経産省は2025年6月、日本のエンタメ・クリエイティブ産業の国際競争力を強化し、2033年までにコンテンツ産業の海外売上高20兆円を目指す「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」のアクションプランを公表した。本戦略は、日本のコンテンツ産業が直面する課題を「8つの不足」として明確化し、それを解決するための「10分野100のアクション」からなる5ヵ年の具体的な行動計画を示している。
基幹産業へと成長したコンテンツ産業
日本のコンテンツ産業は、この10年間で海外売上が約3倍に増加し、2023年には約5.8兆円に達した。これは鉄鋼産業や半導体産業の輸出額を上回る規模であり、自動車産業に次ぐ基幹産業として位置づけられている。
世界のコンテンツ市場も年平均成長率5%での成長が予測されており、日本のコンテンツ産業が海外需要を取り込む大きな好機を迎えている。デジタルプラットフォームの普及により、日本のコンテンツは世界中の消費者に直接届くようにり、従来の海外パートナーにライセンスを供与する「ライセンスアウト型」から、日本のコンテンツ企業が自ら海外でイベントや物販を行い、より大きな収益を目指す「コンテンツ海外展開2.0」へとビジネスモデルが転換しつつある。
この新しい展開は、他産業への波及効果も大きい。韓国においては、コンテンツ輸出が行われることにより、コスメ、加工食品、IT機器、ファッション等について、約1.8倍の市場創出効果が形成されると資料では指摘。コンテンツ産業が海外で開拓したファン層やバリューチェーンは、他の消費財産業にとっても「海外展開プラットフォーム」として機能し、日本産業全体の海外展開の橋頭保となることが期待される。

「コンテンツ海外展開2.0」を阻む「8つの不足」
経産省は、海外売上20兆円の目標達成に向け、産業界が克服すべき課題を「8つの不足」として整理した。
海外で「魅せる」機会の不足: 海外での大型イベントやプロモーション機会が限定的であり、ファンダム形成のノウハウも不足している。
国内で「魅せる」「作る」拠点の不足: 海外ファンを惹きつける象徴的な施設や制作拠点が国内に不足しており、訪日の強力な動機付けができていない。
クリエイターの働く環境の改善、スキル向上と収入増の好循環の不足: クリエイター不足や制作能力の逼迫が顕著であり、スキルに基づいた適切な収入還元や就業環境の改善が急務である。
「収入ギャップ」の解消: 海外売上高のうち、国内企業に還元される比率は6割弱に留まっており、ライセンスビジネスからの脱却やプラットフォームとの契約透明化が必要である。
新規技術・コンテンツの取込みの不足: AIやバーチャルプロダクションなどの新規技術の導入が、予算や人材不足により遅れている。
海外勢との戦略的提携の不足: 各国の規制や商慣習に応じた政府間での連携や、国際共同製作、海外作品のロケ誘致などが十分に進んでいない。
海賊版対策・正規版転換の不足: 推定約2兆円に上る海賊版被害への対策に加え、正規版を海外ファンに確実に届ける取り組みの強化が求められる。
総合的な支援体制の不足: 海外展開をサポートする一元的な指令塔機能や、現地のビジネスインフラ整備が不足している。
課題解決に向けた「10分野100のアクション」
これらの「8つの不足」を解消するため、分野横断的な施策と、各分野の特性に応じたきめ細やかな対策を組み合わせた「10分野100のアクション」が策定された。対象となる10分野は、「ゲーム」「アニメ」「漫画・書籍」「書店」「音楽」「映画・映像」「デザイン」「アート」「ファッション」「『みる』スポーツ」だ。本稿では映像コンテンツのうち「アニメ」のアクションプランについて紹介を試みる。