2026年1月26日、日本初開催となるAI映画祭「WORLD AI FILM FESTIVAL 2026 in Kyoto(WAIFF KYOTO)」のメディア懇親会が都内で開催された。
生成AI技術が世の中に急速に普及する中、期待と懸念が入り混じるこの技術と、映像産業はどう向き合うべきか。実行委員会代表の和田亮一氏と、審査員を務める株式会社サラマンダー代表の櫻井大樹氏が登壇し、開催の経緯や映画祭に込めた想いを語った。
「5年間やり続けろ」元Apple幹部との約束と開催経緯
本映画祭は、2025年4月にフランス・ニースで第一回が開催されたAI映画祭「World AI Film Festival」の日本版パートナーシップの位置づけとなる。
開催のきっかけは、代表の和田氏が昨年のフランス開催時に現地を訪れたことにある。当時、日本からの参加者は和田氏一人だったという。現地では、フランスの名匠クロード・ルルーシュ監督らが審査員を務め、「AIは人間に何をもたらすのか」という哲学的な議論が交わされていたことに和田氏は感銘を受けた。

主催者の元AppleCOOマルコ・ランディ氏に、和田氏は日本開催を直談判。4日間にわたる交渉の末、開催権を得たが、その際にランディ氏から提示された条件は「単発で終わらせず、5年間継続して文化として定着させること」だった。
和田氏は本映画祭の意義について「世界へのゲートを開くこと」だと語る。

WAIFF KYOTOの受賞作品は、2026年4月にカンヌ国際映画祭と同じ会場「パレ・デ・フェスティバル」で開催される本大会へ出品される資格を得られる。
「誰かが地雷原を歩かねばならない」審査員・櫻井大樹氏
審査員として登壇した株式会社サラマンダー代表の櫻井大樹氏は、Production I.GやNetflixでのキャリアを持つアニメ業界のベテランだ。修士論文でAIをテーマにするなど技術への造詣は深いが、現在の生成AIブームに対しては「手放しで肯定できるわけではなく、警戒心もある」と率直な心情を吐露した。
それでも審査員を引き受けた理由について、櫻井氏は「ファーストペンギン」の例えを用い、「みんな誰かが地雷原を歩くのを待っている状態。であれば、自分が歩いて爆発しても、怪我をするのは自分だけで済む」と、業界のために火中の栗を拾う覚悟だったという。

櫻井氏は、産業革命時のラッダイト運動を引き合いに、「機械を否定するだけでは解決しない。どういう働き方にしていくかを考える時期に来ている」と自身の考えも披露した。
また、審査のポイントとして、AI特有のハルシネーション(幻覚)や不完全さを逆手に取った、新しいストーリーテリングの可能性に期待したいと語った。
賞を与えるだけではなく「是非を問う」場所に
本映画祭は、単に優れた作品を表彰するアワードにとどまらず、有識者を迎えての議論の場も用意するという。

和田氏は「AIは人間の強力なパートナーとなり得るが、同時に議論すべき課題も多い」とし、映画祭を「賞を与えるだけではなく、AIの是非を問う場所、議論のきっかけを作る場所にしたい」と強調した。
会期中は、クリエイターだけでなく、弁護士、プロデューサー、技術者などを招き、著作権問題やAIと人間の共存について多角的なトークセッションが行われる予定だ。櫻井氏も「賛成派だけでなく、懐疑派や反対派の人たちも積極的に参加し、建設的な議論ができる場になることを望んでいる」と呼びかけた。
「WORLD AI FILM FESTIVAL 2026 in Kyoto」は現在エントリーを受付中(2月15日締切)。3月に京都での授賞式を経て、4月のカンヌ本大会へとつながる。
応募の詳細は公式サイトで確認できる。






