米国の映画産業で働く映画監督・テレビ監督らが在籍する全米映画監督組合(DGA)は、Netflix、Disney、Apple、NBCユニバーサル、ワーナー・ブラザース、パラマウント、Amazonなどを代表する映画製作者協会(AMPTP)と新しい3年間の労働協約について暫定合意に達したと発表した。
Screen Dailyによると、組合はこの合意により、エンターテインメント産業の国際的な成長に対応するための“大きな進歩”とDGAの監督とそのチームの重要な役割を再確認しつつ、主要な経済的権利および創造的権利に関する“大きな利益”を確保したと声明で述べた。結果としては、まず国際的なストリーミング配信のための残留報酬(リテンションボーナス)の改善に合意した。しかし、DGAが発表した概要には、ストリーミング配信の残額を視聴率に連動させることについては触れられていない。これは、番組がヒットしようが失敗しようが、ストリーミング・プラットフォームでは残留報酬が同じであり続けることを意味している。
※残留報酬:決められた期日まで在籍する、あるいは特定の目標を達成した時(映像作品だと作品のヒット具合などによる)のインセンティブとして従業員に支給する金銭的報酬。また、DGAの契約におけるもう一つの重要な条件は、最低賃金の引き上げだ。DGAは、契約初年度に5%引き上げることを勝ち取り、その後4%、3.5%と賃金と福利厚生の引き上げを行った。この数字は、WGAが5月1日の交渉決裂時にAMPTPと取った立場のちょうど中間点である。インフレの影響で通常より高いこれらの引き上げは、他の組合に適用されるパターンを形成する可能性もある。そしてDGAの要約によると、ギルドは人工知能に関する文言も得ており「AIは人間ではないため、生成AIは会員が行う職務を代替できない」と明言している。
この暫定合意は、現地時間6月6日(火)の特別理事会で承認を得る予定となっている。しかしこれは、現在ストライキ中のWGAとAMPTPとの行き詰まりを早急に解決することを意味するわけではない。実際、WGAの交渉委員会は日曜日のメモで、DGAの交渉委員会を祝福しながら「AMPTPの“分割統治”戦略は通用せず、WGAだけがAMPTPと作家のための取引を交渉できる」と会員に語っている。
WGAのストライキは2ヶ月目に入り、賃金などについて両者の意見は大きく食い違ったままだ。両者は交渉再開を希望しているが、スケジュールは圧縮されつつある。AMPTPは水曜日に俳優らが所属するSAG-AFTRAとの契約交渉を開始する準備を進めている。
DGAの暫定的な契約ハイライトは以下の通り。
最大手のプラットフォーム向けに制作された作品の国際的な残留報酬を76%増額
新たな育児休暇についての特典
ストリーミング用に制作されたドラマ以外の番組(バラエティやリアリティ)のディレクター(およびアソシエイトディレクター、ステージマネージャー)に対する条件を設定
「AIは人ではない」ことを認識し、実際のディレクターを代替することはできない
Tubi、Freevee、Rokuなどの無料ストリーミングサービスで働くディレクター(およびユニットプロダクションマネージャー、アシスタントディレクター)に対する新しい条件を設定
監督の正式な準備期間の開始前に、現在無料で行っている「ソフトプレパレーション」期間に対する補償
エピソードディレクターには、1時間番組の撮影日を1日追加保証する
撮影現場での実弾の使用禁止、安全監督とトレーニングについて新たな要件を設定
アシスタントディレクターの1日の就業時間を1時間短縮する など