『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】

『オッペンハイマー』が最多7部門を受賞した、第96回アカデミー賞。日本からは『君たちはどう生きるか』『ゴジラ-1.0』が受賞し注目を集めた。

グローバル アワード
『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】
Photo by Mike Coppola/Getty Images 『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】
  • 『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】
  • 『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】
  • 『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】
  • 『オッペンハイマー』が最多7部門受賞、アカデミー賞を振り返る【アカデミー賞2024】

3月11日(日本時間)に第96回アカデミー賞が行われ、クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』が最多7部門でオスカー像を手にした。

“バーベンハイマー”という言葉が流行り、2本立てで観ようとする観客が急増して社会現象となった『オッペンハイマー』『バービー』に加え、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した『哀れなるものたち』、アウシュビッツ強制収容所の隣で暮らす一家を描く『関心領域』、カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『落下の解剖学』、10部門にノミネートされたマーティン・スコセッシ監督の『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』などがノミネートされ、今年も目が離せなかった第96回アカデミー賞授賞式。司会は、昨年に引き続きジミー・キンメルが務めた。

『オッペンハイマー』が最多7部門で圧勝

Photo by Kevin Winter/Getty Images

アカデミー賞授賞式前から第81回ゴールデングローブ賞で5部門を受賞するなど、大本命と言われてきた『オッペンハイマー』が見事作品賞を受賞。8度目のオスカーノミネートとなるクリストファー・ノーランが監督賞、キリアン・マーフィが主演男優賞、ロバート・ダウニー・Jr.が助演男優賞を受賞、そして撮影賞、作曲賞、編集賞も『オッペンハイマー』が受賞した。

なかでもキリアン・マーフィは「私たちは原子爆弾を生み出した男の映画を作りました。良くも悪くも、私たちはみなオッペンハイマーの世界に生きています。この賞を全てのピースメーカーに捧げたいと思います」と印象的な言葉を残した。

Oscars 2024: 'Oppenheimer' wins Best Picture at the 96th Academy Awards

次いで4部門で受賞したのは『哀れなるものたち』。主演女優賞を受賞したエマ・ストーンは、『ラ・ラ・ランド』以来2度目の栄冠を手にした。そのほか、作品を彩るメイクアップ&ヘアスタイリング賞・美術賞・衣装デザイン賞を受賞した。

また、助演女優賞は『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』のダヴァイン・ジョイ・ランドルフが受賞。作品賞、主演女優賞、監督賞にノミネートされなかったことが以前から話題となっていた『バービー』からは、歌曲賞にノミネートされていたライアン・ゴズリングの「I'm Just Ken」と、ビリー・アイリッシュとフィニアス・オコネルの「What Was I Made For?」のパフォーマンスが行われ、「What Was I Made For?」が歌曲賞に輝いた。

脚本賞は『落下の解剖学』、脚色賞は『アメリカン・フィクション』、音響賞は『関心領域』、短編アニメ映画賞は反戦のメッセージが込められた『War Is Over!(原題)』、短編ドキュメンタリー賞は『ラスト・リペア・ショップ』、長編ドキュメンタリー賞は『実録 マリウポリの20日間』、短編実写映画賞は『ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語』が受賞した。

日本からは『君たちはどう生きるか』『ゴジラ-1.0』が受賞

日本からは国際長編映画賞に『PERFECT DAYS』、長編アニメ映画賞に『君たちはどう生きるか』、視覚効果賞に『ゴジラ-1.0』がノミネートされていた。


長編アニメ映画賞では『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』との接戦が予想されていたが、『君たちはどう生きるか』が受賞する結果となり、『千と千尋の神隠し』以来21年ぶりの快挙となった。

また、ハリウッドの大作が並んだ視覚効果賞では、見事『ゴジラ-1.0』が受賞。受賞を告げられるとチーム全員が満面の笑みを見せ、ゴジラを意識した衣装を纏った山崎貴監督とVFXを手掛けた映像制作プロダクション“白組”の渋谷紀世子、高橋正紀、野島達司が壇上に上がった。そして、山崎監督は「ハリウッド以外で作品制作をしている皆さん、ハリウッドは皆さんの作品を見てくれています。私たちの受賞がその証拠です」と英語で喜びの言葉を述べた。(※下記動画はプレスルームでの様子)

Best Visual Effects | 'Godzilla Minus One' | Oscars 2024 Press Room Speech

ヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の『PERFECT DAYS』は今回惜しくも受賞ならず、国際長編映画賞のオスカー像は『関心領域』チームの手に渡った。

国際問題へ向けた受賞者のメッセージ

#Artists4Ceasefire のバッジを付けて参加したマーク・ラファロ。
このような授賞式の場では、影響力のあるセレブたちが、世界での戦争状況など国際的な問題に対してどのような発言をするのかが注目を集めている。Varietyによると授賞式当日は「ハリウッドの中心部では親パレスチナ派のデモが行われていた」とのこと。出席者たちの中には、ガザでの停戦を求める表明をするため、衣装に“Artists4Ceasefire”の赤いバッジをつけている人もいた。


国際長編映画賞に輝いた『関心領域』のジョナサン・グレイザー監督は「過去の過ちより、今まさに起きている問題を訴えようと決意しました」「現在ホロコーストを理由にして、何の罪もない大勢の人々が苦しめられています」とコメント。ガザで続く悲劇に立ち向かうべきだと訴えた。

ジョナサン・グレイザー監督

また、長編ドキュメンタリー賞を受賞した『実録 マリウポリの20日間』のムスティスラフ・チェルノフ監督は、「この賞と引き換えに事実を変えられるなら、ロシアのウクライナ侵攻をなかったことにしたい」「そしてロシアに何万人ものウクライナ人を、私の仲間を殺害したことを認めてほしい」と話し、「私に歴史は変えられないし、過去は変えられないが、世界屈指の才能を持つ皆さんが力を合わせれば事実を明らかにすることは可能です」と力強くスピーチした。(※下記動画はプレスルームでの様子)

Best Documentary Feature Film | Oscars 2024 Press Room Speech

さらに司会のジミー・キンメルは、「授賞式でジミー・キンメルよりひどい司会者がいただろうか?」とトランプ元大統領によってSNSに投稿された文章を自ら読み上げ、4度起訴されたトランプに対し「もう刑期は終わり?」と皮肉った。

The Hollywood Repoterによると、今回の授賞式はパンデミック後の過去4年間で最高の視聴率を記録したとのこと。未だ完全復活ではないものの、映画業界への関心は少しずつ戻ってきているようだ。

主要部門ノミネート&受賞結果一覧

🌟作品賞

  • 『アメリカン・フィクション』

  • 『落下の解剖学』

  • 『バービー』

  • 『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

  • 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

  • 『マエストロ その音楽と愛と』

  • 『オッペンハイマー』 ★受賞

  • 『パスト ライブス 再会』

  • 『哀れなるものたち』

  • 『関心領域』

🌟監督賞

  • ジュスティーヌ・トリエ(『落下の解剖学』)

  • マーティン・スコセッシ(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)

  • クリストファー・ノーラン(『オッペンハイマー』) ★受賞

  • ヨルゴス・ランティモス(『哀れなるものたち』)

  • ジョナサン・グレイザー(『関心領域』)

🌟主演男優賞

  • ブラッドリー・クーパー(『マエストロ その音楽と愛と』)

  • コールマン・ドミンゴ(『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』)

  • ポール・ジアマッティ(『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』)

  • キリアン・マーフィ(『オッペンハイマー』) ★受賞

  • ジェフリー・ライト(『アメリカン・フィクション』)

🌟主演女優賞

  • アネット・ベニング(『ナイアド ~その決意は海を越える~』)

  • リリー・グラッドストーン(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)

  • サンドラ・ヒュラー(『落下の解剖学』)

  • キャリー・マリガン(『マエストロ その音楽と愛と』)

  • エマ・ストーン(『哀れなるものたち』) ★受賞

🌟助演男優賞

  • スターリング・K・ブラウン(『アメリカン・フィクション』)

  • ロバート・デ・ニーロ(『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』)

  • ロバート・ダウニー・Jr.(『オッペンハイマー』) ★受賞

  • ライアン・ゴズリング(『バービー』)

  • マーク・ラファロ(『哀れなるものたち』)

🌟助演女優賞

  • エミリー・ブラント(『オッペンハイマー』)

  • ダニエル・ブルックス(『カラーパープル』)

  • アメリカ・フェレーラ(『バービー』)

  • ジョディ・フォスター(『ナイアド ~その決意は海を越える~』)

  • ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ(『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』) ★受賞

🌟国際長編映画

  • 『Io Capitano(原題)』(イタリア)

  • 『PERFECT DAYS』(日本)

  • 『雪山の絆』(スペイン)

  • 『ありふれた教室』(ドイツ)

  • 『関心領域』(イギリス) ★受賞

🌟長編アニメーション賞

  • 『君たちはどう生きるか』 ★受賞

  • 『マイ・エレメント』

  • 『ニモーナ』

  • 『ロボット・ドリームズ』

  • 『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』

《伊藤万弥乃》

関連タグ

伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

編集部おすすめの記事