「エミリー、パリへ行く」や「ラスアス」に影響を受け旅行先を決める人が増加? 今話題のフィルムツーリズム

コロナのパンデミックも落ち着き、誰もが今まで通りに海外旅行に行けるようになった今、目的地を決める基準の一つに「映画やドラマで観た場所」を挙げる人が増えている。

映像コンテンツ マーケティング
「エミリー、パリへ行く」や「ラスアス」に影響を受け旅行先を決める人が増加? 今話題のフィルムツーリズム
Image by Freepik 「エミリー、パリへ行く」や「ラスアス」に影響を受け旅行先を決める人が増加? 今話題のフィルムツーリズム

Image by Freepik

コロナのパンデミックも落ち着き、誰もが今まで通りに海外旅行に行けるようになった今、目的地を決める基準の一つに「映画やドラマで観た場所」を挙げる人が増えている。

アメリカン・エキスプレスの「2023年世界旅行動向レポート」(日本、カナダ、メキシコ、オーストラリア、インド、イギリスの旅行者1,000人、アメリカの旅行者2,000人をサンプル)によると、全体の64%が「テレビ番組や映画で見た場所に旅行したいと思ったことがある」と回答したとのことだ。

また、Z世代とミレニアル世代の回答者の合計70%が、テレビ番組、ニュースソース、映画で紹介された場所に行く気になったことがあると回答した。日本の回答に絞っても、旅行したいと思うきっかけになった情報として全体の44%が映画・テレビ番組から影響があったと答えており、世界平均よりも高い数字となっている。このように、映画やテレビ番組・ドラマは旅行計画に大きな影響を与えているようだ。

「スクリーンツーリズム」の成り立ち

これまでにも、大ヒット映画やドラマが撮影された場所でプロモーションキャンペーンなどは行われてきた。これは「スクリーンツーリズム」や、「フィルムツーリズム」と呼ばれるもので、動画配信サービスが台頭する以前から行われていた。世界観光機関とNetflixが実施した調査「Cultural Affinity and Screen Tourism」によると、1984年から1992年にかけてオーストラリアへの観光ビザ申請数が40%も急増した理由に映画『クロコダイル・ダンディー』の影響が挙げられ、これが「スクリーンツーリズム」の学問的研究のきっかけとなったと言われている。

しかし、スクリーンツーリズムが与えるものは良い影響だけではない。観光客や低予算のバックパッカーを魅了してきたタイの魅惑的なビーチは、レオナルド・ディカプリオ主演の『ザ・ビーチ』が公開されると毎日約5,000人もの人が押し寄せ、白砂のビーチとサンゴ礁を修復するためにしばらく閉鎖せざるを得なかったこともあったとEL PAÍSが示している。

スクリーンツーリズムは「ロード・オブ・ザ・リング」3部作で本格化し、2000年から2006年にかけてニュージーランドへの年間訪問者数を40%増加させた。「ハリー・ポッター」シリーズの影響では、2011年から2013年にかけてイギリスのロケ地を訪れる観光客数が230%増加。さらに「ゲーム・オブ・スローンズ」が撮影された、北アイルランド、クロアチア、マルタ、アイスランド、スペインは、2019年にシリーズが終了した後も観光客が大幅に増加しているとのことだ。

映画やテレビの制作を誘致するためには、印象的な設定、地元で稼働できる業界関係者、税制上の優遇措置が必要となる。例えば、スペイン・フィルム・コミッションは、前提条件をすべて整えるために熱心に取り組んでおり、シンガポールでは映画やドラマを通じて旅行を推進するため、シンガポールを舞台とした国際制作作品を支援する「シンガポール・オン・スクリーン・ファンド」が立ち上げられたばかりだ。


実際に観光客を引きつけた作品、またその観光施策とは?

実際に人気海外ドラマ「ホワイト・ロータス」シーズン1の舞台ハワイ、シーズン2の舞台イタリアにおいては、現地の観光業に大きな影響を与えたとされている。その他だとNetflixオリジナルドラマの「エミリー、パリへ行く」や『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が撮影されたフランス・パリも人気が高いようだ。



《伊藤万弥乃》

関連タグ

伊藤万弥乃

伊藤万弥乃

海外映画とドラマに憧れ、英語・韓国語・スペイン語の勉強中。大学時代は映画批評について学ぶ。映画宣伝会社での勤務や映画祭運営を経験し、現在はライターとして活動。シットコムや韓ドラ、ラブコメ好き。

編集部おすすめの記事