中部日本放送、新体制でスタートするも成長に向けた具体的な一手を繰り出せず【決算から映像業界を読み解く】#80

CBCテレビを擁する中部日本放送は2025年3月期上半期を減益で折り返した。

ビジネス 決算
中部日本放送、新体制でスタートするも成長に向けた具体的な一手を繰り出せず【決算から映像業界を読み解く】#80
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【お詫びと訂正】

記事公開時、役員一覧資料を読み違えており、社外取締役の安井氏、岡谷氏、茶村氏の3名について、「2024年3月期まで取締役であった」と記載しており、記事内容に誤りがございました。また、役員報酬についても文脈上誤解を招く表現がございました。

本記事については非公開の後、誤りを修正して再公開したものです。関係各位に深くお詫び申し上げます。


CBCテレビを擁する中部日本放送は2025年3月期上半期を減益で折り返した。

営業利益は3.3%、純利益は20.0%の減益。メディアコンテンツ関連事業が赤字で回復が遅れているうえ、受取配当金の減少などで純利益が2割減となった。中部日本放送は2023年6月の株主総会で升家誠司氏の代表取締役社長就任を決議。今期は新体制でのスタートを切ったが、業績の停滞感が払拭しきれていない。

2026年度までに売上高350億円、営業利益15億円達を目指している。目標達成に向けた具体的な青写真が描けていない印象を受ける。

成長をけん引するビジネスプロデュース事業の進捗は?

2025年3月期第2四半期累計(2024年4月1日~2024年9月30日)の売上高は前年同期間比1.6%増の162億7,300万円、営業利益は同3.3%減の3億3,700万円だった。通期売上高を前期比1.4%増の330億9,000万円、営業利益を同0.6%増の13億9,000万円と予想している。

進捗率は売上高が49.2%、営業利益が24.2%。利益面では後れを取っているように見えるが、中部日本放送は下半期に利益が偏重する傾向がある。2024年3月期も上半期時点の営業利益の進捗率は25.9%だった。着地は3,100万円ほど上振れている。つまり、経営体制変更後も大きな変化は見られないということだ。

決算短信より筆者作成

中部日本放送は大きく3つの事業で成り立っている。テレビ放送やイベントなどを行うメディアコンテンツ関連、千代田会館など保有する不動産から収入を得る不動産関連、ゴルフ場運営などを行うその他である。

2025年3月期上半期におけるメディアコンテンツ関連事業の売上高は前年同期間比1.8%増の148億6,700万円、2億8,200万円の営業損失(前年同期間は2億8,600万円の営業損失)だった。

主力であるCBCテレビの同期間の売上高は3.8%増の109億8,500万円。スポンサーに番組内のCM放送枠を販売するタイム収入は7.7%増の36億5,900万円、番組に関係なくCMの時間枠を販売するスポット収入は1.8%増の63億1,800万円だった。コロナ禍から回復しつつあるものの、2020年3月期第2四半期累計(2019年4月1日~2019年9月30日)のCBCテレビの売上高は112億100万円。完全には戻り切っていない。

しかも、CBCテレビはコロナ前からタイム、スポット収入の減少に悩まされていた。今期以降もある程度の回復を見せた段階で、高止まりあるいは低迷する可能性もある。この傾向はすでにキー局で始まっており、中期的には新たな収益柱が必要になるはずだ。

中部日本放送は「中期経営計画2024-2026」において、放送枠以外の商品を開発する「ビジネスプロデュース事業」を収益の柱とする方針を掲げた。また、ビジネス領域の拡張でデジタル化社会に必要とされる新規事業を創出。事業ポートフォリオを最適化するとしている。

この中期経営計画を策定したのは、升家誠司氏が代表取締役社長に就任した後だ。しかし、具体的な一手が見えてこない。

キャッシュリッチで財務状態が過剰なまでに健全

放送枠以外の商品を開発するとなると、グループで新たな事業を立ち上げるのは難しいのではないか。日本テレビがフィットネスジムのティップネス、TBSが雑貨販売のソニープラザ、フジテレビが通販のディノスやセシールを買収したように、M&Aでの事業拡大、事業ポートフォリオの最適化が妥当だろう。

中部日本放送は社債の償還も済んでおり、実質的に無借金経営状態となっている。保有する現預金は2024年9月末時点で126億円。自己資本比率は80.2%にも及んでいる。財務状況は極めて良好だ。

同社のエリア人口は1,100万人であり、地域に根差した成長戦略が必要だ。それこそ、中部地方で活躍するスタートアップへの投資や同エリアでサービスを提供する企業の取得があってもいいだろう。中部日本放送は2020年10月にケイマックスの株式80%を取得して子会社化したが、それ以降は主だったM&Aを行っていない。しかも、ケイマックスは番組の製作や販売、イベント事業の企画などを行う会社で、テレビの周辺事業である。

実は中部日本放送は成長に向けた大胆な投資を行いづらい環境が出来上がっている。少なくとも、そう判断せざるを得ない条件がそろっている。それが役員の顔ぶれと役員報酬だ。

具体的なビジョンと投資が必要


《不破聡》

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