ディズニー、前CEOが提唱したメタバース部門を閉鎖

ディズニーのCEOであるボブ・アイガー氏の大幅な人員削減により、前任者であるボブ・チャペック氏が提唱したメタバース部門の閉鎖が決定したと報道された。

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米ウォルト・ディズニー・カンパニーが、メタバース戦略を担う「次世代ストーリーテリング&コンシューマー・エクスペリエンス」部門を閉鎖したことがわかった。米VarietyWall Street Journalが報じた。

関係者によると、同部門に所属していた約50名の従業員が解雇対象となったという。部門を率いていたマイク・ホワイト氏は社内に留まる見込みだが、具体的な役割は未定とされる。今回の閉鎖は、ボブ・アイガーCEOが進める大規模な構造改革の一環であり、広範なレイオフ(一時解雇)の「第一波」と見られる。

今回のメタバース部門閉鎖は、決して突発的な出来事ではない。今年2月、復帰したボブ・アイガーCEOが決算発表で打ち出した「歴史的な組織再編」の実行フェーズに入ったことを意味する。

アイガー氏は全従業員の約3%にあたる7,000人の削減と、55億ドル(約7,200億円)規模のコストカットを明言していた。市場はこの「非情な決断」を好感し、発表直後の株価は上昇したが、その刃はまず、前CEOボブ・チャペック氏が肝いりで設立したプロジェクトに向けられた形だ。


アイガー氏は復帰直後、チャペック氏が設置した「DMED(Disney Media & Entertainment Distribution)」の解体を決めている。DMEDはコンテンツの「制作」と「収益化」を切り離し、データ重視の配信戦略を推し進めるエンジンだったが、これは現場のクリエイターから決定権を奪うことになり、組織の分断を招いていた。

今回のメタバース部門もまた、チャペック時代の遺産である。アイガー氏は「ディズニー・エンターテイメント」を新たに設立し、本来の強みである「クリエイター主導」への回帰を急いでいる。収益化の目処が立たない実験的なメタバース事業よりも、足元のコンテンツ強化を選んだと言える。

将来有望とされるメタバースから早々に撤退する背景には、本業である動画配信事業の巨額赤字という、差し迫った事情がある。

最新の決算において、DTC(Direct to Consumer)部門は10億ドルを超える営業損失を計上しており、会員数の拡大を最優先としてきた従来の戦略に行き詰まりが見えていた。ストリーミング市場全体のユーザー獲得競争は熾烈を極め、各社とも消耗戦に突入している。


アイガー氏は社内メモで、今回のレイオフに続き、4月に大規模な第二弾、そして初夏までに最終的な第三弾の人員削減を行う予定であると述べている。


今後は、マーベルやスター・ウォーズといった「ドル箱」IPについても、その扱い方は慎重になる見込みだ。アイガー氏は「どれだけの量(Volume)が必要か、どれだけのものを作るかを理解し、コストを削減する」と述べており、制作本数と単価の両面から厳格な管理が行われることになる。

アイガー氏は「制作費および技術費の増加」にメスを入れると宣言しており、湯水のように投資するフェーズは終わった。確実な利益を生む構造への集中を図る中で、投資対効果の不透明なメタバース部門が整理対象となったのは、財務的な必然と言えるだろう。

《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。