次世代のグローバル人材育成を目的とする「グローバル・アニメ・チャレンジ(GAC)」の候補生が、2025年3月15日から20日にかけて開催された「新潟国際アニメーション映画祭」に参加し、世界のアニメーション作品やクリエイターとの交流を通じて貴重な経験を得た。
本プロジェクトは、日本のアニメ業界において国際的視野と実践力を兼ね備えた次世代のリーダーを育成する取り組みとして、文化芸術活動基盤強化基金を活用し、2024年よりスタート。アニメーター、プロデューサー、監督などの若手11名が候補生として選出され、国内外での研修やインターンシップを通じてスキルと視野の向上を図っている。
映画祭での交流と学び
新潟国際アニメーション映画祭は、長編コンペティションやレトロスペクティブ、オールナイト上映、ティーチインなどを通じて世界のアニメーション文化を紹介する国内有数のアニメ映画祭である。GAC候補生10名は、同映画祭に初参加し、国際的なアニメ文化に触れながら、作品鑑賞や製作者との対話を積極的に行った。

候補生の斎藤圭一郎氏は、「様々な国でアニメーションに関わる人たちの言葉を近い距離で聴けたことで、グローバルな関係性を築きたいという意識が高まった」と語る。また、プロデューサーの史耕氏は、自らが企画協力した「インディアニメの今」プログラムを通じて短編アニメのキュレーションを経験し、イベントの集客戦略にも興味を深めたという。

PRアンバサダーを務めた声優の伊瀬茉莉也氏も同行し、「1日に複数作品を鑑賞し、監督やプロデューサーの生の声を聞ける贅沢な体験だった」とコメント。候補生らと共に食事をしながら作品について語り合う場面もあり、深い交流が育まれた。
候補生たちの声
伊藤優希
作品を作るという目的は一緒ですが、そこに込める想いの形が様々で刺激になりました。映画祭自体は大学の学園祭のような雰囲気で落ち着きました。
木村誠
新潟国際アニメーション映画祭が3年続いていることが素晴らしいと思いました。映画祭で見た「化け猫あんずちゃん」がすばらしかったことと、フランスとの共同制作も具体化していけたらと思いました。参加させていただきありがとうございました!
工藤真奈
今回映画祭に初めて参加して日本国外のアニメーション作品を沢山鑑賞出来て貴重な経験でした。またクリエイターの方と交流することも出来たのでとても刺激を受けました。海外のクリエイターとの交流を深めるためにも引き続き英語の学習に力を入れたいです。
斎藤圭一郎
様々な国でアニメーションに関わる人たちの言葉を、近い距離で聴くことができる貴重な映画祭だと感じました。自分自身、今回の交流をきっかけにグローバルな関係性を築くことで、今後のクリエイティブがより刺激的なものになることを期待しています。
史耕
今回、GACの支援により3月17日~19日に作品鑑賞やアニメーションキャンプの方々とのランチ会、レセプションパーティーに参加させていただきました。グローバルな交流の中で、海外映画祭の情報や国際共同制作の過程についてお話を聞くことができました。映画祭でつながった方々と今後の関係を築き、制作に活かして参ります。
最終日の3月20日には、私が企画協力をした「インディアニメの今」というプログラムを行いました。プログラムは6本の短編アニメーション上映と、アニメ監督・プロデューサーによるトークショーという内容です。今回、深くプログラムに関わり、関係者と対話したことによって多くの学びがあり、キュレーションを経験できたことは非常に大きな収穫となりました。
決して安くはないチケット代にもかかわらず、広くアニメファンに人気のあるアニメフェスティバルがどのような戦略で集客しているのか、より興味が湧きました。今回つながったアニメフェスティバルの方々にも意見を聞いてみたいと感じております。
今回の新潟研修をサポートしていただいたGAC関係者の皆様、映画祭スタッフの皆様に深く感謝を申し上げます。
篠原啓輔
観客としてではありますが、アニメの映画祭参加したことがなかったので単純に楽しかったです。これまで長編アニメは日本のもの、ハリウッドのものを見ることが多かったので、表現の多様性も面白かったです。単純な画材、ツールの違いとしての表現だけでなく、どのように映像を構成するか、観客にどのようなインスピレーションを与えるかというのが、自分の想像を超えてきました。こんな表現があるんだ、と大変刺激を受けました。
谷本馨
海外の出品作品はとても抽象的なものが多くありました。日本国内ではなかなか目にしない作風に感じましたが、表現の幅・自由度という点でとても良い刺激になりました。
中目貴史
新潟の夜、ラーメン屋に入ったら、映画祭で会った海外の方にバッタリ!気さくに話せて、LINEまで交換しちゃいました笑 新潟国際アニメーション映画祭は、参加者との距離が近くて、本当に面白い映画祭でした。
森山愛弓
世界の最新のアニメーション映画が集まる場として、とても刺激的で素晴らしいお祭りに参加出来てとても光栄です。監督様方の作品に対する思いや、こだわりが聞けて大変勉強になりました。
山本ゆうすけ
映画祭はもっと遠くで監督たちを見るものという印象でしたが、すごく近くで会える映画祭でとても貴重な経験をさせていただきました。インタビューの距離感が非常に近く、質疑応答もまるで親戚の集いかのような距離で行われていることに非常に驚きました。人としてナマの意見を感じられる場として、たいへん貴重な体験をさせていただきました。

3年計画で世界に通用する人材育成を目指す
本プロジェクトは、キネマシトラスを運営主体に、日本総合研究所などのパートナー企業や複数の有力アニメスタジオの協力のもと、3年計画で展開されている。候補生は、マンツーマンの英語指導や月1回のワークショップを受講し、夏には海外スタジオでのインターンシップ、2026年にはパイロットフィルムの制作およびアヌシー国際アニメーション映画祭などでの出展が予定されている。

GACでは新潟での実地研修に先立ち、すでに2回のワークショップが実施されている。第1回(1月22日)はアニメジャーナリスト・数土直志氏による講義で、国際アニメイベントの分類や日本アニメの世界的評価、将来の展望について、データと事例を交えて解説された。候補生たちは真剣に聴講し、世界での日本アニメの立ち位置を学んだ。第2回(2月19日)はグローバル・コネクツ・メディアのダグラス・モンゴメリー氏が登壇。北米市場を中心に、アニメ作品の配信・販売・興行に関するデータ分析を通じて、アニメビジネスの現状と展望を講義した。第4回ワークショップはアニメーターの井上俊之氏を迎えて4月16日に開催される。
今後も「グローバル・アニメ・チャレンジ」は、日本のアニメ業界における国際展開の基盤を築くべく、若き才能の育成と支援を続けていく。