新潟県新潟市にて開催中の「新潟国際アニメーション映画祭(NIAFF)」において、新設された「Indie Box部門(コンペティション)」選出監督による記者会見が行われた。
登壇者は、『LOCA!』のうったまー監督(日本)、『プロジェクト・アエテルナ』のキム・デニス・スンミン監督(韓国)、『ミュージカル・パイパーズ :: ザ・パイド・パイパー』のプ・ピョジョン監督(韓国)、『ザ・ポップスター・ウォーター・ディアー・アンド・アイ』のイ・サシャ監督(韓国)の4名。多国籍なクリエイターたちが一堂に会し、自身の制作ルーツや各作品の魅力について語った。
4監督のアニメーション制作への道と作品の魅力
会見の冒頭では、各監督がアニメーション制作を始めたきっかけと、今回選出された作品の背景について語った。
ミュージックビデオの制作からキャリアをスタートさせたうったまー監督は、「自由に好きなものを物語れる」というアニメーション映画の魅力に惹かれ制作を決意したという。自身の作品『LOCA!』については、「毎日の楽しみを一緒に見つけにいこう」というテーマのもと、荒廃した世界を電車で旅する日常をゆったりと描いた作品で、これまでの商業アニメにはないルックを目指したと説明した。

子どもの頃からアニメに親しんできたというキム・デニス・スンミン監督は、「なぜアニメーションでなければならないのか」を常に自問自答していると語る。『プロジェクト・アエテルナ』では、SFの設定において比喩的な要素を視覚言語として入れ込み、独自の世界観を構築する上でアニメーションの手法が不可欠だったと明かした。

プ・ピョジョン監督は、大学で様々な映像手法を学ぶ中でアニメーションの持つ表現力に魅了されたという。『ミュージカル・パイパーズ :: ザ・パイド・パイパー』は、マイノリティが受ける差別などの重いテーマを、ミュージカル調の爽快な演出と組み合わせることで、辛い現実を芸術として昇華させた作品とのことだ。

イ・サシャ監督は、「自身のドローイングによってキャラクターの姿や形を自由自在に変えられ、手先で激情的な感情表現ができる」点にアニメーションの魅力を感じていると語り、その表現の自由度の高さを強調した。

新潟の印象と映画祭への参加理由
新潟国際アニメーション映画祭への参加理由や新潟の印象について問われると、各監督から様々な声が挙がった。
うったまー監督は、過去の映画祭関連プログラムで『LOCA!』のプロトタイプを上映した縁があり、今回は5.1ch音響などにバージョンアップした完成版で正式に応募したという。「新しい実行委員の方々によるチャレンジングな姿勢が伝わってくる」と映画祭の熱量を評価するとともに、新潟の街ぐるみでの盛り上がりや食事の美味しさも堪能している様子だった。
韓国からの参加となるキム監督とイ監督は、配給会社からの勧めがきっかけだったと述懐。キム監督は「Indie Boxの上映作品を見て、クオリティの高さとバラエティの豊かさに圧倒された」と語り、イ監督も「ストーリーテリングを中心にした中・長編作品が多い点が他の映画祭と差別化されている」と、本映画祭の独自性を高く評価した。またイ監督は「雪がなくて残念だったが、お米やお寿司がとても美味しい」と新潟の食を満喫しているエピソードも披露した。
プ・ピョジョン監督は、映画祭の歴史は浅いものの選出作品のレベルが非常に高い点に惹かれて応募。「アニメとマンガのブランドを作り上げている都市」としての新潟の雰囲気や美しさに惹かれると語った。
長編制作への意欲と映画祭の重要性
今後の展望や、より大きな規模での長編制作について問われると、それぞれのクリエイターとしてのスタンスが浮き彫りになった。
うったまー監督は長編制作への強い意欲を見せ、「背景美術の会社に入ってスキルアップし、長編制作への準備をしたい」と具体的なビジョンを明かした。大人数での制作における作家性の懸念については、「メンバーの個性をミックスして作品にプラスになる要素を選んでいくことにやりがいを感じた」と、チーム制作へのポジティブな手応えを語った。
キム監督も長編や実写への意欲を示しつつ、「最も重要なのはストーリーテラーとしてのスキルを向上させること。大きな組織で作る場合でも、物語を語ることを優先したい」と自身の軸を強調した。
一方、プ・ピョジョン監督はYouTube等で既に14万人のフォロワーを抱えており、「長編映画への挑戦よりも、作品をIPとして確立させ、グローバルなクリエイターとの繋がりを増やしていきたい」と独自の路線を提示。本作でも世界各国から50人程のアニメーターを雇用して制作を進めたという。
イ・サシャ監督は「自分の名前で長編を作りたい」と意気込みを語る。短編や長編といったトレンドに柔軟に対応しつつ、フリーランスの仕事で得た資金を自身の作品制作に還元するサイクルを確立しており、「その過程でクリエイティブな自由が侵害されることはない」と力強く断言した。
また、クリエイターにとっての「映画祭の意義」に話題が及ぶと、各監督から熱い思いが語られた。
うったまー監督は、映画祭を「横の繋がりを得る機会や、フックアップしてもらえる場所」として評価。映画祭での受賞が劇場公開へ向けた大きな売り込みの要因になるとして、「多くの人に作品を見てもらうための場所」であるとその実用的な側面も強調した。
キム監督は、「作品作りに熱心な人々が集まる場所へ行き、エネルギーを共有し合えること」の重要性を説き、「インスピレーションを受けられるかけがえのないもの」と表現した。プ・ピョジョン監督もこれに同意し、「クリエイターたちが集い、同じ作品を共に見てコミュニティができることは本当に有意義」と、観客や作り手同士が直接対面できる喜びを語った。
イ・サシャ監督は、規模の大小を問わず様々な映画祭に参加してきた経験から、「常に『この作品すごく良いな』と思える出会いがあり、それがとてつもなく大きなインスピレーションになる。自分もまた作品を作って、ここに戻ってきたいという原動力になる」と力強く語り、映画祭が次なる創作へのモチベーションの源泉となっていることを明かした。
Indie Box部門は一回目から意欲溢れる気鋭のクリエイターたちが集い、熱気あふれる議論が交わされる場として、映画祭の牽引約として期待される。







