TBSグループ、人権DDアンケート結果を公表。労働環境に関する課題はあるが、「職場環境は改善」との前向きな声も

TBSグループが人権DDアンケートを実施。長時間・深夜労働のリスクを約41%が「高い/やや高い」と認識し、パワーハラスメントも約28%が同様に回答。課題が可視化される一方、職場環境改善への前向きな声も1125人から寄せられた。グループは「ハラスメントゼロ」と持続可能な制作環境を目指し、人権方針の浸透やサプライチェーン全体への対応を進める。

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TBSグループ、人権DDアンケート結果を公表。労働環境に関する課題はあるが、「職場環境は改善」との前向きな声も
TBSグループ、人権DDアンケート結果を公表。労働環境に関する課題はあるが、「職場環境は改善」との前向きな声も

TBSホールディングス(TBSHD)およびグループ基幹6社は、全役職員を対象に実施した「社内人権デュー・ディリジェンス(人権DD)アンケート」の結果概要を公表した。対象はTBSHD、TBSテレビ、TBSラジオ、BS-TBS、TBSスパークル、TBSアクト、TBSグロウディアの全役職員4646人で、有効回答数は4077件、回答率は87.1%に達した。

調査は、TBSグループ内における人権リスクの状況と課題を把握し、職場環境の改善につなげることを目的に実施された。実施期間は2025年12月8日から12月26日まで。アンケート内容は、「ビジネスと人権」の取り組みに詳しいプロアクト法律事務所の協力・監修のもと構築され、実施と分析も同事務所に委託された。

映像産業においては、制作現場の労働環境やハラスメント対策、外部スタッフを含むサプライチェーン全体の人権対応が重要な経営課題となっている。今回の調査結果は、TBSグループが持続可能なコンテンツ制作環境の整備に向けて、現場の実態把握と改善策の具体化に踏み出したものといえる。


長時間・深夜労働の人権リスク、約41%が「高い/やや高い」と回答

調査では、TBSグループの人権方針や関連施策が、制作現場まで十分に浸透していない可能性が指摘された。

職場における人権リスクについては、長時間・深夜労働を「高い」または「やや高い」と感じる回答者が約41%に上った。映像制作や放送事業では、番組編成、収録、編集、納品などの工程が複雑に連動し、突発対応や深夜帯の作業が発生しやすい。今回の結果は、こうした業界構造を背景とした過重労働リスクが、依然として現場で意識されていることを示している。

また、パワーハラスメントについても、約28%がリスクを「高い」または「やや高い」と回答した。取引先などからのカスタマーハラスメントについても、比較的高い割合でリスク認識が示されたという。

さらに、派遣社員など外部スタッフの人権リスクが高いと感じる回答者が多いことも明らかになった。コンテンツ制作では、社内人材だけでなく、制作会社、技術会社、フリーランス、派遣スタッフなど多様な関係者が関わる。TBSグループは、社内および全てのサプライチェーンに対し、人権方針やガイドラインの浸透を図るとしている。

自由意見は1125人から「職場環境は改善」との前向きな声も

今回のアンケートでは、回答者の約4分の1にあたる1125人から自由意見が寄せられた。TBSHDは、この結果について、人権に対する関心と意識の高さが示されたものとしている。

自由意見では、職場環境の改善に関する提案などが寄せられた一方、「以前と比較して職場環境が改善している」といった前向きな評価も見られたという。課題が可視化された一方で、これまでの改善施策が一定程度、現場に受け止められている側面もうかがえる。

TBSHDは、調査結果と今後の取り組み方針について、2026年5月14日に取締役会で承認を受けた。その後、5月21日には対象各社の全役職員に向けてフィードバック報告会を実施した。

調査の回答方法については、回答者の心理的安全性を確保するため、TBS側に対しては匿名とした。一方で、調査を実施したプロアクト法律事務所では、必要に応じて追加調査を行えるよう、実名を把握できる体制とした。

「ハラスメントゼロ」へ、持続可能なコンテンツ制作環境を目指す

TBSグループは、今回の調査結果を受けて、「人権環境を改善するための約束」を新たに策定した。

同方針では、「最高のコンテンツや最良のサービスは、すべての働く仲間が“幸福な挑戦”をできる環境から生まれる」とし、「挑戦は果敢に、関係はフェアに」を掲げた。TBSグループで働くすべての人が、年齢、所属、立場に関わらず互いをリスペクトし、フェアな関係を築くことで、ハラスメントゼロを目指すとしている。

具体的には、以下のような取り組みを進める方針である。

  • 年齢・所属・立場に関わらず、互いを尊重する職場づくり

  • 誰もが挑戦できる機会を公平に与えられる組織づくり

  • 心身ともに健全に働き続けられる相談環境の整備

  • 社員・スタッフを人権侵害やカスタマーハラスメントから守る体制づくり

  • 業務負担の見直しや人員不足の解消による過重労働の抑制

  • 社内およびサプライチェーン全体への人権方針・ガイドラインの浸透

TBSHDの阿部龍二郎代表取締役社長は、今回のアンケートで「多くの率直かつ切実な声が寄せられた」とし、経営として真摯に受け止める姿勢を示した。そのうえで、TBSグループに関わるすべての人が尊重され、それぞれの力を発揮できることが、新たな価値や創造性の源泉になるとの考えを示している。

TBSグループは今後、「人権環境を改善するための約束」に基づき、具体的なアクションプランを策定する。また、その実効性について継続的にモニタリングしていく方針である。

映像産業では、良質なコンテンツを継続的に生み出すために、制作現場の労働環境改善、人権尊重、ハラスメント対策が不可欠になっている。TBSグループの今回の取り組みは、放送・映像業界における「ビジネスと人権」対応の一例として、今後の進捗が注目される。

《杉本穂高》

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杉本穂高

Branc編集長 杉本穂高

Branc編集長(二代目)。実写とアニメーションを横断する映画批評『映像表現革命時代の映画論』著者。様々なウェブ媒体で、映画とアニメーションについて取材・執筆を行う。

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