動画配信サービスから撤退したエイベックスはアニメ・映像事業が第2の収益柱へ【決算から映像業界を読み解く】#56

エイベックスの事業構造が大幅に変化する中、アニメ・映像事業の業績・事業活動も変化している。エイベックスのアニメは『おそ松さん』の大ヒットに限定されていたが、アニメファンからの評価が高い『天国大魔境』を送り出し、劇場作品では『ルックバック』という意欲作に取り組んでいる。

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【決算から映像業界を読み解く】#56
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エイベックスの事業構造が大きく変化している。

2023年1月にNTTドコモとの合弁会社・エイベックス通信放送の全株をドコモに譲渡。赤字が続いていた動画配信サービスから撤退した。2023年8月には大規模な組織再編も行っており、アニメ・映像事業の中核をなすエイベックス・ピクチャーズは中間持株会社となって各事業を統括する組織へと移行した。

アニメ・映像事業の業績、事業活動も変化している。エイベックスのアニメは『おそ松さん』の大ヒットに限定されていたが、アニメファンからの評価が高い『天国大魔境』を送り出し、劇場作品では『ルックバック』という意欲作に取り組んでいる。

音楽事業の売上は完全回復せず

まずは足元の業績から見ていこう。

2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日)の売上高は、前期比9.7%増の1,333億円、営業利益は同62.6%減の12億円だった。1割の増収、6割超の大幅営業減益となっている。減益の最大の要因は主力の音楽事業の売上高が伸び切らず、原価と販管費によって利益が抑え込まれていることだ。

決算短信より筆者作成

2024年3月期の音楽事業の売上高は、前期比20.2%増の1,131億円、営業利益は同19.4%減の18億円だった。営業利益率は1.7%で前期から0.8ポイント低下している。ライブ活動の再開などで2割の増収となっているものの、コロナ前と比較すると完全回復はしきっていない。2019年3月期の売上高は1,300億円だった。未だ1割以上の差が開いているのだ。

決算短信より筆者作成

しかも、現在はライブなどに必要な人件費が高騰。光熱費の負担も重くなっている。インフレによって利益が出づらい状況になっているのだ。音楽産業はドル箱だったCDやDVDの販売数も減少しており、収益性の低い配信サービスが主戦場になりつつある。

エイベックスは広さ1,200㎡のダンス・ボーカル用新スタジオの稼働を開始するなど、スターを輩出するための取り組みを進めている。2017年から5年をかけて育成した「X-Galaxyプロジェクト」から誕生した日本人ヒップホップグループXGは、2024年に初となるワールドツアー「XG 1st WORLD TOUR “The first HOWL”」を開催。5月18日から日本公演を行った。このグループはエイベックスが韓国のエンタメを研究し尽くした、韓国を活動拠点とする異色のアーティストだ。
Spotifyの広告に起用されるなど、世界的にも注目される存在となっており、エイベックスが世界的なスターを育て上げようという高い熱量を見て取れる。

音楽と映像に経営資源を集中する体制を構築

エイベックスはドコモと合弁会社・エイベックス通信放送を設立し、2009年5月には携帯電話専門の動画配信サービス「BeeTV」を開局。2012年に会員は100万人を突破した。しかし、2013年以降はその数を伸ばしきることができず、2023年9月末にサービスを終了している。その後、エイベックス通信放送はドコモの100%子会社となったが、ドコモは動画配信サービス「Lemino(レミノ)」を展開。このサービスは「dTV」を2023年4月にリニューアルしたものだ。ドコモは動画配信サービスの拡大に対して、積極的な姿勢を見せている。
エイベックスは2013年にもソフトバンクと共同で「UULA(ウーラ)」という音楽・映像配信サービスも始めていたが、2017年3月にサービスを終了した。


《不破聡》

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