より筆者作成
2023年10月には受信料を1割値下げ。2024年度から2026年度までの経営計画では、値下げした受信料額を堅持するとしている。
総務省はNHKのインターネットの利用者の一部に負担金を求める提言案をまとめ、ネットのみの視聴者にも負担を求める意向を示している。NHKの番組をインターネットでも安定して配信することは、公共放送としてのNHKの役割であり、制度的な義務付けが必要であるとの考えだ。
これにより、地上波の放送番組の同時・見直し配信などインターネット事業を必須業務化。テレビを持たないスマートフォンなどでの視聴者に対して、相応の負担を求める。テレビ離れが進む若者が増加する中、放送を全国に届ける役割を持つNHKがその義務を果たせなくなる。公共放送という観点に立つと、テレビという端末にのみ受信料が適用されるのは不自然だ。時代が変わって使う端末が変化すれば、新たな枠組みが設けられるのも当然だろう。
NHK側にとっては、深刻な懐事情もある。1割もの受信料の引き下げを行ったうえ、契約者数の減少の影響で緩やかな減収が続くことを想定しているのだ。そのため、公平負担の観点から訪問だけに頼らない営業活動を確立し、2024年度から2026年度の3年間で支払い率の維持に向けた道筋を作り、受信料収入を確保するとしていた。
適用されれば、配信アプリをダウンロードし、ユーザー登録して配信を受けたら受信料が発生することになる。
ただし、NHKは若年層から強制徴収されるという負のイメージが先行し、敬遠されがちだ。いかに国民の理解を得るかがポイントとなる。
若年層からは民放よりも信頼度が低いNHK
NHKはコンテンツ戦略を6つの柱に切り分け、注力領域を明確化している。
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※NHK経営計画より