K2 Pictures、カンヌ国際映画祭にて“日本映画の新しい生態系”をプレゼンテーション

映画、映像を中心とした事業を展開するK2 Picturesは“日本映画の新しい生態系をつくる”ことを目標に掲げ本格始動。カンヌ国際映画祭開催中の5月18日(土)、フランス・カンヌにて記者会見を実施した。

映像コンテンツ 制作
K2 Pictures 記者会見より
©Kazuko Wakayama K2 Pictures 記者会見より
  • K2 Pictures 記者会見より
  • K2 Pictures 記者会見より
  • K2 Pictures 記者会見より
  • K2 Pictures 記者会見より
  • 枝優花監督
  • 広瀬奈々子監督

映画、映像を中心とした事業を展開するK2 Picturesは“日本映画の新しい生態系をつくる”ことを目標に掲げ本格始動。カンヌ国際映画祭開催中の5月18日(土)、フランス・カンヌにて記者会見を実施した。

先日、日本発の映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ(読み:ケーツーピー フィルム ファンド ファースト)」を組成に向け、岩井俊二、是枝裕和、白石和彌、西川美和、三池崇史や、アニメーション制作会社・MAPPAといった世界で活躍するクリエイターともに映画製作を進めていくことを発表したK2 Pictures。

会見には申し込みが殺到し、世界中からフランス、アメリカ、イギリス、韓国、ニュージーランド、台湾、イタリア、エストニア、スイス、ドイツ、ポーランド、ハンガリー、フィンランド、中国、ベトナム、マレーシア、カナダ、アラブ首長国連邦、ノルウェーなど日本をはじめ20を超える国と地域から映画関係者、メディアが参加した。

会見では代表取締役CEOの紀伊宗之氏が、ファンドが成立し、動き始めたことを発表すると同時に、「新たな国内外投資家の日本映画産業への参入」「クリエイターへの利益還元」を推し進める本ファンドのビジョンをプレゼンテーション。才能あふれるクリエイターとともに、世界を目指していくことを宣言した。


さらにファンドの投資期間を8年に設定し、その収益を再投資することで、キャリアのある監督だけでなく、次世代の新たな才能の発掘にも取り組んでいくことを発表。具体的に、今回映画監督デビューとなるゆりやんレトリィバァ氏のほか、初長編監督作『少女邂逅』(監督・脚本・編集)で若手映画監督・ミュージシャンの登龍門となっている映画祭「MOOSICLAB2017」で観客賞を受賞した枝優花氏、デビュー作『夜明け』(監督・脚本)が第23回釜山国際映画祭出品を果たし、現在進行中の企画も、2023年釜山国際映画祭のAsian Project Market(APM)でCJ賞とARRI賞を受賞している広瀬奈々子氏ら新進気鋭の若手映画監督との作品製作が現在準備中となる。

そして、共に作品製作をしていくクリエイターの代表として三池崇史氏、西川美和氏が登壇。映画監督デビューを果たすことが発表されたゆりやんレトリィバァ氏も新人監督の代表として登壇し、「子どもころからの夢を叶えてくださったK2 Picturesさんには感謝してもしきれません。絶対に恩返しできるように頑張ります!!」と意気込みを語った。三池氏は「現場にいる我々が一番大事なことは映画を作って人を幸せにしながら、自分たちも幸せである必要があるのではないかという紀伊さんの考えに賛同し、今いろいろな企画を動かしています」とあいさつ。

西川氏も「日本の映画の仕組みを大きく変えるようなことを考えていて非常に頼もしいですし、ぜひその船に乗ってみたいなと思いました。キャリアのある監督だけでなく、新しい企画や若い監督にもチャレンジを与えて、必要十分な予算とよい環境で映画作りを目指されているところにも共感しますし、自分も挑戦したいなと思います」とK2 Picturesへの賛同を示した。

©Kazuko Wakayama

また、会場のメディア・映画関係者の中には「Japan Night」への参加ためカンヌに来ていた俳優・監督、斎藤工氏の姿も。「今年のカンヌ映画祭のメインビジュアルが、黒澤明監督の『八月の狂詩曲』(のワンシーンを使用している)ということで『オッペンハイマー』がアカデミー賞で作品賞に輝いた年に日本映画の名作がこのようにオマージュされていることについて、我々日本人以上に、フランスの方達や海外の方が、そういった映画のリテラシーなるものが高いと感じました。日本映画の弱点はどういうところにあると思いますか?」と鋭い質問が飛び出した。

保守的で閉鎖的、意思決定が遅いことだと思います。これは日本映画界だけでなく、日本の産業全部でそうなっているんじゃないかなと思います。戦略的であるためにはクイックな意思決定が必要ですし、1年かけていたら考えていたことも古くなってしまう。それよりは、少ない人数で意思決定し思い切ってチャレンジしてみることが大切だと思っています。」(紀伊氏)、「色々弱点はあると思いますが、教育でしょうか。これまでとは違う視点で、教えるというよりは一緒に学んでいく必要があるんだろうなと思っています。共に考えていくという岐路に僕らは今立っていると思います。日本が何を踏まえ、海外に何を伝えていくのかも大切だと思います。海外の需要に答えていくというよりは、日本人と組むからこそこういう映画が生まれたという、夢ではなく実績として作品を作り上げていくことで実証していく。そういうことを日本人は不得意としてきたと思います。僕らにとっての発言は、生まれていく作品。これは逃れられないと思っているので、K2 Picturesのプロジェクトを非常に楽しみにしています。」(三池氏)、「海外の映画祭に行くと、映画という文化が非常に価値の高いものとして受け入れられていることを痛感します。日本では宣伝をがんばったり、映画祭に出たりしてもなかなか浸透しないというジレンマを感じていました。それこそ1、2年で変わるものではないですし、カンヌ国際映画祭の監督週間では久野遥子監督・山下敦弘監督の『化け猫あんずちゃん』を小学生を招いて観る機会が設けられていると今日初めて知りました。小さい頃から当たり前にそういう環境があると定着していくと思いますし、どうしたら、もっと映画を豊かに体験して育んでいけるのかをみんなで未来を考えて行動して行けたらいいなと思います」(西川氏)と、それぞれ切実な思いを吐露した。

ゆりやんレトリィバァ コメント
今年の12月に渡米することに決めました!
ゆりやんレトリィバァから世界でYURIYAN RETRIVERになれるように頑張ります!
芸人としてだけでなく、今回、K2 Picturesと共に制作する作品と共に映画監督としても渡米して世界中のみなさまに
この作品をみていただけるようになりたいです!K2 Picturesが生んだ、ユリント・イーストウッドになります!お楽しみにしていてください!

枝優花監督 コメント
「平和な国の映画はつまらない」という言葉をたまに耳にします。現在、私は格差や戦争などはっきりとした困難に直面せず、日本で暮らせています。これを世界では平和と呼ぶのかもしれません。しかし日本の10~30代の死亡原因の1位は自殺です。自ら生きる道を辞めたくなる、とはどういうことなのか。本当の豊かさとは何に起因しているのか。実際私自身、日本で暮らしていて言語化し難い自己を蝕むような心の貧困を感じております。そんなとき、スクリーンで出会うべき映画があるはずです。今回、開発している企画は同世代の小出プロデューサーと共に、今の日本で生きる自分たちだからこそ撮れる作品になると信じております。

広瀬奈々子監督 コメント
長編実写映画作品の2作品目として現在進行中のオリジナル作品は、長いあいだ資金調達に難航し、出口が見つからない状態が続いていました。そんな折にK2 Picturesさんから出資していただけることになり、突然に光が差し込んだ思いです。昨年は一緒に釜山国際映画祭に参加して、企画マーケットのAPMでCJ賞とARRI賞の2つの賞を受賞し、とてもいい弾みになっています。来年の撮影に向けて、今まさに船出の準備を整えているところです。
K2 Picturesさんの新しい仕組みづくりと、日本の映画業界の悪循環を変える試みに心から賛同するとともに、ひとりの作り手として、何よりもいい作品をつくることで、彼らの素晴らしい挑戦に貢献できたらと思っております。

《Branc編集部》

関連タグ

編集部おすすめの記事