ハリウッドストライキの影響でソニー映画事業の営業利益340億円押し下げ、今期にも波紋広げる【決算から映像業界を読み解く】#55

2024年3月期のソニーの映画分野は売上は増加したが営業利益が減少した。不調の要因の一つがハリウッドの大規模なストライキだ。

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【決算から映像業界を読み解く】#55
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ソニーの映画分野の業績がトーンダウンしている。

2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の事業単体は1割近い増収だったものの、営業減益での着地となった。不調の要因の一つがハリウッドの大規模なストライキだ。映画公開スケジュールの変更やテレビ番組作品の遅延が発生し、2024年3月期の営業利益を180億円押し下げた。今期(2025年3月期)はストライキの影響がピークを迎え、340億円の営業利益下押し要因となりそうだ。

業績の停滞はソニーの意志決定にも影響を与えそうだ。

『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の公開は未定に

2024年3月期のソニーの映画分野の売上高は、前期比9.0%増の1兆4,931億円、営業利益は同1.3%減の1,177億円だった。2024年3月期の期首に1,200億円の営業利益を予想していたが、2.0%下回った。営業利益率は7.9%。2023年3月期と比較して0.8ポイント下がっている。

決算説明資料より筆者作成

2025年3月期の売上高は前期比0.9%減の1兆4,800億円、営業利益は同2.0%増の1,200億円を予想している。2024年は、現在公開中の人気タイトルの続編『バッドボーイズ RIDE OR DIE』のほか、マーベルの大作『ヴェノム:ザ・ラストダンス』と『クレイヴン・ザ・ハンター』などの公開を控えているが、減収かつ営業利益は微増の予想を出した。ストライキの影響は大きそうだ。

2024年3月期は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』のヒットに恵まれ、全世界での興行収入は6.9億ドル(150円換算で1,035億円)を記録。これは、ディズニーの『リトル・マーメイド』や『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を上回る結果であり、アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した前作『スパイダーマン:スパイダーバース』の興行収入3.8億ドルを大幅に超過している。

2024年3月には新作『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の公開を予定していたが、ストライキの影響で公開スケジュールが見直されている。

動画配信とAIの登場が映画業界のビジネスモデルを破壊

ハリウッドのストライキは脚本家と俳優の2つの組合で行われた。

脚本家の労使交渉は、Netflixなどが加盟する全米テレビ映画制作者協会(AMPTP)と、全米脚本家組合(WGA)との交渉。賃金や労働条件の引き上げの他、動画配信に関連する分配の増額。AIで作品を書いたり、リライトすることをしないよう求めたものだ。


《不破聡》

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