動画配信サービス大手Netflixの業績が曲がり角に差し掛かっている。
2022年度3Qの売上高が79億2,500万ドルとなり、2Qと比較して0.6%の減少となったのだ。コロナ特需に入る前の2018年から増収を続けていたNetflixが、ついに減収に転じた。
主な原因は有料会員数の減少。特に主戦場となるアメリカとヨーロッパの伸び悩みが鮮明だ。そんな中、Netflixは新たな収益源として広告プランを立ち上げた。動画配信サービスのシェア獲得合戦から離脱し、広告という別の市場に手を伸ばした。
レンタルDVD事業から動画配信サービスへと華麗に転身したNetflixらしい戦略だが、苦難が待ち受けているのは想像に難くない。
競合が次々と動画配信サービスを開始
世界の動画配信サービスのマーケットは旺盛に拡大している。総務省の「情報通信白書」によると、2021年の市場規模は905億ドル(130円換算で11兆7,650億円)。2025年には1,340億ドル(同17兆4,200億円)まで48.0%伸張する見込みだ。
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※総務省「情報通信白書」より
Netflixはこの市場をけん引していただけに、業績の伸び悩みが持つ意味は大きい。市場が予測どおりに拡大しているのであれば、単純にシェアを落としていることになる。
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2019年11月にディズニーが動画配信サービス「Disney₊」をスタート。ディズニー作品だけでなく、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルムなどの人気コンテンツの配信を始めた。
Netflixは人気のオリジナルマーベルドラマ「デアデビル」を2018年10月に打ち切ると発表した。諸説あるものの、突然の終了の背景にはDisney₊がスタートすることがあったと言われている。
「デアデビル」をはじめとするNetflixオリジナルのマーベルドラマは、今年2月にNetflixでの配信を終了し、現在はDisney₊で配信されている。なお、ディズニーはファンイベントにて2024年に「デアデビル:ボーン・アゲイン」を配信すると発表している。
Netflixにとって主力となるコンテンツの離反は、痛手以外の何物でもない。ディズニー以外にもワーナーの「HBO Max」、アップルの「Apple TV+」など、競合サービスが次々と誕生した。
旺盛な勢いで拡大する動画配信サービス市場は、シェアを奪い合う苛烈な戦場となった。
Netflixは2022年度1Qにおいて、有料会員数が2億2,100万人となり、減少へと転じた。このときの減少幅は0.1%と小さかったものの、2Qで0.4%のマイナスとなり、減少幅を広げることになった。3Qは1.1%の増加となって減少分を取り戻したが、伸び悩みが顕著になっている。
特に稼ぎ頭だったアメリカでの停滞が鮮明。会員数はヨーロッパに追い抜かれた。そのヨーロッパも2022年に入って頭打ちになっている。
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南アメリカも2021年ごろに3,900万人を突破してから、横這いで推移している。唯一アジアは伸び盛りだが、1人当たりの課金額が少ない。アメリカは1人当たりの課金額が16ドルだが、アジアはその半分の8ドル。ドル高の影響を強く受けている可能性はあるが、為替が大きく変動する前の2021年は9.5ドルでさほど変化はない。
アジアは低単価だということだろう。つまり、Netflixにとって魅力のない市場ということになる。
これらの状況から稼ぎ方を変え、広告へと手を伸ばしたのだ。
原価率が狙い通りに下がる
Netflixの広告はストリーミング広告の大手GoogleかComcastが有力視されていた。ところが、広告分野で提携したのはMicrosoftだった。