Photo by Alberto E. Rodriguez/Getty Images for Disney
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118日間に及ぶハリウッド俳優組合のストライキが終結し、再び動き出したハリウッド映画業界。
しかし、約4ヶ月間停滞してしまっていた反動は大きく、多くの作品が公開延期に追い込まれてしまった。特にディズニーは実写版『白雪姫』やピクサー最新作『星つなぎのエリオ』、MCUシリーズ3作品など数多くの作品が公開延期となった。
そんな中、今最も期待値が高まっているのが来年6月に米公開が予定されているピクサー作品『インサイド・ヘッド』の続編『Inside Out 2(原題)』だ。先日予告編が公開された本作は、公開後24時間での再生回数が1億5,700万回と非常に高い注目度を示した。なんとこの回数は『アナと雪の女王2』の1億1,640万回を超えるディズニーアニメーション歴代最高の記録である。TikTokなどの新たなSNSプラットフォームの広がりも再生数増加の一因とは言え、他作品と比べてもその盛り上がりは凄まじい。
『インサイド・ヘッド』は人間の感情を擬人化させた作品で、続編では今までの既存キャラクター(ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリ)に加え、新たなキャラクター「Anxiety(不安、心配)」が登場。多くのファンを沸かせた本作はディズニーに取って大きなターニングポイントになり得るだろう。
オリジナル作品に注力も、訪れた限界
劇場公開となったディズニーのアニメーション作品としては、実は『アナと雪の女王』以来3年半ぶりの続編作品となる今作。2019年まではほぼ毎年続編シリーズを公開していたディズニーだが、いちからオリジナル作品を作る方向へとシフト。ピクサーの社長ジム・モリス氏も2020年以降はオリジナル作品の制作に注力することをインタビューで明かしていた。(ちなみに、そのインタビューの中では『インサイド・ヘッド』の続編予定に関しては未定であることも語られていた。)確かに、2020年以降『ラーヤと龍の王国』『ミラベルと魔法だらけの家』『ソウルフル・ワールド』など数々の名作とも言えるオリジナル作品が生み出されてきたのは事実だが、興行面では既存IPの続編作品に比べ芳しい結果は残せなかった。これにはDisney₊の登場やそれに伴う劇場公開キャンセルなども大きな理由の1つと考えられるが、少なくとも現在では劇場公開が優先されるスタイルに戻っている。
しかし、他社が『ミニオンズ フィーバー』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が特大ヒットを記録する傍ら、コロナ禍前のヒット水準とはまだ大きく乖離のあるディズニー作品。特に、昨年公開された『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』は日本円にして250億円以上の赤字を記録してしまった。昨年11月の公開当時、すでにDisney₊などの動画配信事業で2,000億円以上の赤字を出し、パークなどの売上でなんとか黒字化を保っていたディズニーにとってはまさに大打撃だったと言えるだろう。
CEOに復帰したボブ・アイガーによる再びの路線変更
その業績不振を受け、当時CEOだったボブ・チャペック氏はわずか2年で退任を余儀なくされ、前任のボブ・アイガー氏がその座に電撃復帰を果たした。
その後、今年2月に行われたウォルト・ディズニー・カンパニーの収支報告会にてボブ・アイガー氏は『ズートピア』『アナと雪の女王』『トイ・ストーリー』の続編制作を発表。2020年以降の方針とは打って変わり、フランチャイズに注力した作品制作へとシフトしたのだ。
さらに、今月16日に放送されたアメリカの情報番組「GOOD MORNING AMERICA」にて再びボブ・アイガー氏から衝撃の発言が飛び込んできた。なんと「『アナと雪の女王』4作目が制作されるかもしれない」とその可能性を示唆したのだ。まだ確定ではないものの、CEOの発言する意味は非常に大きい。まだ3作目の情報すら明らかにはなっていないが、フランチャイズに賭ける想いはただならぬものなのかもしれない。
不透明な他フランチャイズ、果たしてアニメーション作品の復活は…?
先日公開された『ザ・マーベルズ』がMCUシリーズ最低のスタートを記録し、『インディ・ジョーンズと運命のダイアル』も1億ドルの損益が予想されるなど人気フランチャイズの動向に不安が残る。また、『スター・ウォーズ』も2026年まで新作がなく、長い制作期間を要する『アバター』も度重なる延期が続いている。
コロナ禍前は10億ドル超えのヒットを連発し、もはや敵なしだったディズニー。しかし、2022年は大きく数字を落としてしまっている。ただ、続編ヒットが続けば再びディズニーの栄光を見られるかもしれない。まずはその火付け役になることが期待される『インサイド・ヘッド』続編の成績に注目だ。