『鷹の爪団』のディー・エル・イーの業績が暗黒期を抜けて黒字浮上か?【決算から映像業界を読み解く】#25

アニメーション「鷹の爪団」や「耐え子の日常」の制作などを行う株式会社ディー・エル・イーに光明が差してきた。

ビジネス 決算
『鷹の爪団』のディー・エル・イーの業績が暗黒期を抜けて黒字浮上か?【決算から映像業界を読み解く】#25
『鷹の爪団』のディー・エル・イーの業績が暗黒期を抜けて黒字浮上か?【決算から映像業界を読み解く】#25
  • 『鷹の爪団』のディー・エル・イーの業績が暗黒期を抜けて黒字浮上か?【決算から映像業界を読み解く】#25
  • 『鷹の爪団』のディー・エル・イーの業績が暗黒期を抜けて黒字浮上か?【決算から映像業界を読み解く】#25

アニメーション「鷹の爪団」や「耐え子の日常」の制作などを行うディー・エル・イーに光明が差してきた。

同社は5期連続で営業赤字を出しているが、2024年3月期に1億円の営業利益を予想した。売上高は前期比58.4%も増加して32億円を見込んでいる。

この会社は上場からわずか4年後の2018年9月に粉飾決算が発覚。4年間で23億円の架空計上があったなどとして、1億3,500万円の課徴金納付を命じられた。ディー・エル・イーは朝日放送グループホールディングスに第三者割当増資を実施。子会社となった。

このとき、創業者の椎木隆太氏が代表取締役社長を退任している。この一件で会社が勢いを失ったのは確かだ。経営管理と財務体質の改善が済んだ後は、コンテンツを生み出す会社としての経営革新が求められる。

Flash職人が集まって成長した異色の会社

ディー・エル・イーはソニー出身の椎木隆太氏が2001年に設立した有限会社パサニアが前身。映像コンテンツが主軸で、Flashの成長性に目を付けた会社だった。

インターネット黎明期に、アドビが動画やゲームを扱うための規格としてAdobe Flashを開発した。今から見ると原始的な動画だが、Webサイトに動きをつけるのに重宝された。Flashはデジタルアニメよりも安価に動画を制作できたことから、個人でアニメーションを作り込むFlash職人が多数誕生した。やまがらしげと氏の「キミとボク」は泣けるFlashアニメとして有名だ。

ディー・エル・イーにはFROGMANと呼ばれるCGクリエイターが所属しており、「秘密結社鷹の爪」を生み出して会社を躍進させるきっかけを作った。

椎木隆太氏はもともとソニーで知的財産権の管理や契約の仕事をしており、契約書の作成を主に担当していた。会社設立後はエイベックスのアニメ事業海外進出における、契約関連のコンサルティングなどを行っていた。

その事業の伸びしろに限界を感じ、キャラクター収入によるビジネスへと目を転じることになった。そこで出会ったのがFROGMANだ。ディー・エル・イーはFlashアニメの「鷹の爪」をテレビで放送するという型破りな事業展開をするが、これが視聴者に受け入れられて会社を成長させたという経緯がある。

経営管理体制が十分に整わないまま上場まで突き進んだ印象があり、上場するメリットもあまり感じられない会社だ。上場時は市場から17億円程度を吸収しているが、その代償はあまりに大きいものだったと言わざるを得ない。

財務体質の改善を目的に新社長を送り込んだか

ディー・エル・イーは2018年6月期の絶頂期に売上高が55億5,300万円あったが、粉飾決算が明るみになった後の2021年3月期は11億1,700万円まで縮小している。

決算短信より

なお、ディー・エル・イーは2020年に決算月を6月から3月に移行した。2020年3月期は9カ月間の数字だ。

椎木隆太氏が代表を降りた後の2019年9月に、新社長に就任したのが勝山倫也氏だ。勝山氏は1986年に朝日放送に入社。総合ビジネス局長、ラジオ局長、朝日放送ラジオの社長を務めた人物。ディー・エル・イーのようなコンテンツビジネスの経験者ではなかった。この人事は明らかに経営管理体制の強化が目的で、粉飾の後処理を任されたという意味合いが大きいだろう。

2021年6月には小濵直人氏が代表取締役に就任している。小濵氏はソロモン・ブラザーズ・アジア証券、クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券、日本産業パートナーズ、オリンパスキャピタルなど金融畑出身。その後、京都きもの友禅の社長や朝日放送グループホールディングスの執行役員などを務めてきた。

ディー・エル・イーは継続的な赤字であることもさることながら、営業キャッシュフローが2014年6月期から10期連続でマイナスに陥っている。継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるGC注記が付いている経営危機状態だ。

小濵氏は財務体質の改善を行うために送り込まれたのだろう。経営管理体制の確立が一通り完了し、財務体質の改善というフェーズに入ったのだ2024年3月期に黒字化が達成され、営業キャッシュフローがプラスに転じれば、上場企業としての信頼性は取り戻せる。今はまだ、粉飾の痛手から回復しきれていないと見るべきだ。

期待をかけるモンスターストライクの派生版も低評価

ポイントは本当に2024年3月期に黒字化できるかどうかだ。


《不破聡》

関連タグ