Photo by David Becker/Getty Images for Disney
アイアンマンやキャプテンアメリカ、そしてスパイダーマン。誰もが一度は耳にしたことがあるヒーローたち。そんなヒーローが同じ世界観の中に共存し、共にストーリーを紡ぎあげていくという未知なる挑戦は映画界を激震させた。
このマーベル・シネマティック・ユニバース(通称:MCU)と呼ばれる世界観では、数々のヒーローやストーリーが複雑に絡み合い、『アベンジャーズ』で大集合を果たす。このワクワク感が多くの映画ファンの心を掴み、幾度となくヒットの常識を大きく覆してきたのだ。
特にその集大成となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、公開当時の世界歴代興収No.1記録を樹立。その他の作品も高い評価と売上を記録し、絶対に失敗しないシリーズとして10年以上の長い期間、不敗神話を築いてきた。
コロナ禍で停滞の続いていたハリウッドの救世主として大きな存在感を発揮した。特に、シリーズのフェーズ4に突入した2021年は『ブラック・ウィドウ』を皮切りに大ヒットを連発。北米ではその年の全体興収(44.8億ドル)の内3割(13.6億ドル)をマーベル映画が占める結果となった。なかでも『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は歴代トップクラスの売上を記録し、パンデミックからの完全復活を印象づけるヒットとなった。しかし、そのヒットから2年足らずでMCUはシリーズ存続の危機に直面する急展開を迎えている。
新作『マーベルズ』が赤字の危機?
先ほど触れた『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも大活躍を見せた最強の女性ヒーロー、キャプテン・マーベルの単独シリーズ2作目となる『マーベルズ』。
11月10日(金)より公開となる本作だが、北米ではアナリストの予測が芳しくない。Deadlineによると前売りチケットの売り上げは、DC作品で興収が不調に終わった『ブラックアダム』や『フラッシュ』を下回っているとのこと。Boxoffice Proによると全米週末オープニング成績は3,500万ドル~4,900万ドルとの予測が出ており、仮に5,000万ドルを記録しても、『インクレディブル・ハルク』の5,541万ドルを下回りMCUシリーズ最悪の出足となる。
肝心の黒字化ラインだが、制作費を見ると英国からの補助金を差し引いて2億1,980万ドルほど。マーケティング費用も考慮すると黒字化には最低でも5億ドルのラインを超えてくる必要がある。これは今年2月に公開された『アントマン&ワスプ:クアントマニア(4億7,610万ドル)』が超えられなかった数字でもあり、現状の興行予測ではかなり厳しい目標と言えるだろう。
低調スタートが予測される3つの原因
なぜ本作ここまで厳しい状況に置かれてしまったのか整理してみたい。まず1つ目の原因として考えられるのは、前々から言われている「スーパーヒーロー疲れ」問題だろう。「スーパーヒーロー疲れ」とは、スーパーヒーロー映画(主にMCUやDC)ファンが徐々に作品シリーズを追いかけるのに疲れ、離れていってしまうという現象。特にMCU作品は映画だけでなく、ドラマシリーズも配信され、圧倒的に供給過多な状況となっていた。そのためシリーズに飽きてしまったり、ついていけなくなったりしたファンが出始め、スーパーヒーロー映画に対する熱量が全体的に下がっている傾向がある。今作の監督ニア・ダコスタ氏もこの件について「スーパーヒーロー疲れは絶対に存在すると思う」とインタビューで語っている。