米会計事務所PwCの年次報告書「グローバル・エンターテインメント&メディア・アウトルック(Global Entertainment & Media Outlook)」によると、映画の世界興行収入・総映画収益は、2026年にパンデミック前の水準を超えると予想されているが、映画館の入場者数の伸びは、今後5年間でそれほど見込まれていないという。
PwCは、ストリーミングサービスの加入者数は、世界的に2023年から2028年の間に5.6%の年平均成長率(CAGR)を記録すると予測。また、広告収益は2026年に1兆ドル(現為替で約160兆円)の節目を突破し、今後5年間で3つのコア収益カテゴリーの中で最も急速に成長すると見られている。
パンデミック以降の劇場収益については、数々の大ヒット作に支えられた2023年は大きな伸びを見せ、前年比で30.4%の増加となった。しかし以前PwCは、劇場興行収入は2026年ではなく、2025年にパンデミック前の水準に戻ると推測していたため、1年遅れで実現する悲観的な見通しだ。その数字は、世界の映画館興行収入が385億5,000万ドルだったパンデミック前の2019年に対し、2025年は376億8,000万ドル(約6兆620億円)となり、ようやく2026年に402億3,000万ドル(約6兆3,416億)に達してパンデミック前を上回ると予測されている。
世界的に映画館の入場者数は、2028年に約64億5,000万人まで復活すると見られているが、それでも79億2,000万人だった2019年と比較すると15億人も少ない予測値となっている。
2024年はアニメーション映画が劇場の救世主に?
コロナ禍からの復活にはまだまだ厳しい状況が続くようだが、2024年はアニメーション映画が救世主になるかもしれない。Box Office Mojoによると、ピクサーの新作映画『インサイド・ヘッド2』(日本公開は8月1日)の世界興行収入が14億4,300万ドル(約2,260億円)を超え、ピクサーで歴代トップに。また、アニメーション映画の歴代興行収入ランキングでも首位に輝く見通しとなっている。さらにVarietyによると、『怪盗グルーのミニオン超変身』(日本公開は7月19日)の世界興行収入がシリーズ累計で50億ドル(約8,050億円)を突破し、アニメーション映画シリーズで初の快挙となる。ハリウッドのダブルストライキから一年も経たない中、世界的には子ども向けのアニメーションが劇場の興行収入を支えている。
その他にも今年は、ディズニーのアニメーション映画『モアナと伝説の海2』(日本公開は12月6日)をはじめ、『ロード・オブ・ザ・リング』のアニメ映画『The Lord of the Rings: The War of the Rohirrim(原題)』、ドリームワークスの『カンフー・パンダ』シリーズ第4作などが米国公開を控えており、期待作が目白押しだ。
日本国内では世界的にヒットしている『インサイド・ヘッド2』は8月1日に公開を控えており、2024年上半期の興行収入ランキングは『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』、『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』、『劇場版 SPY×FAMILY CODE:White』とアニメ作品がトップ3に並んだ。
2024年のアニメーション映画旋風により、世界レベルで映画館が大きな巻き返しを図れるか注目したい。