番組制作費1,000億円の削減を決めたNHKの行く先は?【決算から映像業界を読み解く】#37

NHKの中間決算が発表。コスト削減を実行し、大幅なスリム化とコンテンツの質の担保に成功した。

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番組制作費1,000億円の削減を決めたNHKの行く先は?【決算から映像業界を読み解く】#37
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NHKの中間決算(2023年4-9月)が発表された。

事業収入は前年同期間比0.4%減の3,466億円、事業支出は同2.1%減の3,114億円だった。差金は351億円。黒字で上半期を折り返しているものの、NHKは2023年10月から受信料を1割引き下げ、収入が130万円以下の学生の受信料を免除するなど、免除枠を拡大した。

その影響でNHKの下期事業収入は大幅に減少し、2023年度は280億円程度の赤字となる見込みだ。

強硬な値下げを続けてきたNHKだが、2027年度に事業支出を2023年度比で1,000億円削減する計画を発表している。

設備投資費を2割削減

2023年度中間決算の概要より

上半期の年間予算に対する進捗率は53.8%で、このうち受信料の進捗は53.9%。やや超過して折り返したのは、下期の値下げ分を織り込んでいるためだ。事業支出の進捗率は46.3%で、下期に備えているのがわかる。上期の支出額が縮小している理由として、NHKは減価償却費の減少を挙げている。

下のグラフを見ると分かる通り、NHKは構造改革案を実行し始めた2021年度から、設備投資費(建設費)を大幅に抑制している。2割近い削減だ。特に放送番組設備の整備にかかる投資を抑えており、この年に35%程度の削減を行った。

2022年度決算概要より

設備投資への支出額は引き続き抑制傾向にあり、減価償却費の削減という形で成果が表れているのだろう。なお、2023年度上半期の原価償却費は345億円で1割ほど縮小している。

番組制作費を削減するも潤沢な番組制作費は変わらず

NHKは2021年-2023年度の経営計画において、受信料と支出を段階的に引き下げ、3年間で550億円規模の支出削減を行うという大改革案を立ち上げた。難易度の高い計画に見えたが、NHKは見事にやり切っている。

スリム化を掲げた支出の削減計画をすべての年で下回るという充実ぶりだった。

経営計画と決算より筆者作成(2023年の実績は予算)

NHKの総事業費に対する番組の制作と送出費は、全体の8割程度を占めている。経費削減でしわ寄せがいくのも制作費だ。2020年度と2022年度で、支出額は2.4%(168億円)減少している。番組制作費も同じ割合の2.4%(78億円)減少した。2020年の制作費は3,246億円、2022年は3,168億円だ。

それによって視聴者離れが進んだかと言えば、そうでもない。


《不破聡》

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