Photo by Phillip Faraone/Getty Images
公開前から「スーパーヒーロー映画史上最高傑作」と評され大きく注目を集めていた『ザ・フラッシュ』。
トム・クルーズやスティーブン・キングを始めとした著名人から絶賛の声が相次ぎ、マイケル・キートン版バットマンやゾッド将軍、スーパーガールなどマルチバースの設定を十分に活かしたキャラクターの登場は多くのファンの興味を駆り立てる…はずだった。
しかし、実際に蓋を開けてみると全米の週末オープニング興行収入(3日間)は5,500万ドルとかなり低調な成績に。先月の時点では、1億1,500万~1億4,000万ドルになると予測されていたことからも、いかに悪い意味で業界の予想を裏切ってしまったかがわかる。その原因として「スーパーヒーロー疲れ」を取り上げるメディアも多いが、マーベル映画は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』と立て続けにヒットを記録しているのも事実。そしてこの2作品はCinemaScoreはどちらも「A」を獲得するなど、観客から非常に高い評価を受けているのが特徴的だ。一方『ザ・フラッシュ』のCinemaScoreは「B」となっており、やや無難な評価にとどまっている。
これはスキャンダル常習犯となってしまった主演のエズラ・ミラーに対する世間的な評価も反映されているとは思われるが、どちらにしても本作は口コミによる広がりがあまり期待できないとされており、海外成績も振るっていない。Varietyによると利益を出すのはかなり困難な状況と報じられている。
しかし、このようなDC映画の惨劇は今に始まったことではない。
DCシリーズ3作品連続の赤字…その原因とは
メディアでは『ザ・フラッシュ』の興行不振が大きく報じられているが、DC作品は昨年から苦しい状況が続いている。『ブラックアダム』は5,000万ドルから1億ドルの赤字、『シャザム!~神々の怒り~』に関しては1億5,000万ドル以上の赤字と報じられている。それに加え『ザ・フラッシュ』も利益を出すのは困難と報じられていることから、実に3作連続の赤字という事態に陥る可能性が高い。なぜここまで苦しい状況になっているのか、それは新たなDCユニバース誕生が2025年に迫っていることが1番大きな要因として挙げられるだろう。昨年10月に新たなDCの共同CEOとしてジェームズ・ガン監督と映画プロデューサーのピーター・サフラン氏が就任。そして、DCユニバースは一度リセットされ『スーパーマン:レガシー(原題)』を皮切りに新たなDCユニバースが構築されると発表されたのだ。
それと同時に制作が予定されていた多くの作品が白紙状態になり、スーパーマン役のヘンリー・カヴィルに至っては復活を宣言した後、すぐに降板することが発表された。まだ現DCユニバース作品が公開を控えている中でのこの発表は、多くの混乱を招く結果となってしまった。その結果、リセットされるユニバースの作品を見る必要性が薄れ、ファンの関心は低下の一途を辿る結果となったのだ。しかし、なぜワーナーはそこまでのリスクを取ってDCというIPにこだわり続けるのだろうか。
なぜDCにこだわり続けるのか
DCの配給を手がけるワーナーは100年の歴史を持ち、配給会社としては年間1位の売上を記録することも珍しくはなく、ディズニーが絶対的な地位を築いた後も次点としてその地位を守ってきた。しかし、コロナ禍に差し掛かりその地位はやや危うさを増してきている。