ライブ配信「ツイキャス」と「Pococha」停滞の裏で「ふわっち」が躍進している理由は?【決算から映像業界を読み解く】#43

ライブ配信サービスの勢力図に変化が生じている。「ツイキャス」と「Pococha」の停滞感が鮮明になり、「ふわっち」が堅調に業績を伸ばしているのだ。

ビジネス 決算
ライブ配信「ツイキャス」と「Pococha」停滞の裏で「ふわっち」が躍進している理由は?【決算から映像業界を読み解く】#43
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ライブ配信サービスの勢力図に変化が生じている。「ツイキャス」と「Pococha」の停滞感が鮮明になり、「ふわっち」が堅調に業績を伸ばしているのだ。

「ツイキャス」のモイが上場したのは2022年4月27日。「ふわっち」のjig.jpが同年12月22日だ。同時期に上場した2社は早くも明暗が分かれている。ディー・エヌ・エーの「Pococha」はサービス単体で黒字化を成し遂げたものの、売上高を伸ばしきることができていない。米国からの撤退を余儀なくされるなど、採算性重視の事業展開へと転じている。

市場としては伸びる余地が少なく、各社とも中長期的には新たなサービスの創出が必須となるだろう。

成長に欠かせない課金ユーザー数の下げ止まりが続く「ツイキャス」

jig.jpの2024年3月期第3四半期累計(2023年4月1日~2023年12月31日)の売上高は、前年同期間比15.7%増の90億5,500万円、営業利益は同84.4%増の12億9,200万円だった。

通期では売上高を前期比12.7%増の118億4,000万円、営業利益を同61.6%増の16億円と予想している。営業利益は13.5%となる見込みだ。同社は上場後の2023年3月期に黒字転換している。黒字化を果たした後に稼ぐ力を高めた。

モイは2024年1月期累計(2023年2月1日~2024年1月31日)の売上高が前期比2.6%減の64億3,300万円、営業利益が同36.1%増の1億4,200万円だった。肝心のトップラインが伸びない。2025年1月期も売上高は前期比2.8%の減少を見込んでいる。営業利益は7,200万円となる予想を出しており、営業利益率は2.2%から1.2%程度まで低下する見込みだ。

ディー・エヌ・エーのPocochaは、2023年10-12月の売上高が87億円となり、前年同期間比で1.2%の増加、前四半期比で4.4%の減少だった。業績に急ブレーキがかかっている。

※「ふわっち」はjig.jpの売上高(2023年度は会社予想)、「ツイキャス」はモイの売上高。「Pococha」は開示されているディー・エヌ・エーの資料をもとに筆者が独自に算出した日本国内の「Pococha」単体の売上高(2023年度は独自予想)。

ライブ配信サービスは、配信者がリスナーから投げ銭を得て収益化するのが一般的。プラットフォーマーは手数料を徴収する仕組みだ。ただし、Pocochaのような一部サービスには時給制も導入されている。

ビジネスモデルの特性上、配信者と課金するユーザー数をいかに増やすかが成長のポイントになる。特に課金をするユーザー数がカギを握る。

「ツイキャス」のモイは2024年1月末の課金対象であるポイント購入ユーザー数が7万5,000人となって前年比10.2%も減少した。ポイント購入ユーザー数は2022年1月期に8万9,000人で過去最高となったが、それを天井として下げに転じている。

「ふわっち」のjig.jpは、2023年12月末時点での月次課金ユーザー数が4万人で、前年比16.3%の増加だ。堅調にユーザー数を拡大している。

「Pococha」は長らく月次課金ユーザー数は横ばいで推移している。

Pocochaの課金ユーザー数推移

決算説明資料より

緩いコミュニティの形成と肩ひじ張らない配信が人気

同時期に上場し、サービスの類似性や事業規模も近いjig.jpとモイで明暗が分かれているのは一見すると不思議な現象だ。ただし、2つのサービスで明確に異なる点が一つある。それがユーザーの属性だ。ツイキャスは若者の比率が高く、ふわっちは中高年が中心だ。


《不破聡》

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