近年ファンを増やしている中国時代劇ドラマ。
BS・CSチャンネルや動画配信サービスなどで放送・配信される番組数も増加している。そんな中国時代劇に出演した若手俳優たちが来日するファンミーティング「中国時代劇ドラマファンミーティング~時を超えた出会い 2024・夏~」が8月4・5日に東京で開催される。韓国、タイなどのアーティストや俳優を呼ぶファンミーティングは珍しくないが、中国の俳優はこれまでにない試み。仕掛け人であるドロップの安田加奈子代表に、開催の経緯や日中エンターテインメント交流の展望などを伺った。
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――まず、安田さんのご経歴からお聞かせください。大学卒業後に日本のPR会社に入社されて、その後、中国に語学留学をされたそうですね。もともと中国にご興味があったのですか。
大学時代から中国映画などを観ていた影響で興味がありました。それで入社3年目のとき、社内で中国法人の駐在員の募集があり、手を挙げたんです。そのときは落選してしまいましたが、その後もチャレンジしたいという思いがあって、いったん休職という形をとり、自費で北京に語学留学することにしました。それから1年も経たないうちに、中国事業が伸びていたこともあり、駐在員という形で復帰することができました。そこから6年ぐらい現地で日本企業のマーケティングやPRといった代理店作業をしていました。北京ではオリンピックが終わり、上海万博が開かれた頃でしたね。
――ちょうど尖閣諸島問題で日中関係が悪化した時期ですよね。
そうです。担当していた自動車メーカーの販売店で暴動が起きたりして、毎週、本社宛てに中国の状況をレポートしていましたね。そんなリスク管理的な仕事もしつつ、化粧品メーカーなど消費者寄りのブランドの仕事では中国の俳優やタレントとコラボレーションするプロジェクトも手がけていたため、そこで「中国にとって、エンターテインメントってパワーがあるんだな」と実感することになりました。
ちょうどウェイボーが登場したくらいの頃で、「ウェイボーとは?」から学びながら、中国のSNSマーケティングの基本的な部分も学びました。
――中国のSNSマーケティングの黎明期に立ち会ったなんて、貴重な経験ですよね。帰国後も中国関係の仕事を?
東京法人に戻ったのは、ちょうど中国や韓国からのインバウンド(訪日旅行者)が増え、アリババやテンセントといった中国企業の最初の日本進出ブームだった頃です。そこで観光客向けの商品を販売したい日系企業の広告を担当したり、中国企業のPRのお手伝いをしたりしていました。そのときに培ったIT系企業の人脈は、今、役に立っています。
――その後、テンセントが制作した番組の日本向けPRもご担当されましたよね。
まさに、そのときの繋がりですね。
――独立してドロップを立ち上げたきっかけは何だったのですか。
コロナ禍で在宅勤務になり、インバウンドもなくなったとき、「時代は変わるな」と思いました。また、ある程度会社員としていろんな経験をさせていただいたので、これからはもう少しエンタメの分野で好きなことを突き詰めたいと思ったんです。
ファンミ企画はファンのリクエストがきっかけ
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――これまで、韓国やタイの俳優らのファンミーティングはありましたが、今回のイベント告知を見たとき「ついに中国の俳優が!」と思いました。
我々も俳優のファンミーティングを行うのは初めてです。それまでの1年くらいはアイドルや歌手の方のイベントをメインでやっていました。INTO1(イントゥーワン※)のファンもそうですが、サバイバルオーディション番組が好きなファンはもともとK-POPを好きだった方が多いので、これまで参考にしてきたのはK-POPの手法です。
※テンセントのサバイバルオーデション番組「創造営2021」から誕生した11人の男性グループ。日本人メンバー、サンタとリキマル、ミカも中国で人気者に。
――中国時代劇ドラマの俳優を呼ぼうと企画したきっかけはあったのですか。
ちょうど1年くらい前、SNSで「日本に呼んでほしい中国の方がいたら教えてください」と投稿したら、ものすごい数のコメントをいただいたんです。それまでは「C-POPの歌手で」という頭でしたが、結構中国の時代劇ドラマ関連の俳優さんの名前があることに気づきました。
――アンケートの結果、俳優とC-POPの割合はどのくらいだったのですか? また、今回来日されるのは、『陳情令』に出演している于斌(ユー・ビン)、劉海寛(リウ・ハイクアン)、紀李(ジー・リー)の3人と、『BOYS PLANET』『青春有你3』などのオーディション番組出演で知られる陳建宇(チェン・ジェンユ)の4人です。キャスティングの経緯も教えてください。
俳優とC-POPの割合は半々ぐらいだったと思います。俳優さんに関しては本当に様々な方の名前があがっており、特に時代劇で注目を集めた俳優さんの名前が多くあがっていた印象だったので、「時代劇ドラマ俳優」というくくりでイベントができるのではないかと思いました。ですから、きっかけはファンの皆さんの声なんです。それに、時代劇ドラマファンって中国特有ですよね。
――『陳情令』をきっかけに中国時代劇ファンタジーの世界に入ったファンと、わりと昔から中国ドラマが好きで中国時代劇を見ているファンとは、年齢層やタイプがちょっと異なるかもしれません。今回のファンミに参加されるのは、どういった層の方々なのか、気になります。
これまでのイベントでは、K-POPと同様にアイドルカルチャーにそった応援をされる方が多い印象で、私達もそれに応えたいと思っていました。また在日中国人の方など、そもそも中国にルーツを持つ方もたくさんいらっしゃいました。
ドラマのファンの方々は、中国の俳優さんとお会いすることもほとんどご経験がないでしょうし応援の方法なども確立していないと思うので、私達もどのようにサポートさせていただくか探り探りです。ドラマのファンの方々にお会いするのは私たちも初めてなので、どんな方々がいらっしゃるのか楽しみです。
――チケット発売開始後に追加公演を決定されましたね。想定以上の応募があったということでしょうか。
最初は私達もどのくらいの応募があるのか全く分からなかったのですが、告知を出したときに結構大きな反応があったので、そのときから出演者とも追加公演の話はしていました。彼らもスケジュールを空けてビザを取得してきてくれますし、来日するからには大勢のファンの方に会いたいですよね。正直、2日間の全公演が満員にはならないと思いますが、行けないという方が少しでもいるなら、追加公演を行ったほうがいいと判断しました。
――ファンからはどんなリアクションが届いていますか。
SNSなどで、とても喜んでくださっているのが分かるコメントをいただいています。本当に嬉しいですね。これだけ「会いに行きたい」と言ってくださる方がいるなら、これからも俳優のイベントは続けていきたいです。
ネックは日程調整。拘束期間の長い中国ドラマ
――ファンミーティングの開催準備の段階で、障壁となったものはありましたか。