人気脚本家が監督業に初挑戦。トロント最高賞を受賞した『American Fiction』監督にインタビュー(動画あり)

今年のトロント国際映画祭で最高賞を受賞した『American Fiction』。本作が監督デビュー作となったコード・ジェファーソンは「グッド・プレイス」や「ウォッチメン」などの人気ドラマの脚本家として活躍してきた。監督デビューの体験や作品のテーマについて話を聞いた。

グローバル マーケット&映画祭
Cord Jefferson
Photo by Robin Marchant/Getty Images Cord Jefferson
  • Cord Jefferson
  • American Fiction

アカデミー賞前哨戦とも言われるトロント国際映画祭で今年の観客賞(最高賞)に輝いた『American Fiction(原題)』。


スペシャル・プレゼンテーション部門で上映されたこの作品は、小説に「黒人らしさが足りない」と指摘された作家がステレオタイプ的な黒人“らしい”生活についてわざとバカげた小説を書いて大成功を収めるというストーリー。『007』シリーズで知られるジェフリー・ライトが主演を務め、「グッド・プレイス」や「ウォッチメン」などの脚本家として活躍してきたコード・ジェファーソンが初めて監督を務めた。

トロント国際映画祭のレッドカーペットでは、ジェファーソン監督に話を聞くことができた。映画業界ではジェニファーソン監督のように脚本家から監督に転身する人もいれば、俳優として活動する傍ら監督として作品づくりに関わる人も多い。脚本家出身の監督に対し、本作での転身について質問すると「この経験はスリリングで、最初は少し怖くも感じたし、圧倒されることもありました。でも、私の脚本家仲間達が監督になることをどう感じたかについて尋ねてくるたび、考えたんです。大半のライターは、実際には脚本を書いている段階で、すでに監督のような役割を果たしていると。キャラクターの服装や部屋のデザイン、セリフの言い方など、脚本を書く過程ですでに監督的な視点で考えていることが多いんです。なので、実際に監督を試してみる価値があると思います」と話してくれた。そして今後については「監督の仕事にハマっちゃったかもしれないけど、執筆から離れるつもりはないですよ。両方楽しむつもりです」とこれからの作品とのかかわり方を明らかにした。

また、今回の作品は人種に対するステレオタイプが根底にある現代のエンターテインメントを皮肉っているが、アフリカ系北米人として“実際の姿”と“期待されている姿”という2つの異なる視点から世界を見ることはあるか問うと「人種、民族、宗教、性別アイデンティティにかかわらず、私たちは自分自身らしい個性や独自の情熱、視点を持ちたいはずなのに、世界は最終的にみんなを同じ箱の中に入れようとするし、個性を尊重するよりも、群れの一部として見ようとする。それは、特に私たち(アフリカ系アメリカ/カナダ人)にとってより鮮明な視点かもしれないけど、みんなが感じていることだと思うので、この映画が多くの人々にそういうものを訴えかけることを願っているよ」と自身の考えを話してくれた。

『American Fiction(原題)』は日本での公開は未定だが、全米では今年12月15日より公開される。

《取材:Tomohiko Nogi, Linda V. Carter  文:伊藤万弥乃》

関連タグ