難民映画基金「DFF」の5作品、東京国際映画祭でジャパンプレミア。ケイト・ブランシェット氏も来日

ケイト・ブランシェット氏が共同創設した難民映画基金「ディスプレイスメント・フィルム・ファンド(DFF)」の短編5作品が、第39回東京国際映画祭でジャパンプレミアを迎えた。同基金の創設パートナーはユニクロが務める。11月からは米誌『The New Yorker』でオンライン配信される。

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©2026 TIFF
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  • モハマド・ラスロフ監督 ©2026 TIFF
  • シャフルバヌ・サダト監督 ©2026 TIFF

ユニクロやケイト・ブランシェット氏らが共同創設した「ディスプレイスメント・フィルム・ファンド(難民映画基金、以下DFF)」の支援で制作された短編映画5作品が10月30日、第39回東京国際映画祭(TIFF)でジャパンプレミア(日本初上映)を迎えた。5作品は同映画祭の「ガラ・セレクション」に選出されている。上映にあわせて開かれた公式記者会見にはDFF共同創設者・リーダーのブランシェット氏や支援監督らが登壇し、故郷を追われた映画制作者の物語を映画で届ける意義を語った。

ブランシェット氏「映画には有害なナラティブを払拭する機会がある」 支援監督が語った制作の動機

会見の登壇者は、ブランシェット氏、ロッテルダム国際映画祭(IFFR)マネージング・ディレクターのクレア・スチュワート氏、『センス・オブ・ウォーター』のモハマド・ラスロフ監督、『スーパー・アフガン・ジム』のシャフルバヌ・サダト監督、株式会社ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員の柳井康治氏らだ。

ブランシェット氏は「世界の70人に1人が故郷を追われている今、なぜこうした物語がもっとメインストリームで語られないのか。映画には、故郷を追われた人々につきまとう有害なナラティブを払拭する機会があります」と語った。「故郷を追われたことは、その人を定義づけるものではありません」とも述べ、そのためDFFでは映画作家に題材と視点の完全な自由を与えたという。DFFが重視したのは、監督自身が故郷を追われた経験を持っているか、あるいはその経験に理解や共感があるかどうかだった。

©2026 TIFF

ラスロフ監督は3年前、イランを離れることを余儀なくされた。監督にとって言葉は「素材であり、文化でもある」。通訳や翻訳を挟むたびに、母語が持つ質感や自分の気持ちが失われていくように感じるという。第二言語にはある種の恐れを抱いていた。だからこそDFFからオファーを受けたとき、自身の個人的な問題を個人的な視点からじっくり見つめたいと考えたと語った。

モハマド・ラスロフ監督 ©2026 TIFF

サダト監督はアフガニスタンから逃れた両親のもと、イランで生まれた。人種差別や性差別、家父長制の中で居場所を探し続けてきたという。2027年に日本で劇場公開予定の『No Good Men』では自ら主役を演じた。スクリーンに映る自分の姿を見て「突然、自分には故郷がある、と感じました。それはイランでもアフガニスタンでもなく、私自身の体でした」と振り返る。DFFから声がかかったのは、同作を編集している最中だった。自身の経験は多くの女性に共通する普遍的なものだと考え、「自分の肌の内側にさえ居場所を感じられない」という意味での“displacement”を描こうと決めたという。

シャフルバヌ・サダト監督 ©2026 TIFF

同日、ヒューリックホール東京での上映後に開かれたトークセッションには、俳優の役所広司氏が特別ゲストとして登壇した。役所氏はユニクロのチャリティTシャツプロジェクト「PEACE FOR ALL」に参加している。「これから第2弾、第3弾と、このような支援から生まれる映画、そして映画作家たちを応援していきたいと思います」とエールを送り、『センス・オブ・ウォーター』を「愛と苦悩、そして深い心の傷を描いた、とても静かで穏やかな、美しい作品」と評した。『スーパー・アフガン・ジム』については「人間の強さを強く感じました」と話している。

国連UNHCRのグローバル難民フォーラムをきっかけに始動

DFFの出発点は、2023年12月に国連UNHCRが開催したグローバル難民フォーラムにある。柳井氏はこのフォーラムを振り返り、「映画の力で、難民の方々の物語を多くの皆さまに届け、活躍の場をつくろうと宣言しました」と述べた。ユニクロは20年以上、難民支援を続けてきた。柳井氏は、国籍や人種に関係なく誰もがアクセスできるブランドでありたいとしたうえで、DFFの各作品がさまざまな機会を通じて多くの人に届き、認められていくよう積極的に応援していくと話した。

スチュワート氏によれば、IFFRのヒューバート・バルス・ファンドがDFFに関わるようになったのは、2024年10月に同氏がブランシェット氏と出会ったのがきっかけだった。

DFFの設立は、2025年の第54回IFFRでブランシェット氏が発表した。創設パートナーにはマスターマインド、ユニクロ、ドローム・エン・ダード、タマーファミリー財団、アマホロ連合の5者が名を連ねる。メジャーパートナーはSPロヒア財団、運営パートナーはヒューバート・バルス基金、戦略パートナーは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)だ。

初年度の支援で生まれた短編5作品は2026年のIFFRでワールドプレミアを迎え、英『The Guardian』紙の5つ星評価をはじめ、国際的に高い評価を得た。DFFは2026年のカンヌ国際映画祭で新たな支援監督5名を発表しており、彼らの作品は2027年のIFFRでワールドプレミアを予定している。

米『The New Yorker』でオンライン配信、国内は「第21回難民映画祭2026」で上映

5作品は米誌『The New Yorker』とのパートナーシップのもと、11月から同誌のウェブサイトとYouTubeチャンネルで毎週順次配信される予定だ。第1弾はハサン・カッタン監督のドキュメンタリー『アライズ・イン・エグザイル/故郷を追われた盟友たち』。

同作は国内でも、国連UNHCR協会主催の「第21回難民映画祭2026」に選ばれた。11月5日にTOHOシネマズ 日比谷で開かれるオープニング上映会で上映されるほか、11月5日から12月6日までは同映画祭のオンライン配信を通じて全国どこからでも観られる。

ユニクロは従来の難民・避難民支援に加え、DFFへの参画によって取り組みの幅を広げる方針だ。映画のストーリーテリングの力で一人ひとりの物語をより多くの人に届け、難民・避難民を取り巻く課題への理解と関心を高める活動を支援していくとしている。

《Branc編集部》

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