ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(以下ワーナー)は、HBO Maxから削除されたコンテンツをサードパーティのFASTサービス(※)に販売し、かつ同社はこの分野への参入を準備中であることが分かった。
(※)FAST:Free Ad-Supported Streaming TV。広告入り無料動画配信サービスのこと。
「レイズド・バイ・ウルヴス/神なき惑星」「ヘッド・オブ・ザ・クラス」「きみがぼくを見つけた日」など最近打ち切りとなったドラマ作品が最近ストリーマーから削除された。加えて、リアリティ番組の「Legendary」と「FBoy Island」も削除されたことが確認されている。ワーナーは、上記のような配信停止となった番組を含むパッケージを、サードパーティのFASTチャンネルに使用許諾を販売するためにまとめていることを明らかにしている。今週初めにHBO Maxからの撤退が発表されたワーナー・ブラザース・テレビジョンとHBO制作の「ウエストワールド」や「ザ・ネバーズ」といったシリーズも含まれるとのことだ。
ソニー・ピクチャーズ テレビジョンの「Gordita Chronicles(原題)」、Paramount Television Studiosの「メイド・フォー・ラブ」、パラマウント・グローバルの「The Garcias(原題)」、ライオンズゲート・テレビジョンの「Love Life and Minx(原題)」といった最近キャンセルされた作品の権利は、プロデューサーやスタジオに戻ることになり、ワーナーは「FASTプラットフォームへのシリーズのライセンス提供を含むが、それに限らず番組をさらに拡大する機会についてスタジオパートナーと話し合っている」と明かした。
かつての看板番組『ウエストワールド』さえも他社へ切り売りする背景には、合併後のワーナー・ブラザース・ディスカバリーが直面する深刻な財務課題がある。
同社の株価はディスカバリーとの統合前から半減しており、直近の2022年第3四半期(3Q)決算でも苦しい数字が並ぶ。企業結合が期首に完了したと仮定した「プロフォーマ情報」に基づく比較では、売上高は前年同期比11%減、本業の稼ぎを示す調整後EBITDAも9%減といずれもマイナス成長だ。
つまり、ザスラフCEOが進める「なりふり構わぬコストカット」は、単なる方針転換ではなく、数字を作らなければならない切迫した状況から来る必然的な措置と言える。
ワーナーは、35億ドルのコスト削減目標を達成するため、ここ数週間、HBO Maxから急速にコンテンツを引き抜いている。その他のコスト削減策として、同社はHBOとHBO Maxのスタッフの14%を解雇し、多くの予算をかけた『バットガール』をお蔵入りにし、北欧のHBO Max向けのローカルオリジナル作品の開発を中止。さらにHBO Max EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)オリジナルチームを閉鎖する計画を立てている。
社長兼CEOのデヴィッド・ザスラフ氏は、先月の決算説明会で、この大幅な変更を擁護し「この会社を再編するのは大変なことですが、本当に勇気のいることです。この10年半、会社の再編と将来への再構築は行われていない」と述べた。さらにカットされたコンテンツについては「私たちは、私たちの助けになるような番組を1つもプラットフォームから外しませんでした。プラットフォームから外すことで、それらの番組をより成功する可能性のあるコンテンツに置き換えることができるのです」と述べた。
実際、ザスラフ氏のコストカット戦略は数字の上では一定の成果を上げている。 映画などを扱う「Studios Segment」の3Q実績を見ると、売上高こそ5%減少しているものの、EBITDAは逆に37%もの大幅増を記録した。これは原価(14%減)や販管費(21%減)を徹底的に削ぎ落とした結果だ。
今回報じられたHBOコンテンツの削除とFAST(広告付き無料配信)へのライセンス販売も、この文脈で読み解く必要がある。自社プラットフォーム(HBO Max)での「囲い込み」による将来的な会員増よりも、他社へライセンスを販売して得られる「即時的な現金収入」と「在庫維持コストの削減」を優先した形だ。
一方で、DTC(動画配信)部門のコンテンツ原価は20%増加しており、現場レベルでは依然として良質な作品への投資意欲が見られる。今回の決定は、「質の維持」と「収益化」の板挟みの中で下された、苦肉の策とも言えるだろう。
Sources:Variety

