2期連続の営業減益となった日本テレビ、地上波テレビ広告が苦戦【決算から映像業界を読み解く】#50

日本テレビホールディングスが正念場を迎えている。

ビジネス 決算
2期連続の営業減益となった日本テレビ、地上波テレビ広告が苦戦【決算から映像業界を読み解く】#50
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日本テレビホールディングスが正念場を迎えている。

2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)は1割の営業減益。2023年3月期も営業利益は2割縮小していた。本業で稼ぐ力が失われているのだ。2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)は前期比0.3%の営業増益を予想しているが、微増と心もとない。

主要因は日本テレビ放送網の地上波テレビ広告の収入が減少していること。2024年3月期の広告収入は4.5%減少している。同社は減収減益という惨憺たる結果だった。

日本テレビはテレビ朝日と並んで視聴率は悪くない。むしろ業界トップと言えるほどだ。業績の悪化はテレビ業界そのものの市況悪化を受けてのものであり、立て直しは容易ではない。日本テレビは2024年4月に「コアMAX」と称して大規模な改変を実施した。起死回生を図ることができるか注目の取り組みである。

買収したla belle vieはトータルでは赤字

決算短信より筆者作成

日本テレビホールディングスの2024年3月期の売上高は前期比2.3%増の4,235億円だった。増収となっているが、これはM&Aの効果が大きい。2023年4月21日にファッションECサイト大手のla belle vieの全株を取得。同年10月にはスタジオジブリを連結子会社化している。la belle vieは40億7,900万円、ジブリなどアニメ関連会社が23億5,800万円の増収効果をもたらした

また、「葬送のフリーレン」と「薬屋のひとりごと」の2作品が主要配信サイトで1位を獲得するなどヒット。日本テレビのアニメは海外でも好評で、事業収入は63億6,500万円の増収に貢献している。しかし、主力の広告収入が107億7,200万円もの減収要因となり、売上高は微増に留まった。

M&Aやアニメーションなどのヒット作を打ち出して増収効果を狙っても、広告収入の減少で打ち消されてしまうというのが、現在置かれている状況である。

なお、買収したla belle vieは8億6,600万円の減益要因になっている。すなわち、M&Aによって生じたのれん等の償却を含んだトータルでは赤字だったということだ。この会社は12月決算で、今回の数字は下半期(2023年7月1日~2023年12月31日)のもの。ファッションアイテムが活発に動く12月を含んだ決算が赤字というのは心配だ。このM&Aの買収額は非公開だが、計画していた収益性が得られないことがあれば、のれんの減損も視野に入るからだ。

広告収入が伸びないテレビ局は、活発なM&Aを行っている。しかし、十分なシナジー効果が得られない買収は収益性が一時的に急悪化する要因ともなりえる。

出演料が高額なタレントは姿を消す日が来る?

テレビ朝日決算説明資料より筆者作成

一時は視聴率でトップを走っていた日本テレビだが、個人全体の視聴率(全日)においては、2年連続でテレビ朝日と並んでいる。注目したいのは、各社の視聴率が全体的に下がり傾向にあることだ。

電通の日本の広告費によると、2023年のテレビメディアの広告費は1兆7,347億円。前年比3.7%の減少である。2022年は2.0%減少して1兆8,019億円だった。減少幅は広がっている。なお、総広告費は3~4%のペースで増加している。すなわち、テレビがシェアを落としているのである。数字を伸ばしているのがインターネット広告で、現在の状況はしばらく続くだろう。テレビ局は、業界全体で広告収入が減少するという前提でビジネスを展開しなければならない。


《不破聡》

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