低調続くディズニー、続編路線に舵 黄金期は再び訪れるのか?

先日、ディズニーCEOのボブ・アイガー氏から、『モアナ2』や『インサイド・ヘッド2』など、アニメーション作品の公開予定ラインナップが発表された。いずれも過去作の続編で、今後は“続編ラッシュ”が待ち構えているディズニー。その戦略の背景を紐解いていく。

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Photo by Drew Angerer/Getty Images Disney

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先日、ディズニーCEOを務めるボブ・アイガー氏からアニメーション作品の公開予定ラインナップが発表された。

元々発表されていた夏公開予定の『インサイド・ヘッド2』に続き、11月には『モアナ2』が急遽ラインナップに追加。元々Disney+向けの作品として制作していたものを劇場公開へと移行したことから、今回の電撃発表になったという。

さらに2025年には『ズートピア2』、2026年には『アナと雪の女王3』『トイストーリー5』と昨年制作が発表された作品も具体的なリリース時期が出揃ってきた。

2020年にピクサーの社長ジム・モリス氏によるインタビューでの発言にもあったように『インクレディブル・ファミリー』以降、オリジナル作品の制作に注力していたディズニー。


実際2019年に公開された『アナと雪の女王2』以降、劇場用の続編作品は制作されず有言実行となったわけだが、興行的な面では厳しい結果に見舞われた。

そして、それにさらなる追い討ちとなったのが、他フランチャイズの不振。コロナ禍の映画業界を支えたマーベル作品も、昨年はスーパーヒーロー疲れや俳優のスキャンダル等が原因で興収はみるみる低迷。特に『マーベルズ』は「box-office bomb(興行的失敗作)」としてメディアにも多く取り上げられた。


さらに『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』も厳しい興行成績に終わり、『リトル・マーメイド』も過去の実写リメイク作品に比べるとやや物足りない数字となった。

その結果、昨年は年間のスタジオ別興収の王座からも陥落。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』『オッペンハイマー』などを手がけたユニバーサル・ピクチャーズにその座を奪われてしまった。


だからこそ、ここからなんとかして状況を立て直したいというのがディズニーの願いだろう。しかし、世間ではその“続編ラッシュ”に期待の声も多い一方で、過去のディズニーの歴史を彷彿とさせるとの声もある。

紆余曲折の歴史を歩んできたディズニー

昨年で100周年を迎え、数々の名作を生み出してきたディズニー。しかし、その歴史は常に輝いていたというわけではない。創業者のウォルト・ディズニー氏の死去以降の1970~80年代、加えてピクサー社によるフルCGアニメーションが台頭した2000年代、それぞれの時期にディズニーは作品の売れ行きに頭を悩ませていた。ファンの間ではそれぞれ“第一次暗黒期”、“第二次暗黒期”と呼ばれることもある。しかし、第一次暗黒期はアニメーションの『リトル・マーメイド』、第二次暗黒期は高額な制作費をかけたフルCG作品『塔の上のラプンツェル』によって再び輝きを取り戻してきた。特に『リトル・マーメイド』以降は『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』など記録的ヒットが続々と誕生し、まさに黄金期を迎えたこの時期は「ディズニー・ルネサンス」と呼称されることも多い。

ただし、その後ピクサーによる3Dアニメが爆発的ヒットを記録するようになり、2Dが主流であったディズニーは苦戦を強いられる。ここでひとつ補足しておくと、2006年までピクサーはディズニーの子会社ではなく、あくまでもビジネスパートナーとしてディズニーと共同制作を行っていた。そこで、自社作品が振るわなかったディズニーは黄金時代を支えた作品の続編を次々と制作。当時は劇場公開ではなく、OVA(家庭用ビデオ)として制作され、予算が低かったことから、映像のクオリティやシナリオも厳しい評価を受ける作品が多かった。ただ、誤解されがちなのは暗黒期から続編制作を開始したわけではなく、例えば『アラジン』の続編『アラジン ジャファーの逆襲』は劇場公開をする時点でOVAの制作が決まっていた。しかし、低予算な続編で確実な収益をあげる戦略は、その後約10年に以上に渡り続くこととなる。

しかし、その流れを止めるきっかけを生み出したのが現CEOのボブ・アイガー氏。2006年にピクサーを買収したことで、新たにディズニーのアニメーション責任者を務めることとなったジョン・ラセター氏が続編企画の中止を求めたのだ。

続編商法に強い懸念を抱いていたラセター氏によってディズニーは大きく舵を切り、オリジナル路線を強化したことで『アナと雪の女王』『ズートピア』『モアナと伝説の海』など数々の名作が生まれてきた。その後の大ヒット連発の歴史はご存じの通りである。

オリジナル作品の限界とこれから


《タロイモ》

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中学生時代『スター・ウォーズ』に惹かれ、映画ファンに。Twitterでは興行収入に関するツイートを毎日更新中。