メディア事業が不振のスカパー、大改革案を打ち出す【決算から映像業界を読み解く】#16

多チャンネル衛星放送のスカパーJSATホールディングスが正念場を迎えている。

ビジネス 決算
メディア事業が不振のスカパー、大改革案を打ち出す【決算から映像業界を読み解く】#16
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多チャンネル衛星放送のスカパーJSATホールディングスが正念場を迎えている。

2022年3月期の売上高は前期比14.3%減の1,196億円。2023年3月期の売上高は前期比0.3%増の1,200億円を見込んでいる。スカパーは減収または横ばいが長らく続いており、回復する気配がない。

衛星放送はそれまでの地上波をチャンネル数で圧倒。地上波の「視聴者に番組を見させる」という常識を、「視聴者が番組を選ぶ」時代へと変化させた。

しかし、動画配信サービスの興隆によって「視聴者はコンテンツをライフスタイルに合わせて楽しむ」時代となった。独自のコンテンツ制作ノウハウに欠けたスカパーは取り残されている。

Jリーグの放映権を動画配信サービスに奪われる

決算短信より

スカパーには衛星放送のメディア事業と、衛星を活用して航空機内Wi-Fiに向けたサービスを提供する宇宙事業の2つがある。宇宙事業は堅調だ。

2022年3月期の宇宙事業の営業収益は前期比1.0%増の595億円だった。営業利益は26.7%と極めて高い。2023年3月期第3四半期の売上高も前期比2.0%の増加。営業利益は30%近い水準で推移している。

不調なのがメディア事業だ。2022年3月期の営業収益は前期比23.1%減の704億4,700万円。営業利益は同37.6%減の37億4,000万円だった。営業利益率は5.3%だ。スカパーは収益認識を変更した影響で、営業収益が177億円と大幅に減少した。これは会計処理によって生じた概念上のものに違いないが、2023年3月期第3四半期の営業収益は前年同期間比2.1%の減少。営業利益は28.1%減少している。

営業利益は2桁のペースで落ち込んでいる。メディア事業の慢性的な赤字が視野に入る。

不調の要因は加入件数の減少に他ならない。

スカパーは2013年3月期までは加入件数は横ばいが続いていた。しかし、2014年3月期から潮目が変化する。契約者数が減少に転じたのだ。

決算説明資料より

衛星放送が動画配信サービスにその座を脅かされていることを象徴する出来事があった。スカパーのJリーグの放映権が、2017年にスポーツ専門の動画配信サービスDAZNに奪われたことだ。スカパーは2006年からJリーグに本格参入しており、キラーコンテンツの一つだった。

当時、スカパーがJリーグの放映権を地上波から奪い取ったのは衛星放送時代の幕開けを予感させた。それと全く同じことが2017年に起こったのだ。

Netflixが日本に上陸したのが2015年9月。Netflixは2017年に全世界での加入者が1億人を突破していた。

スカパーはNetflixの日本上陸を楽観視していた?


《不破聡》

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