『Okja/オクジャ』の助監督が長編デビュー『Sleep』ユ・ジェソン監督インタビュー

トロント国際映画祭でミッドナイト・マッドネス部門に選ばれた韓国映画『Sleep』。『Okja/オクジャ』の助監督を務め、本作が長編デビュー作となるユ・ジェソン監督にコロナ禍での資金調達の苦労や作品制作について詳しく話を聞いた。

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Sleep
Courtesy of TIFF Sleep
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Courtesy of TIFF

現在韓国の興行収入ランキングで首位を獲得している『Sleep(英題)』が第48回トロント国際映画祭で北米プレミア上映された。

本作はトロント国際映画祭で一風変わったホラーやアクションなどのジャンル映画が上映されるミッドナイト・マッドネス部門に選出。韓国では9月6日に劇場公開され、9月25日時点で累計約134万人の動員数を記録し、公開から2週間以上にわたりランキング首位を独占するヒットとなっている。

妊婦の女性・スジン(チョン・ユミ)の配偶者であるヒョンス(イ・ソンギュン)は夜中になると度々不審な行動をとる。ヒョンスの夢遊病はエスカレートし、スジンは彼の行動が自分自身や子どもを傷つけるのではないかと悪い妄想が膨らみ状況は悪化していく…新婚夫婦に毎晩訪れる恐怖の秘密を描く、スリラー作品だ。

本作の脚本家兼監督を務めるユ・ジェソン氏はイ・チャンドン監督やポン・ジュノ監督といった韓国の名だたる監督のもとで働いてきた新人監督だ。Branc(ブラン)ではユ・ジェソン監督に長編デビュー作となる本作について、映画祭のレッドカーペットで話を聞いた。

ユ・ジェソン監督。Photo by Harold Feng/Getty Images

──長編デビューおめでとうございます!

ありがとうございます!

──初の長編作品、どのような気持ちですか。

とても幸運に思います。この一つのプロジェクトを作り上げるのにたくさんの奇跡が起こりました。長編監督デビューにあたって作品を完成できたことはもちろん、このような素敵な映画祭に招待いただけたことも嬉しいです。この作品を撮るためにキャストもクルーも一生懸命努力しました。

TIFFは私が好きな映画祭のひとつで、前回は2017年に『Okja/オクジャ』で通訳として参加しました。上映作品や観衆に活気があり、今回映画祭の一員として自分の作品が選ばれたことをとても嬉しく思います。  

──この作品で一番の挑戦は何でしたか。

一番挑戦的だったことは…コロナウイルスですね。脚本をもって資金調達に回っているとき、コロナウイルスが最も流行していたタイミングでした。その時はすでに投資を受けていた作品でさえも投資を引き揚げられていたんです。なので、そのようなタイミングで、グリーンレッド(GOサイン)の判断をいただけたことは奇跡でした。撮影中は、キャストやクルーに陽性者がでてしまうこともあり、その時期は自宅待機をする必要がありました。映画制作では一人抜けるだけでも大変ですが、映画の三分の一は誰かが欠けた状態で進行していてかなり大変でした。作品を完成させるために、みんなで鼓舞しあったことで今があります。

──この作品を通して監督としてのスキルが向上したと感じる部分はありますか。

全ての面でそうだと言えるのですが、長編デビュー作ということもあり、すべてのステップが新しい経験で多くのことを学べました。プリプロダクションでは、どのようにキャストやクルーとコミュニケーションをとって準備を進めていくかを学びました。制作中はいかに俳優とクルーのベストパフォーマンスを引き出すかということ、ポストプロダクションでは映画を完成させるために必要な録音や作曲家との協働、さらには編集などの技術を学べましたし、すべての経験が新鮮で楽しかったです。

──これまではポン・ジュノ監督の助監督(AD)として働いていたと聞きました。

はい、卒業後初めての仕事がポン・ジュノ監督の『Okja/オクジャ』での助監督の仕事でした。アメリカとはADの意味する役割が少し異なると思うのですが、韓国では映画監督とADの関係性は、メンターとメンティーのような感じです。プロジェクトに参加し、監督がどのように映画をつくっていくかを学び、その知識を自分の作品の撮影に使えるようにします。AD時代の私の目標は監督業や映画業界全体がどのようにオペレーションされているかを学んで、いつか自分主導で映画を作るということでした。

──夢が叶いましたね。

はい!本当に幸運です。

──日本の助監督の仕事は韓国と近いように思います。

たしかに、そうですね。

──今後チャレンジしたいことはありますか。

はい、いくつかやってみたいアイデアが頭の中にあります。ひとつは、ミステリーや犯罪ものです。もうひとつは『Sleep』とは真逆のジャンルなのですが、実は一観客として私が好きなのはロマンティックコメディなんです(笑)なので、そういったジャンルもチャレンジしてみたいです。

──次の作品に向けて向上させたいスキルはありますか。

私は映画学校は出ていないので、基礎的な映画教育を受けていないんです。もっとたくさんの映画を定期的に観たいのと、監督としては特に撮影技術やプロダクションデザインなど視覚的な技術を向上させたいです。

──最後に、(Brancは)日本の映像業界のビジネス面に特化したメディアなので、本作の資金調達のお話もお伺いしたいです。

私が(100%資金調達の面をコントロールしていたわけではないので、)知っている限りの話になりますが、当時韓国ではコロナウイルスが大流行していて、映画が投資を受けることがとても大変な時期でした。いつもと違ったことを試さないといけない情勢で、制作会社の代表がやったこととしては、通常ロッテ、CJENM、N.E.W.、MEGABOXといった大手企業を回るのですが、今回は直接ベンチャーキャピタルを回りました。そこで、投資いただけないか直接話を持ちかけたのですが、幸運にもいくつかの投資会社が脚本とこのプロジェクトをとても気にいり、協力的になってくれました。映画投資へのリスクが高い時期であったにもかかわらず、彼らがこの作品に投資の決断をしてくれたことにとても感謝しています


日本ではクロックワークスが配給を担当するとのこと。公開日はまだ発表されていない。

《取材:Tomohiko Nogi  文:marinda》

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