【調査】ヨーロッパ、ストリーマーの支出が放送局を上回る見込み

ストリーマー各社のヨーロッパでの支出が100億ユーロを突破し、放送局を上回る見込み。公共・民間放送局は視聴者エンゲージメントの低下に直面している。

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【調査】ヨーロッパ、ストリーマーの支出が放送局を上回る見込み
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Ampere Analysisの新たな調査によると、ヨーロッパのストリーマーの支出は放送局を上回り、100億ユーロ(約1兆6,868億円)を突破する見込み。Deadlineが報じた内容によると、昨年はSVODプラットフォーム、公共放送局、民放放送局がそれぞれ80億ユーロ(約1兆3,494億円)でほぼ拮抗していたとのことだ。

また、2,000人の消費者に年2回インタビューを行っているAmpereの「メディア消費者行動追跡調査」によると、民放各社は2016年以降、ヨーロッパの主要5市場(イギリス、ドイツ、スペイン、フランス、イタリア)で消費者エンゲージメントが平均16%低下したことが明らかになった。その結果、リニアTV広告市場は過去10年間で10億ユーロ(約1,686億円)近く減少している。

公共放送および民放各社の投資額はほぼ横ばいであるのに対し、ストリーミングの投資額は20%増加するだろうと述べられている。Netflixは、ギネス王朝を題材にしたスティーブン・ナイト脚本のイギリスのドラマシリーズや「グレートウォーター:ヴロツワフの大洪水」の脚本家によるポーランドの番組、イザベル・アジャーニ主演のフランスのTVスリラーなど多数のヨーロッパオリジナル作品を発表。Amazonプライム・ビデオのドイツオリジナル作品「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」は、プライム・ビデオの中で最も視聴された海外(米国外)オリジナルシリーズとなっている。

このように放送局は、資金力のあるストリーミングとの強力な競争、自局のコンテンツ予算へのプレッシャーの増大、視聴者のエンゲージメントレベルの低下という大きな課題に直面しているが、一方で今後数年間は「大手ストリーミングサービスによる支出が鈍化する中、放送局にとって戦略的なチャンスとなる」という。ストリーミング各社は米国外での支出を増やしているが、総合的には支出よりも収益性を重視しており、2021年から2024年までの年平均成長率が35%であるのに対し、ヨーロッパコンテンツへの投資額は2025年には前年比8%増になると予測されているためだ。

加えて、Ampare Analysisのシニアアナリストであるニール・アンダーソン氏は「経済不況下の短期的なコスト削減のメリットはあるものの、コンテンツとストリーミングの両方への長期的な投資を優先することは、放送局各社が熾烈なヨーロッパのテレビ市場で優位性を維持するために極めて重要である」と述べている。

《伊藤万弥乃》

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伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

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