3社は共同プレスリリースにて、「慎重に検討した結果、Venu Sportsの合弁事業を中止し、ストリーミングサービスを開始しないことに合意しました」と発表。「変化し続ける市場において、既存の製品と流通チャネルにフォーカスすることで、スポーツファンの進化する要求に応えることが最善だと判断しました」と述べている。
2024年2月に発表されたVenuは、NFL（米プロ・アメリカン・フットボールリーグ）やNBA（米プロ・バスケットボールリーグ）、MLB（米プロ・ベースボールリーグ）、NASCARレースなど、3社が放映権を持つ番組や試合を配信する超巨大スポーツ・ストリーミングサービスになるはずで、2024年秋にローンチの予定だった。
ところが、スポーツ専門チャンネルを中心とする米有料TV配信プラットフォームFuboが、3社の事業が独占禁止法に違反していると主張し、Venuの立ち上げ阻止を求めて提訴。その訴えが連邦裁判所で認められ、2024年8月にVenuの計画が一時停止になったと報じられた。
Fuboとの和解で道が開けたように見えたが……
Varietyによると、中止決定前の1月6日にディズニーがFuboの買収を発表。自社が運営するHulu + Live TVサービスをfuboと統合し、ESPNやその他のスポーツコンテンツをfuboTVにライセンスすることで、この訴訟に対応した。ディズニーは合弁事業の70%を所有し、Fuboは残りの30%を保有する形となり、ディズニー、ワーナー、フォックスの3社は訴訟で和解するために、Fuboに2億2,000万ドル（約346億円）を支払い、さらにディズニーが2026年までにFuboに1億4,500万ドル（約228億6,800万円）の融資を行うと発表。その結果、一時はVenuの立ち上げが実現に向かうかのように見えた。しかし、衛星テレビプロバイダーのDirecTVとDishが、この契約およびFuboに異議を唱えて裁判所に再考を求めたことで、Venuの立ち上げがさらに遅れる可能性が示唆されていた。
前CNNの記事によると、DirecTVはVenuの中止について、「DIRECTVは引き続きスポーツのリーダーであり、ディズニー、フォックス、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーをはじめとする番組制作パートナーと協力し、スポーツファンの皆様に、より多くの選択肢やコントロール、そしてオールインワンの価値をお届けできるよう、同じ土俵で戦えることを楽しみにしています」とコメントしている。
Forbesによると、Venuの計画は実現に至らなかったが、ディズニーは今回の件とは別に、2025年8月に「Flagship」と呼ばれる新しいESPNストリーミングサービスを開始する計画を進めている。このサービスにはESPNの全番組が含まれ、ESPNのファンタジースポーツゲームと賭博プラットフォームが統合される予定だという。ディズニーは、Venuの中止後もスポーツ・ストリーミングサービス分野への進出を押し進めているが、現時点でフォックスとワーナーに具体的な動きはないようだ。しかし、同記事によると、米スポーツメディアAwful Announcingでシニアライター・編集を務めるドリュー・ラーナー氏は、NFLの放映権と地上波放送局を所有するフォックスと、ストリーミングサービスMaxを所有するワーナーが、お互いに足りない部分を補い合うために提携する可能性が考えられると分析している。
今後、これらの業界大手が提携や新たな戦略を通じて、スポーツストリーミング市場をどのように形作っていくかに注目が集まるだろう。
