エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13

エイベックスの業績回復が鮮明だ。エイベックスの主力事業は売上高の8割程度を占める音楽事業だが、アニメ・映像事業も収益性を取り戻しつつある。

ビジネス 決算
エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
  • エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
  • エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
  • エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
  • エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13
  • エイベックスの業績が急回復、アニメ・映像事業は独自路線で新境地を切り開く【決算から映像業界を読み解く】#13

エイベックスの業績回復が鮮明だ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、大型ライブなどのイベントが自粛を余儀なくされた。2021年3月期は63億円の営業赤字となったものの、2022年3月期には早くも営業黒字化を達成した。

エイベックスの主力事業は売上高の8割程度を占める音楽事業だが、アニメ・映像事業も収益性を取り戻しつつある。2021年10月にはアニメ制作とゲーム開発の完全内製化を実現し、事業拡大に向けた体制を整えた。

映画においても独自の路線を確立しつつあり、ヒット作の量産にも期待できる。

CDの売上減を音楽配信で補えるか

エイベックスは2022年11月に2023年3月期通期業績予想の上方修正を発表した。営業利益は従来予想の4倍となる40億円、純利益は8倍ともなる33億円に跳ね上がった。

エイベックスは通期売上高の予想を出していない。しかし、第3四半期において売上高は855億円を超えており、前期の実績を勘案すると2023年3月期の売上高は1,000億円を突き抜ける公算が大きい。第3四半期の数字と営業利益の予想をもとに、独自に売上高を計算すると1,100億円程度となる。

決算短信より

コロナ禍の真っただ中だった2021年3月期の売上高は815億円となり、2018年3月期の半分以下の水準まで落ち込んだ。エイベックスは2021年3月期に100億円以上の純損失を出してもおかしくなかったが、2017年竣工の本社ビルを売却するというウルトラCを繰り出して、固定資産売却益287.5億円を計上。128億円の純利益を出した。

エイベックスの自己資本比率は2020年3月末の段階で38.2%だった。もし、2021年3月期に大赤字を出していれば、財務体質が脆弱になって第三者割当増資などの資金調達が必要になったかもしれない。しかし、本社の売却で自己資本比率は52.6%まで回復している。そして2022年3月期は営業黒字化することができた。迅速な経営判断で難局を乗り切っている

エイベックスは、2023年3月期第3四半期(4月-12月)にアリーナでの公演を127回実施している。前年同期間は30公演だった。100近く増加している。全ライブの観客動員数は160万人で、前年同期間の80万人から倍増。チケット単価も500円近く増額しており、ライブの収益は急回復している。

ただし、CDのアルバムは13万、シングルは25万枚減少している。第3四半期のエイベックスのCD売上は160億円だった。前年同期間比で23.4%も減少している。音楽配信は同8.8%増加しているが、100億円に届いていない。CDから配信サービスへの移行は、中期的に業績に対して負の影響を与える可能性がある。

エイベックスは音楽配信市場がライフスタイルの中心になることを見据え、配信市場に沿ったアーティストなど新たなIPを発掘・育成し続けることで、事業を拡大するとしている。

予想外のヒットを飛ばした『おそ松さん』

音楽と同時に、注力領域に掲げているのが、アニメ・映像事業だ。2022年5月に発表した中期経営計画「avex vision 2027」にて成長戦略に「長く愛されるアニメ・映像作品のためのIP開発・IP獲得」を盛り込んだ。


《不破聡》

関連タグ