『シビル・ウォー』ヒットで花開いたハピネットの脱映像パッケージ戦略とは?【決算から映像業界を読み解く】#82

アメリカの内戦を描いた『シビル・ウォー』が思わぬヒットに沸いている。

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『シビル・ウォー』ヒットで花開いたハピネットの脱映像パッケージ戦略とは?【決算から映像業界を読み解く】#82
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アメリカの内戦を描いた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が思わぬヒットに沸いている。

インディペンデント系の洋画でありながら、10月4日に公開された週末動員ランキングで1位を獲得した。快挙とも言うべき作品だが、この映画の配給を行っている会社こそハピネットの子会社ハピネットファントム・スタジオである。ハピネットはアニメーションや映画、ドラマなどのDVD販売のイメージが強いが、斜陽産業からの脱却を図るべく、脱パッケージ化を戦略的に進めていた。

映像音楽事業は緩やかな減収に苦心しているが、成功事例を出した意味は大きい。

A24と独占契約を結んだハピネットの先見性

ハピネットファントム・スタジオは、2023年10月にA24 Films LLCが世界配信権を所有する新作映画について、ハピネットファントム・スタジオが独占的に国内配給を手がけることなどを盛り込んだ独占パートナーシップ契約を締結していた。


A24とハピネット・ファントムスタジオは、アカデミー賞作品賞など3部門を受賞した『ムーンライト』、日本でも大ヒットを記録した『ミッドサマー』などにおいて、ライセンサーとライセンシーとしての協力関係を築いていた。

A24は映画祭などで活躍する若手監督を見出だし、自由に撮影させる特異なスタイルをとってきた会社。スタッフの多くも若手であり、瑞々しい感性を持ちながら、作家性を帯びつつも娯楽作品として成立させていることに特徴を持っている。

グッズ販売にも力を入れており、アパレルグッズや食器、食品、ゲームなど取り扱う幅も広い。映画と同じくスタイリッシュで洗練されているため、若い層を中心に人気がある。グッズを手がけるという点においては、ハピネットも同じだ。ハピネットはパートナーシップ契約締結に際して、映画のグッズ等のA24のマーチャンダイジングへの拡大に意欲を見せていた。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の公開は2024年10月(北米公開は2024年4月)であり、米大統領選挙が過熱していた絶妙なタイミングだった。このころのアメリカは分断が一つのキートピックだった。大統領選に勝利したトランプ氏はエリートと非エリート、白人と非白人、そして保守とリベラルの分断を煽るような演説、主張を繰り返して支持を集めていたからだ。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は行き過ぎた分断が行き着く先を描いたものであり、決して荒唐無稽なものとは言えないだろう。仮にこの映画が、オバマ氏が大統領だった時代に公開されていたとしたら、現実的ではないと一笑に付されて終わっていた可能性もある。

インディペンデント系映画でヒット作を送り出すのは難しい。しかし、A24のように観客が求めるものにアンテナを張り、時代の流れを読める会社は良作を生み出す確率が高いのではないか。独占パートナーシップ契約を結んだハピネットの先見性の高さもうかがい知ることができる。

しかもハピネットはバンダイナムコホールディングスが24%超の株式を保有する持分法適用会社だ。バンダイナムコのIPやリソースに依存するのではなく、独自にビジネスを切り開こうとする姿勢にも並々ならぬ情熱が感じられる。

事業単体では2期連続のセグメント損失を計上

ハピネットの映像音楽事業は足元では苦戦している。


《不破聡》

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