Disney+がインドでクリケット配信権喪失後に戦略見直し、依然としてストリーミング市場をリード

2022年、インドと東南アジアの一部で提供されている配信サービス「Disney+ Hotstar」が、クリケットのプレミアリーグの配信権を失ったことで、加入者が大幅に減ったことが報じられた。しかし、戦略を見直し、依然としてインドのSVOD市場をリードしていることが明らかに。

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2022年、インドと東南アジアの一部で提供されている配信サービス「Disney+ Hotstar」が、インドで絶大な人気を誇るクリケットのインディアン・プレミアリーグ(IPL)の配信権をオークションで落札できず、同年第1四半期に380万人の加入者を失ったと報じられた。しかし、ディズニーはIPLの配信権を獲得できなかったことで戦略を見直し、依然として市場をリードしていることが明らかとなった。


Varietyによると、Ampere Analysis社が実施した調査では、Disney+ HotstarはIPL配信権喪失で加入者数が減少したものの、ストリーミング市場のシェアで29%を占めてトップを維持しているという。2023年第1四半期の時点で、Disney+ Hotstarの契約数は約5,000万件となり、Amazonプライム・ビデオの1,240万件やNetflixの620万件をはじめ、インドにおける他のグローバルSVOD(定額制動画配信サービス)を遥かに上回っている。

IPL配信権を失ったDisney+ Hotstarは、新規加入者を積極的に獲得する代わりに収益性を重視し、ARPU(加入者一人当たりの平均収益)の増加を優先させる戦略へ移行。Ampere Analysisは、2023年2月にDisney+ Hotstarがワーナー・ブラザース・ディスカバリーとのライセンス契約を終了させ、パラマウントやNBCUが所有する作品の配信権入札を見送った例を挙げ、ディズニーが買収コンテンツへの支出に慎重になったことを指摘。

またAmpere Analysisは、Disney+ Hotstarが所有しているIPLのテレビ放映権を手放せば、「過去5年間におけるストリーミング収入全体の2倍弱を節約できるだろう」とも見立てている。よってDisney+Hotstarのサービス展開による利益は、IPL放映権の有無も重要なポイントとなるようだ。

GVSによると、2023年第1四半期におけるDisney+ HotstarのARPUは0.59ドルで、世界中のDisney+コアサービスの6.47ドルと比べると10倍以上も低い数字となっている。Disney+ HotstarがARPUを増加させるには、携帯電話会社との提携契約を見直して、直接契約を奨励する必要があることも指摘されている。

現在Disney+ Hotstarは、携帯会社のReliance JioとBharti Airtel、Vodafoneと配信契約を結んでおり、一部の携帯電話やブロードバンドの顧客はDisney+ Hotstarに無料でアクセスできる。このようなバンドル契約は、サービスの普及を促進して広告販売をサポートする一方、サブスクリプションのARPUにマイナスの影響を与えかねない。

Ampere Analysisでシニア・アナリストを務めるオリナ・ザオ氏は、「インドは、米国と中国に次ぐ世界第3位のSVOD市場としての地位を維持し、2027年には加入件数が1億8,000万まで成長すると予想されています。Disney+ Hotstarにとっては、コンテンツの支出と契約維持・獲得のバランスを取ることが要(かなめ)となるでしょう」と見解を述べた。

《Hollywood》

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ロサンゼルスに11年在住していた海外エンタメ翻訳家/ライター。海外ドラマと洋画が大好き。趣味は海外旅行と料理、読書とカメラ。