映画産業の都であるハリウッドが困窮している。
コロナ禍から回復しつつあったハリウッドに、脚本家や俳優を中心とした映画関連組合のストライキが追い打ちをかけ映画ビジネスは再び大打撃を受けた。ストライキ終了から、ほぼ1年が過ぎるが、ハリウッドのあるロサンゼルス群における撮影件数は回復するどころか、ストライキ前より悪化している。
窮地の現状
米国ではクリスマスと同格であるサンクスギビング(感謝祭)を目前に、多くの映画業界関係者が激減した収入に悩んでいる。
ロサンゼルス郊外に拠点を置くトライシーニック製作サービス社は、約40年間、舞台装置の保管や輸送などのサービスを提供してきた。2021年にはストリーミングの急成長と撮影需要の増加に応じ、7つのサウンドステージを建設。しかし、3年後の今、稼働しているのは1つだけだ。責任者であるヴィンス・ジャーヴェシ氏は41棟あった倉庫も半分に縮小し、今年7月には85人中78人を解雇せざるをえなかったという。
筆者の周りにも映画関係者がいるため、窮地のインパクトを目の当たりにしている。友人で撮影助手のデヴィッド・ダウェルが、夏の終わりのBBQパーティーに招待してくれた。だがその場にはどこか沈んだ空気が漂っていた。そのパーティーに来ていたほとんどの人たちが製作関係者で、会話の中心は「最後に働いた日はいつだったか?」や「カリフォルニアから引っ越すか?」、あるいは「映画業界からキャリアを変更するか?」といったものだった。
普段は忙しい友人デヴィッドも、ストライキが始まる直前からパッタリと仕事が途絶え、1年近く収入がないという話だった。幸いにも彼の妻が高校の教員をしているため、生活は維持できているものの、家計は厳しい状況が続いているという。