今泉力哉監督と生方美久氏が対談、新世代恋愛作品のトップランナーたちが語る創作の秘密とは?

映画学校ニューシネマワークショップ(NCW)による特別講座がオンラインで開催され、NCWOBで映画『愛がなんだ』『ちひろさん』などを手がけた今泉力哉監督、同じくNCWOGで「silent」で一躍注目を集めた脚本家・生方美久氏との“初対談”が実現した。

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今泉力哉監督と生方美久氏が対談、新世代恋愛作品のトップランナーたちが語る創作の秘密とは?
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ニューシネマワークショップ(NCW)による「特別講座2023 vol.3 NCWOBプレミアムトークセッション」がオンラインで開催され、NCWOBで映画『愛がなんだ』『ちひろさん』などを手がけた今泉力哉監督、同じくNCWOGで「silent」で一躍注目を集めた脚本家・生方美久氏との“初対談”が実現した。

本イベントでは200名以上のオンライン参加者が見守る中、新世代恋愛作品のトップランナー二人による創作の秘密が語られた。

以前からNCWのOB・OGにして共に恋愛作品を手がけ、共通項の多さから互いに気になる存在だったという両者。SNSの投稿で今泉氏との対面を熱望していたと生方氏に対して、今泉監督は「近しい存在だと感じていた、今日は貴重な機会」と本イベントの開催を心待ちにしていた様子。

NCW受講の理由とは?

今回、初対面となった両者のトークセッションの前にお互いがトップランナーになるまでのキャリアの変遷が語られた。今泉監督は「一度映画に挫折したが、もう一度やりたいと最後の想いだった」とNCW受講の理由を振り返り、今では脚本家としての地位を築いた生方氏は受講当初は映画監督を目指していたことを明かした。「大学時代から映画が好きで、NCWに入る前から独学で脚本は書いてはコンクールに応募していた。ただ、いざ社会人になってやっぱり好きな映画を目指したいと思った時、映像の事は習わないと限界があると思った」とNCWの門を叩いた理由を回顧した。

二人が受講した映画クリエイターコースは「映画監督になりたい人」「映画をつくってみたい人」向けの半年間の講座。「まず撮ってみる」という実践中心のプログラムで短編作品を制作する。15分の短編作品『透明なシャッター』(04)を制作した今泉監督は「長尺で作ればよかった。内容的に15分に収める作品じゃなかった」と当時を思い返し、悔しさをにじませていた。一方、生方氏は初監督作品『まだ生まれていない、生きているあなたへ』(21)での監督業について触れられると「監督を経験して自分は向いていないと思った。監督は現場で周りをどう動かすのか本当に難しい。まずは脚本を極めようと思った」というエピソードを披露。しかし「監督は諦めていない。いつか機会があればやってみたい」と監督業への意欲も見せていた。

今泉監督が考える脚本変更の匙加減

トークセッションでは生方氏から今泉監督へ「他の方が書いた脚本を現場で変えたい、もっと手を入れたいと思った時のさじ加減をどうしているのか?」という質問に対して苦笑いを浮かべながらも「原作がある場合は、原作者や脚本家から事前に了承を貰いつつ、なるべく失礼にならない範囲でセリフを足すことがある」と回答。一方で、大ヒットした映画『愛がなんだ』では、原作者の角田光代氏と一度も会わずに制作を進行したという。当初、「角田さんにお会いして事前にお話した方がいいのでは?」と周囲に話していたが、「角田さんは自身の原作と映像作品は切り離しているため、おそらく映画も観ることはないんじゃないかな」という話を聞いて「そうなのか」と思っていたそう。だが実際には、完成後に角田氏本人が初号試写にいらっしゃったとのこと。「あれ、話が違うぞ」という若干の焦りはあったものの、映画を観た角田氏が作品を気に入ってくれて安堵したという。さらに、その後、角田氏が原作を読み直すためにわざわざ本を探して読んだというエピソードを伝え聞き、今泉監督が興奮気味に「それが一番幸せでした」と笑顔で振り返り、生方氏も「それは凄いですね!」と驚いた様子で反応していた。

こだわりは“セリフづくり”

話題が脚本作りに及ぶと、「セリフへのこだわりがある、セリフを書くために脚本を書いている」と生方氏が言うと、今泉監督も「セリフにこだわりたいから自身の作品の脚本も共作にしてもらっている」と続く。一方で、プロデューサーからセリフを削ってほしいと言われ、いざ修正をしてみるとページ数が増えてしまうということもよくあるそう。いい作品の条件として会話に引き込まれることが大事だという想いがあるが故に「本当の言葉の意味やニュアンスを伝えようとするとセリフが増えてしまうので、どこまでこだわるか、いつもせめぎ合いをしている」と今泉監督が続けると、生方氏も共感するように頷いていた。

その後も監督、脚本家の双方の立場から作品作りへこだわりやスタンス、映画、ドラマ問わず今後制作してみたい作品などの話が続き、トップランナー同士の刺激的な2時間半にも及ぶトークセッションは終了した。

特別講座2023 vol.3 NCWOB プレミアムトークセッション概要

日時:5月18日(木)19:30~22:00

会場:ニューシネマワークショップ(新宿区早稲田町73番地 村橋ビル2F)※オンライン開催

登壇者:今泉力哉(『愛がなんだ』『ちひろさん』監督)

    生方美久(「silent」脚本)

進行:小川和也(NCW映画クリエイターコース・ディレクター)、武藤起一(NCW主宰)

《Branc編集部》

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