フジテレビが米中韓とのグローバル戦略を発表、日本ドラマの共同制作を進める

フジテレビは開催中のTIFFCOMにて「グローバル事業戦略発表会」を実施した。米中韓のパートナー企業と連携し、海外IPを活用した共同制作を推進していく。

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フジテレビが米中韓とのグローバル戦略を発表、日本ドラマの共同制作を進める
(C)フジテレビ フジテレビが米中韓とのグローバル戦略を発表、日本ドラマの共同制作を進める
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  • 『時光代理人 -LINK CLICK-』
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左から、レオ・チャン氏(中国 bilibili 副総裁)、大多亮氏(フジテレビ 専務取締役)、リック・ジェイコブス氏(米国 スカイバウンド リニアコンテンツ担当マネージングパートナー)、ファン・ゼホン氏(韓国 カカオエンター IP事業部長)。(C)フジテレビ

東京都立産業貿易センター浜松町館で開催中のTIFFCOMセミナーで、フジテレビは10月26日(木)に「グローバル事業戦略発表会」を実施。制作・メディアタイアップからインフラ開拓まで、全方位でグローバルビジネスを行う方針を発表した。

来日した米中韓の企業担当者も登壇し、それぞれのパートナーシップについてのトークセッションを展開。海外のバイヤーや出展者らを対象に、今後のグローバル戦略をアピールした。

フジテレビ専務取締役の大多亮氏は「10~15年くらい前からインターネットの出現によって放送・広告業界は厳しくなってきており、ユーザーの行動も大きく変容した。今までのようにドメスティックで潤うということはあり得なくなり、各局、デジタルとグローバルに力を入れている。フジテレビではいわゆる放送収入と放送外収入を1対1にしたいという経営ビジョンを持っている。放送収入の一定水準を保ちつつ、放送外収入を増やすために力を入れてきた」と、昨今のテレビ局としての課題と、同社のIPを海外へ展開する重要性について語った。今回の発表会では、その中でも特に注目のプロジェクトを3つ紹介した。

韓国カカオの人気Webtoon「アクアマン」の日本ドラマを共同制作

本発表会で初解禁の情報として、韓国のカカオエンターテインメント(以下、カカオエンター)と、二次著作物を積極的に制作する協業を発表した。フジテレビのオリジナルIPをWebtoon、Web小説にしたり、カカオエンターのWebtoon、Web小説のIPを映像化したりするなど、日本と韓国からグローバルに展開する作品を誕生させるために力を合わせていくという。

両社の第一弾の取り組みとして、人気Webtoon「アクアマン」の実写ドラマ化が発表された。「アクアマン」は大学生3人の学生生活と彼らの恋愛模様を描く青春マンガ(Webtoon)。カカオエンターIP事業部長ファン・ゼホン氏は「『アクアマン』はカカオエンターのグローバル全体の取り組みの一歩になる」と期待を語った。本作は実力のあるMcQueen STUDIOというスタジオが制作している一方、韓国では良い市場を見つけられなかったそうで、だからこそフジテレビで成功することを期待しているという。

また、大多氏は「カカオエンターからWebtoonのノウハウを学びたい」と語り、Webtoon市場が成熟していない日本に足りないものはなにか、とファン氏にアドバイスを求めた。
ファン氏は、「カカオエンターがWebtoon市場で最大規模であるにせよ、実際に成功するコンテンツは10%かそれより低いくらいですべてが成功するわけではない。より良いビジネスをしていく上ではライターが鍵になり、我々は彼らをリスペクトしている。これはテレビや映画でも同じだと思う」とコメントした。

米スカイバウンドとコミック原作「ハート・アタック」の日本ドラマを共同制作

本発表会の最初に紹介されたのは、米製作会社スカイバウンドンターテインメント(以下、スカイバウンド)との取り組みだ。スカイバウンドは「ウォーキング・デッド」や「インヴィンシブル」などの人気コンテンツを生み出してきたマルチプラットフォーム・エンターテインメント企業。今回、同社のリニアコンテンツ担当マネージングパートナーのリック・ジェイコブ氏がゲスト登壇し、両社のパートナーシップについて語った。

パートナーシップの第一弾としてスカイバウンドオリジナルのグラフィックノベルシリーズ「ハート・アタック」の日本ドラマを共同製作する。国内ドラマとしてフジテレビ×ROBOTの制作、日本人キャストでドラマ化を進めており、12月にクランクインを予定していると進捗を共有した。

スカイバウンドの多くの原作IPの中から本作を選んだ理由として、大多氏は「パンデミック後の、世紀末的な世界を描いている本作はフジテレビの発想では出てこないような物語。アメリカ的な発想が詰まっていて、こういう作品こそフジテレビとしてチャレンジしてみたいと思った」とコメント。また、ジェイコブ氏は「『ハート・アタック』が“ラブストーリー”であることが日本でドラマ化する上で合っていると思った。フジテレビをはじめとする日本のコンテンツを多く観た中で、ラブストーリーが主流であることに気づき、これなら(日本のマーケットで)ウケるのではないかと思った。とてもアメリカ的な作品だが、本作は愛や初恋を描いており、だれもが経験する普遍的な要素がある作品だと思っている」と述べた。

また、大多氏から今後フジテレビIPの米ドラマ化もありそうか、と聞かれたジェイコブ氏は「最近特徴的で面白いことがあり、この夏に米国で最も人気のあったテレビ番組は、Netflixなどのストリーミング作品でも、新作でもない『SUITS/スーツ』だった。10年ほど前に生まれたIPがヒットする現象をみると、過去のフォーマットを見直して何か新しい取り組みができる可能性もあるかもしれない」とコメントした。

中国bilibiliと人気アニメ「時光代理人」の日本ドラマを共同制作

先日、フジテレビでbilibiliの新たな深夜アニメ枠「B8station(ビーハチステーション)」を10月より創設することが発表されたが、大多氏は地上波の枠をbilibiliに提供することについて「異例中の異例」と表現し、その目的には中国市場への関心の高さと、両社が連携した大きなビジネス展開を見据えていることを強調した。


bilibiliからは副総裁のレオ・チャン氏が登壇し、今回の提携について「bilibiliは2017年から中国製アニメの自社製作事業をはじめ、もっと日本の多くの視聴者にbilibili産アニメの魅力を広めていきたいと思っていた。bilibiliの次のステップとして両社のリソースを合わせてグローバル市場に向けた作品を作っていきたい」と提携の狙いを語った。

今回、実写ドラマ化が発表された「時光代理人-LINK CLICK-」は現在企画開発中なのだそう。レオ氏は、原作は中国でファン層が厚い作品であり、中国本土で人気が確証された本作について、「ヒット間違いなしだと思う」と自信を述べた。特に、主人公の男性二人の関係性は女性人気も高いのだという。


エンターテインメントを牽引する米中韓の大手企業との協業を発表したフジテレビ。大多氏はグローバルにチャレンジすることは「甘くない」と、その難しさを強調しながらも、こういった取り組みから種まきを続けることが未来の大きなうねりになると信じている、と力強いコメントを残した。

《marinda》

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Branc編集長 marinda

Brancの編集長です。好きな動物はパンダです🐼